村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

二難去ると、次は災難が起こります 5

「おいおい、神の実力ってそんなもんなの? まだブラックドラゴンの方がやりごたえあったけど」

『君、あのブラックドラゴン相手によく生きてたね……まぁ少し舐めてたことは謝るよ。こちらも次は本気でやる』

「頼むよ。神の本気がどれほどかって身をもって知れるチャンスなんだから」

 太陽が高く登り、優しい風が吹き抜ける。烈毅の発言を最後に、お互いの会話は途切れる。じっくりと睨み合い、お互いに戦闘態勢へと移行する。

 ワル、シェンは、全身に力を込め、お互いに持つユニークスキルをそれぞれ発動させる。その瞬間、ワルの全身に薄い白色の羽衣のような物が纏わりつき、シェンにも同様に羽衣が纏わりつく。

 "神の羽衣"それがユニークスキルの名前だ。どの神も必ず持っているスキルで、神としての本領を発揮させる能力だ。さらに、このユニークスキル使用時は、自動回復能力も付与される為、中々に面倒臭い。

 それに対して烈毅は、ユニークスキル"負け知らずの最弱"を使う気配は見られない。ただじっと、ワルとシェンの姿を見ていただけだった。

『さぁ、それじゃあ準備ができたから、こちらから行かせてもらうね』

「来い」

 その返事の後、コンマ一秒にも満たない速度でワルとシェンは、同時に距離を詰める。その速度を目で追った烈毅は、ほんの少しだけ後に退き、攻撃の間合いから外れる。

 それをチャンスだと思ったワルとシェンは、息ピッタリに同時攻撃を烈毅に仕掛ける。ワルは両手で全力で殴打し、シェンは至近距離で無数の魔法で攻撃する。

 烈毅は、最初はなんとか防げていたものの、数で圧倒されては対処することも叶わず、何発か攻撃を食らってしまう。

 そこをさらに追い打ちをかけるワルとシェンは、更に自分の力を解放し、一発に全力を込めた攻撃をする。ワルは、右手に闘気と魔力を混ぜ合わせ、全力で殴打。シェンは、口を大きく開くと、目の前に魔法陣が形成される。その魔法陣はの五箇所に、火、水、木、光、闇、のそれぞれの魔法が展開され、それが中央で混ざり合い、そして一つの魔法となって放たれる。

 その両者の一撃を、烈毅は正面からまともに食らってしまう。骨が砕ける音と、魔法が直撃した際の爆発音が同時にその場を駆け巡る。

 黒い煙が舞い上がり、ワルとシェンは大きく後ろへ飛び距離を取る。

『さすがに、今のは本気でやりすぎた』

『僕も、少しやりすぎてしまったかな。いくら少し変わった人物とは言え、神と神獣の攻撃をまともに食らって立ってられるわけが無い』

『きっと、この戦いを見てる奴らも拍子抜けだろ』

『そうだね。僕も、ちょっと残念だ』

『なんだお前、やっぱり楽しみにしてたんじゃん』

『べ、別にそんなんじゃ―』

『…………は?』

 発言の途中だったシェンが、突然ワルの目の前から音もなく消え、何が起こったのか分からず、理解が出来なく、思わず声が漏れる。

「べちゃくちゃ喋ってんじゃねぇぞ戦い中に」

 その声が聞こえたのは、ワルの背後からだった。今まで感じたことの無い強烈な殺気に、思わずワルは死を覚悟した。距離的にはかなり近くにいると分かっていたワルは、後ろを振り向きながら背後にいるはずの烈毅を殴りつける。

 が、その攻撃はただ空気を殴りつけただけで、少し遅れて風が起こるだけだった。

『そんな……!?』

 突然右脇腹に痛みを感じたと思ったら、次には左手腕に痛みを感じていた。更に、いつの間にか宙に浮いており、上下左右が全くわからない状態に陥った。

『何が起こってるんだ!?』

 ただ落ちるだけしかなかったワルは、地上をなんとか確認しようと、必死に首を動かしながら周りを見る。だが、辺りは真っ白い世界が続いてるだけだった。

 そして数秒後、ボフッという音とももに、白い世界から抜けると、次は青色の世界が目に映った。そして、すぐにどこにいるのかを察した。

『俺は……雲の上にいるのか?』

 すぐ隣は、呻き声を上げながら体勢を立て直そうとするシェンの姿があり、ワルは声をかける。

『シェン、無事か!?』

『その声はワルかい!? これはどうなってるんだ!?』

『恐らく彼の攻撃でここまで飛ばされたんだ! そのまま落ちたらまずい!』

『そうは言っても……!』

 そこで言葉は途切れ、シェンの姿は確認出来なくなった。ワルも、体勢を立て直そうとするも、落下していく速度に抗えず、回転しながら落ちて行く。そして、身を任せるがままに落下していくと、雲を抜け、地上へと近づいていく。

『地上が見えた……!』

 ワルは、何とか無理にでも体勢を直そうと、最後まで取っておこうと思った手段を使う。

 "神翼"

 名前の如く、神々が持てる翼を生やした。

 これは、神だけが持つことが出来、神獣には使えないユニークスキルなのだ。その為、シェンはまだ落下を続けており、あと数秒で地面と激突する所だ。

『シェン!!!』

 ワルは、自由に飛ぶことが出来るその翼を使い、とてつもない速さでシェンの元へと向かう。そして、両手でシェンを持ち上げ、ゆっくりと地面へ降ろす。

『ありがとう、ワル。死ぬかと思ったよ』

『さすがにあれだけじゃ死にはしないけど、確かに重症を負うところだったね』

 そして、再び烈毅の方を見ると、烈毅は首をコキコキと鳴らし、全身にオーラを纏わせた姿で立っていた。

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コメント

  • うたたか

    神様より強い烈毅って…笑

    2
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