村人が世界最強だと嫌われるらしい
希望 9
「なんでお前らが……」
「烈毅?」
「いや、えっと、あいつらは……!」
その時だ。今まで保てていた理性が崩壊を始め、次第に烈毅の頭の中から今どうすればいいかが無くなっていき、怒りの感情だけが溜まっていく。
『烈毅! 何があった言え!』
ファイアの念話での問いかけには応えない。シェルドの問いかけにも無言。ただ、烈毅の頭のなかは殺されてしまった彼らの亡骸だけが鮮明に浮かんでいた。
「クソ! 烈毅、こんな所でモタモタしてられないぞ!」
先程までシェルドに言っていた事を、残った僅かな理性で思い出していた。
あぁ、俺がこんなんでどうするよ……。だけどしかたねぇよ。だって抑えられないんだから……。
そして、烈毅が完全に我を忘れようとしたその時だ。喋るはずのない目の前の亡霊が、ゆっくりと口を動かし始めた。
「れつ……き……」
声は出ていない。ただ、その口の動きだけでそう言っているのがわかった。
「おれ……まで、強く……ろよ」
半分以上何を言っているのか分からなかった。だが、口が止まると同時に、その亡霊達は烈毅に向かって超スピードで駆け寄った。
「烈毅!」
シェルドにも駆け寄った亡霊は幾つもあり、助けている余裕なんてサラサラなく、寧ろ全神経を回避に回さなければ自分が落ちてしまう。
シェルドが必死に全力で躱しているさなか、烈毅は自分の友達である亡霊に橋の底へ引っ張られようとしていた。
見た覚えのある顔、形、その何もかもが烈毅の思い出から引っ張りだされていた。何故か時がゆっくりに感じ、これが俗に言う走馬灯とやらかとも思った。
そして、あるときこんな事を言っていたある一人の友人がいた事を思い出した。
「なぁ、お前は俺が本当に異世界人だって事を信じるてのか?」
「信じてるさ」
「もし俺が敵になって、お前を殺そうしたらどうする?」
「そんときゃお前を全力で引っぱたいて、俺がダチだって事を思い出させてやるよ」
「なんだそりゃ」
「お前がこれからどんな奴になろうと、お前は俺のダチだ。それに変わりはないし変わらない」
「じゃあ、もし俺が死んだらお前は悲しいか?」
「悲しいね。悲しくてワンワン泣いてやらぁ。ただ、お前は泣くなよ? 俺が死んでも」
「何で!?」
「泣いてお別れなんて、そんなの死よりも嫌だね。笑顔で、『何死んでんだテメェ』って、冗談めかしに笑い飛ばしてくれた方が嬉しいね」
「出来ねぇよんなこと……」
「キィー! お前は頭が硬いんだよ!」
その場面が頭の中でフルスクリーンで流れ終えた瞬間だった。烈毅の中からその怒りが無くなることは無かった。ただ、その時目の前から遅い来る奴の事を見て、自然と笑顔が溢れていた。
そして、こう口にする。
「何死んでんだよ。テメェは……」
目の前から来た『ダチ』の事をすんなりと避けた時、そいつの顔は無表情だった。ただ、その通りすがる時、心が通った気がした。そして、こう言われた気がした。
「乗り越えろ」
烈毅が動き出した途端、半分を過ぎた時に消え去った亡霊達も突如現れ、その橋の上はほぼ亡霊達で埋め尽くされていた。その状況にシェルドは希望を失いかけたが、烈毅は自然と勇気が満ち溢れていた。
今までに無いくらいに体が軽く感じ、そして何より周りがゆっくりと動いているように見えた。
まるで、映画を見ている時にスロー再生をして見ているような、ゆっくりと歩いている年寄りのような、そんな感じに見えていた。
烈毅は、自分がもてる最大速度でシェルドの元へ向かい、シェルドを担ぐ。
「すまないシェルド、これは状況が状況だから、担いでくぞ」
「烈毅!? 無事なのか!? そして、それで構わん!」
「ああ無事だとも、ギリギリね。そんじゃ、ちょっと飛ぶぞ」
「飛ぶ?」
その瞬間、橋に大きなクレーターが出来上がり、目の前にいたはずの烈毅を見失った亡霊は、一秒の間周りを見回した。
「これで、渡りきれたな、シェルド」
「ああ。だが一つだけ。マジで気持ち悪いから下ろして、吐きそう」
「そうか?」
着地音が亡霊の耳に届いた時には、もう橋の終わり付近におり、土の上に足を付けようとしていた時だった。
亡霊達は、先程の比ではないくらいのスピードで烈毅の背後に突撃するが、それは無駄に終わる。背中を掴もうとしたその時にはもう橋の一歩向こうだった。
烈毅は振り向き、目の前でボーッと突っ立っている友人達にこう言った。
「また会えて嬉しかった。またどこかで会おう。おっと、次会うのは天国かな?」
ニッコリと笑顔を向け、烈毅はシェルドを担いだまま歩き出す。烈毅が遠くに見えなくなるまでその亡霊達は烈毅の背中を見続けた。
それから―
『烈毅、何があったのか言え!』
「ああ、ちょっとボーッとしてただけだよ」
『嘘をつけ!』
「本当だって……」
ちょっと離れた所でファイア達を異次元アイテムボックスから出した直後、泣きっ面で烈毅に質問攻めをされた。何故か無意識に"念話"を切っていたみたいだ。
「まぁ、なんだ? その、悪かった」
『うむ。謝れば良し!』
「お前は本当に適当な奴だな……」
「烈毅?」
「いや、えっと、あいつらは……!」
その時だ。今まで保てていた理性が崩壊を始め、次第に烈毅の頭の中から今どうすればいいかが無くなっていき、怒りの感情だけが溜まっていく。
『烈毅! 何があった言え!』
ファイアの念話での問いかけには応えない。シェルドの問いかけにも無言。ただ、烈毅の頭のなかは殺されてしまった彼らの亡骸だけが鮮明に浮かんでいた。
「クソ! 烈毅、こんな所でモタモタしてられないぞ!」
先程までシェルドに言っていた事を、残った僅かな理性で思い出していた。
あぁ、俺がこんなんでどうするよ……。だけどしかたねぇよ。だって抑えられないんだから……。
そして、烈毅が完全に我を忘れようとしたその時だ。喋るはずのない目の前の亡霊が、ゆっくりと口を動かし始めた。
「れつ……き……」
声は出ていない。ただ、その口の動きだけでそう言っているのがわかった。
「おれ……まで、強く……ろよ」
半分以上何を言っているのか分からなかった。だが、口が止まると同時に、その亡霊達は烈毅に向かって超スピードで駆け寄った。
「烈毅!」
シェルドにも駆け寄った亡霊は幾つもあり、助けている余裕なんてサラサラなく、寧ろ全神経を回避に回さなければ自分が落ちてしまう。
シェルドが必死に全力で躱しているさなか、烈毅は自分の友達である亡霊に橋の底へ引っ張られようとしていた。
見た覚えのある顔、形、その何もかもが烈毅の思い出から引っ張りだされていた。何故か時がゆっくりに感じ、これが俗に言う走馬灯とやらかとも思った。
そして、あるときこんな事を言っていたある一人の友人がいた事を思い出した。
「なぁ、お前は俺が本当に異世界人だって事を信じるてのか?」
「信じてるさ」
「もし俺が敵になって、お前を殺そうしたらどうする?」
「そんときゃお前を全力で引っぱたいて、俺がダチだって事を思い出させてやるよ」
「なんだそりゃ」
「お前がこれからどんな奴になろうと、お前は俺のダチだ。それに変わりはないし変わらない」
「じゃあ、もし俺が死んだらお前は悲しいか?」
「悲しいね。悲しくてワンワン泣いてやらぁ。ただ、お前は泣くなよ? 俺が死んでも」
「何で!?」
「泣いてお別れなんて、そんなの死よりも嫌だね。笑顔で、『何死んでんだテメェ』って、冗談めかしに笑い飛ばしてくれた方が嬉しいね」
「出来ねぇよんなこと……」
「キィー! お前は頭が硬いんだよ!」
その場面が頭の中でフルスクリーンで流れ終えた瞬間だった。烈毅の中からその怒りが無くなることは無かった。ただ、その時目の前から遅い来る奴の事を見て、自然と笑顔が溢れていた。
そして、こう口にする。
「何死んでんだよ。テメェは……」
目の前から来た『ダチ』の事をすんなりと避けた時、そいつの顔は無表情だった。ただ、その通りすがる時、心が通った気がした。そして、こう言われた気がした。
「乗り越えろ」
烈毅が動き出した途端、半分を過ぎた時に消え去った亡霊達も突如現れ、その橋の上はほぼ亡霊達で埋め尽くされていた。その状況にシェルドは希望を失いかけたが、烈毅は自然と勇気が満ち溢れていた。
今までに無いくらいに体が軽く感じ、そして何より周りがゆっくりと動いているように見えた。
まるで、映画を見ている時にスロー再生をして見ているような、ゆっくりと歩いている年寄りのような、そんな感じに見えていた。
烈毅は、自分がもてる最大速度でシェルドの元へ向かい、シェルドを担ぐ。
「すまないシェルド、これは状況が状況だから、担いでくぞ」
「烈毅!? 無事なのか!? そして、それで構わん!」
「ああ無事だとも、ギリギリね。そんじゃ、ちょっと飛ぶぞ」
「飛ぶ?」
その瞬間、橋に大きなクレーターが出来上がり、目の前にいたはずの烈毅を見失った亡霊は、一秒の間周りを見回した。
「これで、渡りきれたな、シェルド」
「ああ。だが一つだけ。マジで気持ち悪いから下ろして、吐きそう」
「そうか?」
着地音が亡霊の耳に届いた時には、もう橋の終わり付近におり、土の上に足を付けようとしていた時だった。
亡霊達は、先程の比ではないくらいのスピードで烈毅の背後に突撃するが、それは無駄に終わる。背中を掴もうとしたその時にはもう橋の一歩向こうだった。
烈毅は振り向き、目の前でボーッと突っ立っている友人達にこう言った。
「また会えて嬉しかった。またどこかで会おう。おっと、次会うのは天国かな?」
ニッコリと笑顔を向け、烈毅はシェルドを担いだまま歩き出す。烈毅が遠くに見えなくなるまでその亡霊達は烈毅の背中を見続けた。
それから―
『烈毅、何があったのか言え!』
「ああ、ちょっとボーッとしてただけだよ」
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