転生銀髪美少女は勇者にすべてを任せて楽に生きたい
第19話 初めての訓練 withハルバルトさん
「意味が分からない」
黒いフードを目深に被り、望遠鏡を覗き込んでいた男は自分が見ているものを理解することができなかった。
彼のいる場所はシルバー達がいるフリーユから遠く離れた丘で、肉眼では街の概要すらうかがえない。
そんな場所から確かに男はシルバー達の姿を確認した。
彼はその特殊な立場と役目から、この世界で唯一とも言える、ステータスを見れる能力を有している。
男の目にはシルバーと、一緒の宿に泊まっている勇者シオン、その仲間のレーラ、そしてシルバーと同じ部屋で寝ている魔王のステータスが映った。
男の能力は絶対だ。
神から直接授かった能力を欺くことなどできるはずがない。
だから男は理解できなかった。
魔王とその魔王を倒すために転生させられた転生者が、同じ部屋で仲良く寝ているなど誰が理解できるのか?
男は悩んだ。
彼の役目はシルバー、もとい須々木康太の現状確認。
ちゃんと魔王討伐に向けて順調に進んでいるのか、もしくは自分の能力に溺れてだらけているのか。
後者であれば更正しなければならない。
異世界転生という名の神の暇潰しのために。もしくは、家畜をゆっくりと育てていくように。
男はため息を一つつくとこれからの作戦を練り始めた。
「んっ······」
何やら誰かに触られているような、撫でられているような感覚で夢から覚める。
「お~、起きたか。おはようなのじゃ、シルバーよ」
重い瞼を開くとそこには魔王ちゃんの顔が。
夜中の出来事を思い出し、ここが魔王ちゃんの部屋であることを理解する。
彼女はいとおしそうに僕の髪をすくっていた。
「ふぁぁっ」
まだ眠い。
あくびが出てしまう。
それでも起きなければならなかった。
今日からハルバルトさんとの訓練が始まるからだ。
「なんじゃ、もう行ってしまうのか?」
名残惜しそうに、髪の感触を思い出しているのか、寂しそうな顔色をする。
「うん。今日からハルバルトさんに訓練をしてもらうんだ」
昨日は自由時間にしてもらったから、今日から頑張らなくてはいけない。
間違っても明日から、なんて思ってはいけない。
それは一生やらないフラグだからだ。
「そうか、なら今日は適当に歩いておるかのう」
「また迷子にならないように気を付けてね」
昨日のことを思い出しながら冗談半分心配半分で忠告をする。
「迷子? そんなものにわしがなるわけなかろう。シルバーはわしのことをなんだと思っておるのだ?」
「ふふっ、そうだね。魔王ちゃんなら大丈夫だよね」
どうやら迷子になったのは、なかったことにする方針のようだ。
「おはようございます。シルバーさん。月が綺麗ですね」
「まだ午前です。馬鹿言ってないで特訓を始めましょう」
朝ご飯を食べて、ハルバルトさんとの訓練をするために指定された場所に来た。
一言目から口説いてくるから、一瞬ムッとしたけどここは我慢。
「そうですか······私は諦めませんよ。 ということで早速訓練を始めたいと思います。目標は私に魔法なしで勝つこと」
最初はチャラけた感じで話していたのに、最後は真面目な雰囲気でこの訓練の目標を伝えてくれる。
「魔法なしって、結構辛いですね。ですけど、魔王を倒そうって言うんだからそれくらいは頑張らないとですね」
「その意気です。魔法がいつでも使えるとは限りませんから。理想としては私くらいなムキムキな筋肉を付けることですが、可憐な乙女であるシルバーさんはそんなことはしないで、剣術を磨いていきましょう。······やっぱり、私のお嫁さんに──」
「断固拒否します」
いつもの調子に戻ってしまったハルバルトさんに、しっかりと断りの文句を言っておく。
「······残念です。では、気を改めてシルバーさん。私に向かって攻撃してください。もちろん魔法はなしで」
鞘から少し大きめの剣を抜き、正面に構える。
いつでも来い、ということなのだろう。
僕も事前に渡された剣を抜く。
自分なりに真剣に、全力を持って剣を振るった。
黒いフードを目深に被り、望遠鏡を覗き込んでいた男は自分が見ているものを理解することができなかった。
彼のいる場所はシルバー達がいるフリーユから遠く離れた丘で、肉眼では街の概要すらうかがえない。
そんな場所から確かに男はシルバー達の姿を確認した。
彼はその特殊な立場と役目から、この世界で唯一とも言える、ステータスを見れる能力を有している。
男の目にはシルバーと、一緒の宿に泊まっている勇者シオン、その仲間のレーラ、そしてシルバーと同じ部屋で寝ている魔王のステータスが映った。
男の能力は絶対だ。
神から直接授かった能力を欺くことなどできるはずがない。
だから男は理解できなかった。
魔王とその魔王を倒すために転生させられた転生者が、同じ部屋で仲良く寝ているなど誰が理解できるのか?
男は悩んだ。
彼の役目はシルバー、もとい須々木康太の現状確認。
ちゃんと魔王討伐に向けて順調に進んでいるのか、もしくは自分の能力に溺れてだらけているのか。
後者であれば更正しなければならない。
異世界転生という名の神の暇潰しのために。もしくは、家畜をゆっくりと育てていくように。
男はため息を一つつくとこれからの作戦を練り始めた。
「んっ······」
何やら誰かに触られているような、撫でられているような感覚で夢から覚める。
「お~、起きたか。おはようなのじゃ、シルバーよ」
重い瞼を開くとそこには魔王ちゃんの顔が。
夜中の出来事を思い出し、ここが魔王ちゃんの部屋であることを理解する。
彼女はいとおしそうに僕の髪をすくっていた。
「ふぁぁっ」
まだ眠い。
あくびが出てしまう。
それでも起きなければならなかった。
今日からハルバルトさんとの訓練が始まるからだ。
「なんじゃ、もう行ってしまうのか?」
名残惜しそうに、髪の感触を思い出しているのか、寂しそうな顔色をする。
「うん。今日からハルバルトさんに訓練をしてもらうんだ」
昨日は自由時間にしてもらったから、今日から頑張らなくてはいけない。
間違っても明日から、なんて思ってはいけない。
それは一生やらないフラグだからだ。
「そうか、なら今日は適当に歩いておるかのう」
「また迷子にならないように気を付けてね」
昨日のことを思い出しながら冗談半分心配半分で忠告をする。
「迷子? そんなものにわしがなるわけなかろう。シルバーはわしのことをなんだと思っておるのだ?」
「ふふっ、そうだね。魔王ちゃんなら大丈夫だよね」
どうやら迷子になったのは、なかったことにする方針のようだ。
「おはようございます。シルバーさん。月が綺麗ですね」
「まだ午前です。馬鹿言ってないで特訓を始めましょう」
朝ご飯を食べて、ハルバルトさんとの訓練をするために指定された場所に来た。
一言目から口説いてくるから、一瞬ムッとしたけどここは我慢。
「そうですか······私は諦めませんよ。 ということで早速訓練を始めたいと思います。目標は私に魔法なしで勝つこと」
最初はチャラけた感じで話していたのに、最後は真面目な雰囲気でこの訓練の目標を伝えてくれる。
「魔法なしって、結構辛いですね。ですけど、魔王を倒そうって言うんだからそれくらいは頑張らないとですね」
「その意気です。魔法がいつでも使えるとは限りませんから。理想としては私くらいなムキムキな筋肉を付けることですが、可憐な乙女であるシルバーさんはそんなことはしないで、剣術を磨いていきましょう。······やっぱり、私のお嫁さんに──」
「断固拒否します」
いつもの調子に戻ってしまったハルバルトさんに、しっかりと断りの文句を言っておく。
「······残念です。では、気を改めてシルバーさん。私に向かって攻撃してください。もちろん魔法はなしで」
鞘から少し大きめの剣を抜き、正面に構える。
いつでも来い、ということなのだろう。
僕も事前に渡された剣を抜く。
自分なりに真剣に、全力を持って剣を振るった。
コメント