村人が世界最強だと嫌われるらしい
崩壊 8
烈毅とメルクリア国王ことエルネイアは、激しい戦闘を繰り広げる。烈毅の今出せる最大のスピードに、エルネイアは何食わぬ顔で反応し、攻撃をしている。烈毅も負けじと攻撃をするも、全て防がれてしまう。
「聞いていた通りだな、人村烈毅。ここで殺しておくのがやはり正解なのだな」
「正解? メルクリアの王よ、何が正解だと言うのだ!?」
「ベルム国の勇者か。引っ込んでおれ」
「……!?」
次の瞬間、クルルの体は一ミリたりとも動かなくなり、声も出せないままその場で呆然と烈毅とエルネイアの戦いを見るだけになってしまった。
な、何だこの力は!? 喋ろうとしても声が出ない……!
烈毅の"憤怒"の制限時間まで残り一分。烈毅の動きは見る見るうちに速さを増し、攻撃の強さを増していくが、エルネイアには一撃たりとも入らない。寧ろ、エルネイアもそれに合わせてスピードが早くなる一方だ。
そして、何より違うのは、烈毅は『本気』なのに対し、エルネイアはオーラも纏わず、もっと言えばクルルと言葉を交わすくらいには余裕を持っているところだった。
「お前のその力はもうまもなく切れる。それは分かっているが、何故先程以上に身体能力が上がるのかがわからん……やはり、特異点と呼ばれるだけはあるということか」
そして、終わりは唐突に訪れる。
「それを知ったところで、もうここでおしまいだがな。これで、ようやく世界を我が手に……」
その呟きを微かに聞き取ったクルルは、不可解にも思いながらその終わりの時を見届ける。否、見てしまっていた。
エルネイアが少し全身に力を入れ、やせ細っていた体の筋肉が隆起し、今にも服がはち切れそうになる。その姿を見たクルルはゾッとした。
烈毅が、エルネイアの顔面めがけ殴打を繰り出した時だった。目の前にいたはずのエルネイアがなんの音もなく突然姿を消した。そして、次の瞬間、烈毅の体が頭上から綺麗に真っ二つになり、グチャというリアルな効果音付きで地面に無残に転げ落ちた。
全てが半分。内蔵も半分、脳みそも半分、それらがドバドバと血を流しながら露になっていく。
それを見てしまっていたクルルは突然の目眩と激しい吐き気を催し、そのまま地面にゲロをぶちまける。そこに、先程飛ばされたヘキレウスと、それを追ったライとシデルが戻って来る。
「チッ……貴様に先を越されたかエルネイア」
「生きとったのか」
「あたりめぇだ。それより……」
「ああ、これで遂に実行に移せる」
「いよいよだな」
「ああ。後は、この事を奴に報告し、儀式を完璧にやり遂げればいい」
「そうと決まれば、もうここには要はない。さっさとあの場所へ行くぞ」
「ああ」
「お、王よ……どちらへ?」
「ん? ああ、ライか。そうだな……」
王がゴミを見るような目でライを見た後、横一線に右手に持っていた剣で首を切り裂く。
「へ……?」
それを見ていたシデルは、気の抜けた声を上げると共に、同じように首を跳ねられる。
「この姿を見たんだ。これを知ってしまった者は消さねばならん」
「ヘキレウス、奴も殺しておけ」
「ああ、クルルか……って、いないぞ?」
「逃げられるほどの気力と精神は残ってないと思ったんだがな……まぁ良い。どうせもう周りの者は聞く耳など持たぬのだから」
それだけを言い残し、ヘキレウスとエルネイアは消え去っていった。首の無いライとシデル、綺麗な烈毅の死体だけを取り残して。
――同時刻。
「はっ……!」
「どうしたの、ルノ?」
「いや、なんかさ……寒気がして」
「風邪でも引いた?」
「いや、そういうのとはまた違う感じなんだけど……」
「きっと、どっかの誰かさんがあんたの噂をしてたのよ。可愛い可愛いルノちゃんの事を!」
「もー、そんな冗談はいいのよ」
「またまた〜! ……それより、烈毅遅いね」
「うん……」
「まぁきっと、そのうちフラフラ〜って帰って来るわよ!」
「そうだね!」
ルノとレーナの会話はそこで終了し、特訓に戻る。烈毅の事を思いながら……。
――同時刻。
『やあ。とても久しぶりに会ったね、人村烈毅君』
「ここは……お前は、ここに来た時にいた……まさか?」
『少しばかり違うかな。私は君の考えている人物……いや、存在で間違いはないよ。ただ、死後の世界ではない』
「ならここは……」
『ここは夢の中さ。君は今夢を見ている。第一に、君はそう簡単には死なないだろ? ユニークスキルだって持ってるんだし』
「いや、そうは言ってもな……」
『君は戻らなければならない。そして、止めなければならない。彼らがしようとしていることを』
「しようとしていること? それは何だ?」
『時間が無いから説明は出来ない』
「無理ゲーだ。説明書無しには物は動かせないし触れない。それなのにどうしろと?」
『まずは、リバースワールドへ向かうといい。大丈夫、儀式には相当な時間がかかるからね。……おっと、そうこうしているうちに時間のようだ』
「待て! 一方的に頼むだけ頼んで俺の質問には答えないのか!? おいっ!」
『頑張ってくれ……烈毅君……』
そして、烈毅の意識は覚醒する。
「聞いていた通りだな、人村烈毅。ここで殺しておくのがやはり正解なのだな」
「正解? メルクリアの王よ、何が正解だと言うのだ!?」
「ベルム国の勇者か。引っ込んでおれ」
「……!?」
次の瞬間、クルルの体は一ミリたりとも動かなくなり、声も出せないままその場で呆然と烈毅とエルネイアの戦いを見るだけになってしまった。
な、何だこの力は!? 喋ろうとしても声が出ない……!
烈毅の"憤怒"の制限時間まで残り一分。烈毅の動きは見る見るうちに速さを増し、攻撃の強さを増していくが、エルネイアには一撃たりとも入らない。寧ろ、エルネイアもそれに合わせてスピードが早くなる一方だ。
そして、何より違うのは、烈毅は『本気』なのに対し、エルネイアはオーラも纏わず、もっと言えばクルルと言葉を交わすくらいには余裕を持っているところだった。
「お前のその力はもうまもなく切れる。それは分かっているが、何故先程以上に身体能力が上がるのかがわからん……やはり、特異点と呼ばれるだけはあるということか」
そして、終わりは唐突に訪れる。
「それを知ったところで、もうここでおしまいだがな。これで、ようやく世界を我が手に……」
その呟きを微かに聞き取ったクルルは、不可解にも思いながらその終わりの時を見届ける。否、見てしまっていた。
エルネイアが少し全身に力を入れ、やせ細っていた体の筋肉が隆起し、今にも服がはち切れそうになる。その姿を見たクルルはゾッとした。
烈毅が、エルネイアの顔面めがけ殴打を繰り出した時だった。目の前にいたはずのエルネイアがなんの音もなく突然姿を消した。そして、次の瞬間、烈毅の体が頭上から綺麗に真っ二つになり、グチャというリアルな効果音付きで地面に無残に転げ落ちた。
全てが半分。内蔵も半分、脳みそも半分、それらがドバドバと血を流しながら露になっていく。
それを見てしまっていたクルルは突然の目眩と激しい吐き気を催し、そのまま地面にゲロをぶちまける。そこに、先程飛ばされたヘキレウスと、それを追ったライとシデルが戻って来る。
「チッ……貴様に先を越されたかエルネイア」
「生きとったのか」
「あたりめぇだ。それより……」
「ああ、これで遂に実行に移せる」
「いよいよだな」
「ああ。後は、この事を奴に報告し、儀式を完璧にやり遂げればいい」
「そうと決まれば、もうここには要はない。さっさとあの場所へ行くぞ」
「ああ」
「お、王よ……どちらへ?」
「ん? ああ、ライか。そうだな……」
王がゴミを見るような目でライを見た後、横一線に右手に持っていた剣で首を切り裂く。
「へ……?」
それを見ていたシデルは、気の抜けた声を上げると共に、同じように首を跳ねられる。
「この姿を見たんだ。これを知ってしまった者は消さねばならん」
「ヘキレウス、奴も殺しておけ」
「ああ、クルルか……って、いないぞ?」
「逃げられるほどの気力と精神は残ってないと思ったんだがな……まぁ良い。どうせもう周りの者は聞く耳など持たぬのだから」
それだけを言い残し、ヘキレウスとエルネイアは消え去っていった。首の無いライとシデル、綺麗な烈毅の死体だけを取り残して。
――同時刻。
「はっ……!」
「どうしたの、ルノ?」
「いや、なんかさ……寒気がして」
「風邪でも引いた?」
「いや、そういうのとはまた違う感じなんだけど……」
「きっと、どっかの誰かさんがあんたの噂をしてたのよ。可愛い可愛いルノちゃんの事を!」
「もー、そんな冗談はいいのよ」
「またまた〜! ……それより、烈毅遅いね」
「うん……」
「まぁきっと、そのうちフラフラ〜って帰って来るわよ!」
「そうだね!」
ルノとレーナの会話はそこで終了し、特訓に戻る。烈毅の事を思いながら……。
――同時刻。
『やあ。とても久しぶりに会ったね、人村烈毅君』
「ここは……お前は、ここに来た時にいた……まさか?」
『少しばかり違うかな。私は君の考えている人物……いや、存在で間違いはないよ。ただ、死後の世界ではない』
「ならここは……」
『ここは夢の中さ。君は今夢を見ている。第一に、君はそう簡単には死なないだろ? ユニークスキルだって持ってるんだし』
「いや、そうは言ってもな……」
『君は戻らなければならない。そして、止めなければならない。彼らがしようとしていることを』
「しようとしていること? それは何だ?」
『時間が無いから説明は出来ない』
「無理ゲーだ。説明書無しには物は動かせないし触れない。それなのにどうしろと?」
『まずは、リバースワールドへ向かうといい。大丈夫、儀式には相当な時間がかかるからね。……おっと、そうこうしているうちに時間のようだ』
「待て! 一方的に頼むだけ頼んで俺の質問には答えないのか!? おいっ!」
『頑張ってくれ……烈毅君……』
そして、烈毅の意識は覚醒する。
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