村人が世界最強だと嫌われるらしい
希望 6
翌日、時間があまり残されていない為、もう道連れの渓谷へ出発するための準備をしている所だった。慌ただしく走り続けるのは、キュウ達の王宮で雇われたメイド達。食料やら衣服やらを手際良くまとめてくれている。
エルフの国へ向かうメンバーは、烈毅、ナーシェ、ミーシュ、ルノ、レーナ、クルル、ファイア、シェルドの八人だ。
そこに、キュウも同行したいと言い出した。本来キュウはお留守番の筈だったのだが、どうしても行きたいと本人たっての希望だったので、連れていくことにした。ただ、連れていくのは道連れの渓谷の前までだ。
仮にも、次代王女となるキュウが万が一にも死んでしまったのではどうしようも無い。キュウが来ることによって、ネキツさんにも付いてきてもらうことになった。そのため、帰り道は安心だろう。
まだ支度が終わるまで時間はある。だが、皆どこか緊張しているのか、席に座ったりウロウロしたりと、落ち着きが無かった。その中、烈毅だけは真剣に先のことを考えていた。
もし、もしもエルフの国の民が全滅してるとして、俺のこの状態を治せる薬が奪われていたとしたらどうする? 探すか? いや、不可能に近い。この世界で人を探すのには広すぎる。ならいっそ……。
まだ完全には治っていない烈毅の考えは、どうしても復讐の方面へ行ってしまう。だが、その事を考える度に深呼吸をして冷静さを取り戻した。
エルフの国の人が一人でも残っていたのなら……(……つき)、だがその可能性は低いな……(れつき……)。なら、エルフの国を全力で走り回って……。
「烈毅ってば!!」
「……あ、あぁごめん、考え事してた」
「もう、よくそんなに没頭できるわね……ほら、支度出来たからもう行くよ」
「ああ」
そう言われ、烈毅はレーナに引っ張られながら扉の前まで移動する。そこには、もう皆集まっており、各々の役割分の荷物を担いでいるところだった。
「ミーシュ、さっきから気になってたけどさ、何であんたそんなに顔ボロボロなの?」
「え? あ、ああ、これね。昨日ちょっと転んでそのまま気を失っちゃってたみたいでね、気がついたら朝になってたの、あはは……」
「ふーん。あんたもそういうことあるのね」
「たまにはね……」
そして、この場に全員が集合し、いよいよ出発の前となり、気持ちが入り目の色が変わる。
「よし、じゃあ行こうか」
烈毅のその一言で扉は開かれ、皆ギュッと拳に力が入る。今から向かうのは未知の領域。モンスターはいないが、それよりも厄介な存在がその先にはいる。
それと同時に、烈毅の運命が架かっている。ドジは許されない。ふざけている様な時間もない。だから皆、気合が入る。
「俺の後ろに続け。今から走り続けるが、誰も遅れをとるな?」
「私、自信ないな……」
『ならば我が担ごうか?』
「ありがとうファイアさん。そうしてもらう」
「なら、ルノは俺が抱える。いいか?」
「うん、そうして。私も流石にこの荷物を持って走り続けるのはしんどいから」
ルノは、少し返事に躊躇いがあったが、誤魔化すようにして答えて、荷物を烈毅の"異次元アイテムボックス"の中にいれる。
「それを使えば荷物持つ人がだいぶ楽になると思うのに……」
「特訓だと思え。まぁ渓谷に着いたら流石にそうするけど」
「話は付いたか? 行くぞ」
そうして、彼らは全速力でレデモンの中を駆け抜けた。レデモンもかなりの広さを誇る国だ。国を出るのに四日が経ち、さらに道連れの渓谷までの道のりも、同じくらいの時間かかってしまう。
そして、国を出てから二日が経った時だった。
もうすっかり緊張が抜け、むしろ余裕な表情まで見せるようになった皆は、その日はやけに盛り上がった話をしていた。
「へぇ、じゃあキュウが短期間で育ったのは、お前ら妖狐の特性って訳か」
「そうなのじゃ。皆十歳までは普通にスクスク育つのじゃが、十一歳を越えた時から成長スピードが格段に早くなるのじゃ」
「ふーん。面白いな、妖狐ってのは」
「人間はそうじゃないのか?」
「普通に成長して短い寿命を生きて死んでいくよ。ま、殺されてしまうやつもいてさらに短い人生にもなっちまうやつもいるんだけどな」
そう言った途端、盛り上がっていた雰囲気も一気に冷め、重くどんよりした空気になる。
「そうなのじゃな……人間も妖狐も、人種は違うがやる事は同じなのじゃな」
「ああ。まぁ、この世界はモンスターがいないから平和でいいよな」
「そうでもないぞ、烈毅殿。最近はまた領土拡大の為と躍起になっておる奴らが増えていると聞く。な、父上殿」
「ああ。やはり、エルフの国が襲われたってのが大きかったらしい。あそこはかなりいい土地だからな。これを機に奪おうとする奴は少なからずいるだろう」
「そうかもしれないな。キュウの言った通り、やる事なす事みな同じ何だな」
「それが神からの定めって奴なのかもしれないな」
「そうだな……よし、今日はもう寝るか」
「ああ、湿っぽい空気になってしまったしな」
「誰のせいだか」
「お? ミーシュ、文句か?」
「さーてね!」
そういい、その日は皆早く寝に着いた。
エルフの国へ向かうメンバーは、烈毅、ナーシェ、ミーシュ、ルノ、レーナ、クルル、ファイア、シェルドの八人だ。
そこに、キュウも同行したいと言い出した。本来キュウはお留守番の筈だったのだが、どうしても行きたいと本人たっての希望だったので、連れていくことにした。ただ、連れていくのは道連れの渓谷の前までだ。
仮にも、次代王女となるキュウが万が一にも死んでしまったのではどうしようも無い。キュウが来ることによって、ネキツさんにも付いてきてもらうことになった。そのため、帰り道は安心だろう。
まだ支度が終わるまで時間はある。だが、皆どこか緊張しているのか、席に座ったりウロウロしたりと、落ち着きが無かった。その中、烈毅だけは真剣に先のことを考えていた。
もし、もしもエルフの国の民が全滅してるとして、俺のこの状態を治せる薬が奪われていたとしたらどうする? 探すか? いや、不可能に近い。この世界で人を探すのには広すぎる。ならいっそ……。
まだ完全には治っていない烈毅の考えは、どうしても復讐の方面へ行ってしまう。だが、その事を考える度に深呼吸をして冷静さを取り戻した。
エルフの国の人が一人でも残っていたのなら……(……つき)、だがその可能性は低いな……(れつき……)。なら、エルフの国を全力で走り回って……。
「烈毅ってば!!」
「……あ、あぁごめん、考え事してた」
「もう、よくそんなに没頭できるわね……ほら、支度出来たからもう行くよ」
「ああ」
そう言われ、烈毅はレーナに引っ張られながら扉の前まで移動する。そこには、もう皆集まっており、各々の役割分の荷物を担いでいるところだった。
「ミーシュ、さっきから気になってたけどさ、何であんたそんなに顔ボロボロなの?」
「え? あ、ああ、これね。昨日ちょっと転んでそのまま気を失っちゃってたみたいでね、気がついたら朝になってたの、あはは……」
「ふーん。あんたもそういうことあるのね」
「たまにはね……」
そして、この場に全員が集合し、いよいよ出発の前となり、気持ちが入り目の色が変わる。
「よし、じゃあ行こうか」
烈毅のその一言で扉は開かれ、皆ギュッと拳に力が入る。今から向かうのは未知の領域。モンスターはいないが、それよりも厄介な存在がその先にはいる。
それと同時に、烈毅の運命が架かっている。ドジは許されない。ふざけている様な時間もない。だから皆、気合が入る。
「俺の後ろに続け。今から走り続けるが、誰も遅れをとるな?」
「私、自信ないな……」
『ならば我が担ごうか?』
「ありがとうファイアさん。そうしてもらう」
「なら、ルノは俺が抱える。いいか?」
「うん、そうして。私も流石にこの荷物を持って走り続けるのはしんどいから」
ルノは、少し返事に躊躇いがあったが、誤魔化すようにして答えて、荷物を烈毅の"異次元アイテムボックス"の中にいれる。
「それを使えば荷物持つ人がだいぶ楽になると思うのに……」
「特訓だと思え。まぁ渓谷に着いたら流石にそうするけど」
「話は付いたか? 行くぞ」
そうして、彼らは全速力でレデモンの中を駆け抜けた。レデモンもかなりの広さを誇る国だ。国を出るのに四日が経ち、さらに道連れの渓谷までの道のりも、同じくらいの時間かかってしまう。
そして、国を出てから二日が経った時だった。
もうすっかり緊張が抜け、むしろ余裕な表情まで見せるようになった皆は、その日はやけに盛り上がった話をしていた。
「へぇ、じゃあキュウが短期間で育ったのは、お前ら妖狐の特性って訳か」
「そうなのじゃ。皆十歳までは普通にスクスク育つのじゃが、十一歳を越えた時から成長スピードが格段に早くなるのじゃ」
「ふーん。面白いな、妖狐ってのは」
「人間はそうじゃないのか?」
「普通に成長して短い寿命を生きて死んでいくよ。ま、殺されてしまうやつもいてさらに短い人生にもなっちまうやつもいるんだけどな」
そう言った途端、盛り上がっていた雰囲気も一気に冷め、重くどんよりした空気になる。
「そうなのじゃな……人間も妖狐も、人種は違うがやる事は同じなのじゃな」
「ああ。まぁ、この世界はモンスターがいないから平和でいいよな」
「そうでもないぞ、烈毅殿。最近はまた領土拡大の為と躍起になっておる奴らが増えていると聞く。な、父上殿」
「ああ。やはり、エルフの国が襲われたってのが大きかったらしい。あそこはかなりいい土地だからな。これを機に奪おうとする奴は少なからずいるだろう」
「そうかもしれないな。キュウの言った通り、やる事なす事みな同じ何だな」
「それが神からの定めって奴なのかもしれないな」
「そうだな……よし、今日はもう寝るか」
「ああ、湿っぽい空気になってしまったしな」
「誰のせいだか」
「お? ミーシュ、文句か?」
「さーてね!」
そういい、その日は皆早く寝に着いた。
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