村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

崩壊 2

「国民の前での公開処刑!?」

『ああ。その首は晒し首にされている』

「で、でもそれが烈毅と関係のある人って確証は無いのでしょ? そもそも、この国は広いし人が多いしさ!」

『それがだな……』

「まさか……」

 頭が冴えているミーシュは、ようやく話が繋がったのか、驚きの顔をした後、何かに対して怒りを向ける様な顔をし、殺気立つ。

『ミーシュ、その通りだ。あのデルノゼという魔族が全ての根源だ』

「さっきの魔族が?」

『ああ。あいつは突然烈毅の前に現れ、変異種とかいう変な化け物を烈毅と戦わせた。烈毅も本気ではなかったが、それなりに力を出していたはずだ』

「それであの穴が出来たのね……」

『ああ。そして、デルノゼが突然戦いを止め、烈毅にあざけ笑いながらいいやがったのだ。『貴方の友人は皆殺されました』ってな』

「その一言で烈毅があそこまで怒るとは思わないけど……」

『確かにその一言では怒らなかった。だがな……』

「だが……?」

『あの変異種が突然カタコトで喋りだしたんだよ。烈毅の名前を呼んで、『助けて』とな』

「そんな……まさか……!」

『そう。それが変異種の実験に使われた烈毅の友人だ』

 それを聞き、一同は呼吸を忘れたように動かなくなり、暫くの間沈黙が続いた。

 そして、数十秒が経った時、後ろから足音が聞こえた。

「あいつの名前はな……メルジって言ってさ、俺に料理を教えてくれた料理屋の店主だったんだ。めちゃくちゃ良い奴で、俺の話をなんでも聞いてくれた」

「烈毅……! 大丈夫なの!?」

「いや、正直大丈夫じゃないよ。他の奴らもいい奴らばかりでさ……」

 烈毅は、立ったまま友人達の顔を思い浮かべた。一人、二人とその者の名を呟いていき。全てを言い切った後、拳をギュッと握った。

「俺の、ユニークスキルの説明をしよう」

 突然の話に、皆は驚いた。どうして今このタイミングでユニークスキルの説明をするのかと。

「いやさ、俺の変化と何か関係があるのかと思って見てみたらさ、いろいろ変わってる部分があって……」

「変わってる?」

「昔とスキルの内容が変わってるって意味な。それで、これが俺のユニークスキルだ」

 そう言って、烈毅は特殊なステータス画面を表情させ、全てを皆に開示する。そして、その内容と残酷さに、皆は絶句した。


 人村烈毅 性別 男
 LvMAX
 ジョブ 村人
 ステータス オール?????

 ユニークスキル

 "自動回復"
 "不滅"
 "異次元アイテムボックス"
 "建築"
 "料理"
 "負け知らずの最弱"
 "防御結界陣"
 "念話"
 "完全魔法耐性"
 "憤怒"
 "代償"
 "次への挑戦"
 "理解力"
 "神の定め"
 "異世界の住人"
 "限界"
 "殺人化"
 "?????"
 "?????"
 "?????"

 バットステータス
 心の崩壊

 こう記されてあった。烈毅は、直ぐにステータス画面を閉じ、ため息をつく。

「俺は、レベル五十上げる事にユニークスキルが追加されていったんだ。しかも、どれも使えないものばかりでさ、使えるものは上の九個のユニークスキルだけだったんだよ」

「他のスキルは使い物にならなかったの?」

「うん。その他の十一個は、ゴミと言ってもいい程の効果のユニークスキルだった。だけど、見てみたらビックリ、いくつかのユニークスキルのら内容が丸っきり変わってた」

「どうしてなのかはわかるの?」

「いいや、全くわからん。ただ……」

「ただ?」

「俺にどうしてバットステータスが付いたのかはわかった」

「というと?」

「そこに、"代償"ってユニークスキルあるだろ? それはさ、"憤怒"ってユニークスキルと繋がってて、その"憤怒"ってのが発動すると勝手にこの"代償"ってのも発動する仕組みになってるんだよ」

「それで、その効果は?」

「それは、『"憤怒"が発動されると自動発動。力を得る代わりに、理性が少しずつ崩壊していく』ってやつだ」

 それを聞いた途端、今までの烈毅の変化に漸く理解ができた。だが、それは余りにも酷な事であり、ナーシェ達にとっても望ましくないものでまあった。

「俺は変わってく事が怖い。もしかしたら、今にお前らとも喋れなくなるかもしれない。今に、お前らの事を忘れて飛びかかるのかもしれない、ってな事を考えちゃうんだよ」

「…………」

「それに、とのタイミングでこれが解けるのかはわからない。ましてや、これらも続くときた」

 烈毅は、やれやれと頭を左右に振りながら話を続ける。

「だから、もし……もし俺が完全に理性を失って、喋れない状態になったら、その聖剣で俺の首を切れ」

「…………えっ?」

『烈毅、それは……!』

「大丈夫だよ。そうはならない」

「私は絶対にやらないわ。もし烈毅がそうなっても」

「……私もできない」

「私も」

「…………」

「今はそう言うかもな。でも、いつかわかる。俺を殺すことの方がいい選択だって事が」

『烈毅……』

 そして、その話が終わると烈毅は部屋へと戻り、寝てしまった。ナーシェ達は、その場のどんよりとした雰囲気中、誰一人として喋らず、ただ目の前でフツフツと燃える焚き火の火を見つめるだけだった。

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