村人が世界最強だと嫌われるらしい
越えなければならない壁が大きくて 4
『ほらほら、二回目だよ。休みなんてあると思わないことだ』
「パワハラだ……」
『ただの優しい教育さ。本当なら四人くらい殺れないといけないんだけど、今回は許してやってるんだから』
「カミハラだ……」
『じゃ、二回目レッツゴー』
そう言って神は指を鳴らし、烈毅を先程の世界へ飛ばす。そして、先ほどと同じ見た目のルノが立っている。先ほどと違うのは、昼間から夜になったくらいだ。
「あ、やっときた。遅いよ烈毅」
「…………」
「どうしたの?」
烈毅はさっき起きた出来事が頭の中で映像として流れていた。こんなにも可愛くて元気な女の子が、町を破壊して人を殺す、そんな殺人鬼に変わるのだから。
「れーつーきー?」
「なぁ、ルノ。隠し事とか、してないよな?」
烈毅は、その質問を急になげかける。その時のルノの表情で読み取ろうとしたが、眉一つ動かさず、寧ろ笑顔で「ないけど?」と返された。
「ないのか……そうだよな。あるはずない」
分かっているはずなのに。心ではわかってる。やらなければ治らないことは百も承知。けれど、どうしても現実と重ねてしまい、そして殺さなくても何とかならないのかと試行錯誤する。
『はぁ、またか……といっても、今回のようなパターンはきついかもだけど』
神は一人、烈毅達の様子を眺めながらそう呟く。これは長くなりそうだなと溜息を一度つき、その後の様子を伺う。
何事も無い夜の時間は過ぎていき、とある宿の一室へ向かった時だった。ルノが部屋に入ると、突然ルノの様子が急変し、泡を吹いて倒れだしたのだ。
「ルノ!?」
咄嗟に近づいて状態を確認するも、何が何だか分からなくなり、烈毅は名前を叫ぶだけで何も出来ない。
苦しみ続けるルノは、その状態が何十分も続いた。流石におかしいと思った烈毅は、ルノを外へ連れ出して医者に見せようと扉を開けようとするも、扉が開かない。そして、これは残酷な訓練だということを思い出す。
烈毅は、この行き場のない怒りを抑えながらもルノに必死に呼びかける。
「しっかりしろ、ルノ! 大丈夫だ! きっと助かる!」
「…………して」
苦しみながら掠れた声で何かをいうルノの口元に耳を近づけ、その言葉を聞き取ろうとする。だが、あまり上手く喋れないのか、何を言っているのか聞き取れない。
「…………して、……く」
「なんて言ってるんだ……ルノ!?」
そのまま小一時間が経過した時だった。喉元を抑えていたルノの手が、黒く染まり始めてくる。それは、手だけではなく、全身を覆うようにそれは現れた。
「なんだこれは!?」
必死に助ける手段を探し、異次元アイテムボックスの中に何かないかと、この時になって初めて思いついたのだが、それは無念に終わる。ユニークスキルは使えなかった。
「あぁ……あ、あぁ……ぁぁぁぁあ…………」
そして十分がたった頃、ルノの手は地面にコロンと転がり、白目を向いたままその場に転がる肉塊になってしまった。烈毅はその場でぼーっとし、何も出来なかった事を後悔した。そして、そんな自分に憤怒し叫んだ。
叫び終わると、意識は神の前に戻され、神は頬杖をつきながら烈毅を上から見下す。そして、『はぁ……可哀想に』とだけ呟き、ガッカリした表情を見せる。
『君には本当にガッカリだよ。苦しんでいるルノ君を見殺しにするなんて。しかも、声すら聞き取れないで。酷いね、君は』
「……だまれ」
『早く殺して、って言っていたのに。できる限りの力で言葉を発し、苦しんで死ぬのなら烈毅に殺られた方が良いと考えた彼女の考えを君は見過ごした』
「うるさい、何も言うな……」
『そんな君にこれから本物の仲間が救えるのかい? 聞かなければならない友の声を聞き取らないのかい? そんな君にバッドステータスを取り除く訓練は必要なのかい?』
「もうわかんねぇよ!」
烈毅は怒号を上げ、下を向く。
「なんで殺すんだよ……殺すことが正しいのかよ……なんで殺せなくて叱られるんだ……」
『まだ二回目だよ? もう弱音を吐くのかい?』
「…………」
『君がやると言ったのに、それを私のせいにするのかい? それは無責任だ。それに、準備は出来ていた筈だろう? それなのに成功できないのは君の準備が不十分だからだよ』
「準備もクソもねぇ。こんなの、予測しててもこうなるよ」
『はぁ……じゃあ、一生そうしているといい。子供みたいな事を言う君にはうんざりだ』
烈毅は、何も言い返さないまま、その場に座って小さくなった。神も、実はこうなる事は予測していて敢えて言ったのだ。それを乗り越えなければならないのだから。
『君にはもう人なんて守れないし、自分すらもどうにも出来ない。このまま彼女らを見殺しににすればいい』
「……それは嫌だ」
『ならルノ君を殺ればいい』
「……それも嫌だ」
『はぁ……我儘だね君は』
「俺は……俺は……」
『…………もう、君は本当にずるい奴だ。これだけは言っておく。君にはそんな事をしている時間はもう無いんだよ? 忘れているかもしれないが、現実世界では今も尚彼女達が待ち続けている。君は餓死させる気かね?』
「……させない」
『ならどうするのだい?』
「俺が……これをクリアするしかない」
『わかってるじゃないか。よし、じゃあ三回目いってみよう!』
そう言った神は、座り込んでいた烈毅を同じ場所へと移動させた。
「パワハラだ……」
『ただの優しい教育さ。本当なら四人くらい殺れないといけないんだけど、今回は許してやってるんだから』
「カミハラだ……」
『じゃ、二回目レッツゴー』
そう言って神は指を鳴らし、烈毅を先程の世界へ飛ばす。そして、先ほどと同じ見た目のルノが立っている。先ほどと違うのは、昼間から夜になったくらいだ。
「あ、やっときた。遅いよ烈毅」
「…………」
「どうしたの?」
烈毅はさっき起きた出来事が頭の中で映像として流れていた。こんなにも可愛くて元気な女の子が、町を破壊して人を殺す、そんな殺人鬼に変わるのだから。
「れーつーきー?」
「なぁ、ルノ。隠し事とか、してないよな?」
烈毅は、その質問を急になげかける。その時のルノの表情で読み取ろうとしたが、眉一つ動かさず、寧ろ笑顔で「ないけど?」と返された。
「ないのか……そうだよな。あるはずない」
分かっているはずなのに。心ではわかってる。やらなければ治らないことは百も承知。けれど、どうしても現実と重ねてしまい、そして殺さなくても何とかならないのかと試行錯誤する。
『はぁ、またか……といっても、今回のようなパターンはきついかもだけど』
神は一人、烈毅達の様子を眺めながらそう呟く。これは長くなりそうだなと溜息を一度つき、その後の様子を伺う。
何事も無い夜の時間は過ぎていき、とある宿の一室へ向かった時だった。ルノが部屋に入ると、突然ルノの様子が急変し、泡を吹いて倒れだしたのだ。
「ルノ!?」
咄嗟に近づいて状態を確認するも、何が何だか分からなくなり、烈毅は名前を叫ぶだけで何も出来ない。
苦しみ続けるルノは、その状態が何十分も続いた。流石におかしいと思った烈毅は、ルノを外へ連れ出して医者に見せようと扉を開けようとするも、扉が開かない。そして、これは残酷な訓練だということを思い出す。
烈毅は、この行き場のない怒りを抑えながらもルノに必死に呼びかける。
「しっかりしろ、ルノ! 大丈夫だ! きっと助かる!」
「…………して」
苦しみながら掠れた声で何かをいうルノの口元に耳を近づけ、その言葉を聞き取ろうとする。だが、あまり上手く喋れないのか、何を言っているのか聞き取れない。
「…………して、……く」
「なんて言ってるんだ……ルノ!?」
そのまま小一時間が経過した時だった。喉元を抑えていたルノの手が、黒く染まり始めてくる。それは、手だけではなく、全身を覆うようにそれは現れた。
「なんだこれは!?」
必死に助ける手段を探し、異次元アイテムボックスの中に何かないかと、この時になって初めて思いついたのだが、それは無念に終わる。ユニークスキルは使えなかった。
「あぁ……あ、あぁ……ぁぁぁぁあ…………」
そして十分がたった頃、ルノの手は地面にコロンと転がり、白目を向いたままその場に転がる肉塊になってしまった。烈毅はその場でぼーっとし、何も出来なかった事を後悔した。そして、そんな自分に憤怒し叫んだ。
叫び終わると、意識は神の前に戻され、神は頬杖をつきながら烈毅を上から見下す。そして、『はぁ……可哀想に』とだけ呟き、ガッカリした表情を見せる。
『君には本当にガッカリだよ。苦しんでいるルノ君を見殺しにするなんて。しかも、声すら聞き取れないで。酷いね、君は』
「……だまれ」
『早く殺して、って言っていたのに。できる限りの力で言葉を発し、苦しんで死ぬのなら烈毅に殺られた方が良いと考えた彼女の考えを君は見過ごした』
「うるさい、何も言うな……」
『そんな君にこれから本物の仲間が救えるのかい? 聞かなければならない友の声を聞き取らないのかい? そんな君にバッドステータスを取り除く訓練は必要なのかい?』
「もうわかんねぇよ!」
烈毅は怒号を上げ、下を向く。
「なんで殺すんだよ……殺すことが正しいのかよ……なんで殺せなくて叱られるんだ……」
『まだ二回目だよ? もう弱音を吐くのかい?』
「…………」
『君がやると言ったのに、それを私のせいにするのかい? それは無責任だ。それに、準備は出来ていた筈だろう? それなのに成功できないのは君の準備が不十分だからだよ』
「準備もクソもねぇ。こんなの、予測しててもこうなるよ」
『はぁ……じゃあ、一生そうしているといい。子供みたいな事を言う君にはうんざりだ』
烈毅は、何も言い返さないまま、その場に座って小さくなった。神も、実はこうなる事は予測していて敢えて言ったのだ。それを乗り越えなければならないのだから。
『君にはもう人なんて守れないし、自分すらもどうにも出来ない。このまま彼女らを見殺しににすればいい』
「……それは嫌だ」
『ならルノ君を殺ればいい』
「……それも嫌だ」
『はぁ……我儘だね君は』
「俺は……俺は……」
『…………もう、君は本当にずるい奴だ。これだけは言っておく。君にはそんな事をしている時間はもう無いんだよ? 忘れているかもしれないが、現実世界では今も尚彼女達が待ち続けている。君は餓死させる気かね?』
「……させない」
『ならどうするのだい?』
「俺が……これをクリアするしかない」
『わかってるじゃないか。よし、じゃあ三回目いってみよう!』
そう言った神は、座り込んでいた烈毅を同じ場所へと移動させた。
コメント