村人が世界最強だと嫌われるらしい
二難去ると、次は災難が起こります 4
シェンとワル。そう名乗った一匹と一人は、見るからに今まで会ってきたどの人物よりも、違う雰囲気を醸し出していた。
ワルと名乗った戦乙女は、身長は烈毅と同じくらい。体つきは、女性とは思えない程に発達しており、ボディービルダーの一回り小さいサイズと言えばわかるだろう。後ろに髪を縛ったポニーテールで、髪色は紅の色をしている。顔は小柄で、美男子の様な顔をしている。
それに、なんといっても格好が物凄い。頭には鉄製のティアラの様なものを付け、両腕にも鉄製の防具。豊満な胸だけを包んだだけの鉄の胸鎧。太ももの付け根がはっきりと見えるブルマ型の腰鎧。足にも鉄製の脚鎧をしている。
体の露出が多すぎるその防具は、もはや防具とは言えないのではないかと、烈毅は思った。だが、鍛え上げられた腹筋を見るからに、あまり余裕を見せるのも、良くはないとも同時に考えた。
その横にいる、シェンと名乗ったその銀色の毛並みの狼は、体格は二メートル程あり、とても鋭い目付きをしている。さらに、口からはみ出す鋭く尖った二本の牙は、何者もを噛み砕きそうなほどだ。大きな尻尾も特徴的だ。
「神様が俺に何の用?」
『俺はお前と戦いに来た。それだけだ』
「神様直々にですか。それは大層な事で」
『お前は面白い。人間でありながら、その身に宿した力は計り知れない。だから、俺がこの手で確かめに来た』
「神様ってのは、頭の悪い奴もいるのね」
『ワルは特にバカだね。神々の中じゃ、一番かもしれないな』
『ちょっとシェン! お前は俺の味方だろ!?』
『いや、彼が正しい事を言ったから』
『言ったからじゃないだろ!?』
「あの……そういうのをやるために来たなら、帰ってもらえます? 俺らもこれから忙しいんで」
『あ、ああすまん。文句はシェンに言っといてくれ。……それで、手合わせはしてくれるね?』
「条件がある。それを呑んでくれるならやってもいい」
『条件か……』
『ワル。ここは乗るべきじゃない。この条件次第じゃ、僕達は神々から何を言われるか分からない』
『なら、こちらもそれなりの条件を付ければいい』
「お、中々頭はキレるのね。馬鹿だと思ってたけど」
『うるさい! それで、条件ってのは?』
『ワル!』
『シェン。頼む。やらせてくれ』
シェンは、そう言うワルの瞳を見たとき、今までに無いほどのやる気を感じ取った。これはきっと、心から戦いたいと思ったのだろうと、シェンは即座に理解した。そして、仕方がないなど、シェンも気持ちを切り替えた。
「条件ってのは、俺が勝ったらある事を世界中の奴らに広めて欲しい」
『あること? それは何だ?』
「それは――」
元々、烈毅は神を探すという目的の元、あの抜けられずの島以来冒険をして来た。が、探す前に色々ありすぎて、正直先日まですっかり忘れていた。
神を探す理由は、神の言葉なら信用性が高いから、その信用性を使って、烈毅の身の潔白というよりは、しっかりとした存在認識をしてもらう為だ。
烈毅は、それを事細かに説明する。
『そういう事か……シェン、どう思う?』
『う〜ん、いいんじゃないかな。デメリットが無いのなら、別に受けてもいいと思う』
「まぁそもそも、メリットのあるような話なんて何も無いけどな。俺が負ければ俺にしかデメリットないし」
『君はそれでいいのかい?』
「いいよ。今はそれだけで十分だから」
『ふ〜ん……面白い人間だよ』
「まあな」
『それじゃ、俺の条件だけど、もし俺が勝利したら、お前は俺の物になれ』
「それは、こき使ってやるって事?」
『そういう事だ。それと、我々の為でもある』
「我々の為?」
『君が知る必要は無い。こっちの問題だからね。ほら、さっさと始めよう』
そう言うと、ワルは烈毅から五メートル程離れた場所へ移動し、手足をブラブラとさせる。シェンは、ミーシュが使ったものよりも遥かに明るい色をした魔法の光玉を出す。
「おい、こっちは話したんたぞ? もうちょっと説明を―」
『始め』
いきなり放たれた始まりの合図で、ワルは五メートルあった距離を、瞬きよりも早く動いて詰める。烈毅は、虚をつかれてしまい、動けない。
強烈な一撃が烈毅の腹部にヒットし、爆発音の様な音と、爆風がその場に巻き起こる。
その衝撃で、その場の空間がさらに広くなる。そして何より、烈毅は今まで感じたことの無い感覚の痛みに襲われる。
これが神の一撃。重く、鋭く、大きく、早く、そして痛む。以前戦ったファンウの一撃と同等の重さだ。だが、決定的に違う物が一つある。それは―
「殺気が篭ってない。それじゃ俺は倒せない」
烈毅は、ワルの右手をがっしりと鷲掴みにすると、シェンに向かって勢いよく投げつける。抵抗しようにも、あまりにも早すぎるその動作に、動くことすらままならないワルは、されるがままにされた。
『シェン避けろ!』
轟速で飛ぶワルを、シェンはどうにかして止めようと、魔法陣を形成し始める。この勢いだと、どこまで飛ばされるのか分からないため、シェンは止めることに専念することにしたのだ。だが、それは悪手。
烈毅が、シェンの横に突然現れ、それを視界の端で捉えたシェンは、一歩下がろうとするも、それよりも早く烈毅が行動を起こし、シェンは下顎を蹴られる。
シェンは、天井にぶつかり、その勢いは止まることを知らず、どんどんと地上へと戻されていく。
『ぐっ……ワル!』
そして、シェンは地上から上空へと飛び出し、やがて身は垂直落下を始める。
音もなく四本の足で着地すると、少し向こう側の地上から、勢いよくワルが地上へと飛び出してくる。
『ワル!』
それからシェンはワルと合流し、割れ目から飛び出してきた烈毅と、対峙する。
ワルと名乗った戦乙女は、身長は烈毅と同じくらい。体つきは、女性とは思えない程に発達しており、ボディービルダーの一回り小さいサイズと言えばわかるだろう。後ろに髪を縛ったポニーテールで、髪色は紅の色をしている。顔は小柄で、美男子の様な顔をしている。
それに、なんといっても格好が物凄い。頭には鉄製のティアラの様なものを付け、両腕にも鉄製の防具。豊満な胸だけを包んだだけの鉄の胸鎧。太ももの付け根がはっきりと見えるブルマ型の腰鎧。足にも鉄製の脚鎧をしている。
体の露出が多すぎるその防具は、もはや防具とは言えないのではないかと、烈毅は思った。だが、鍛え上げられた腹筋を見るからに、あまり余裕を見せるのも、良くはないとも同時に考えた。
その横にいる、シェンと名乗ったその銀色の毛並みの狼は、体格は二メートル程あり、とても鋭い目付きをしている。さらに、口からはみ出す鋭く尖った二本の牙は、何者もを噛み砕きそうなほどだ。大きな尻尾も特徴的だ。
「神様が俺に何の用?」
『俺はお前と戦いに来た。それだけだ』
「神様直々にですか。それは大層な事で」
『お前は面白い。人間でありながら、その身に宿した力は計り知れない。だから、俺がこの手で確かめに来た』
「神様ってのは、頭の悪い奴もいるのね」
『ワルは特にバカだね。神々の中じゃ、一番かもしれないな』
『ちょっとシェン! お前は俺の味方だろ!?』
『いや、彼が正しい事を言ったから』
『言ったからじゃないだろ!?』
「あの……そういうのをやるために来たなら、帰ってもらえます? 俺らもこれから忙しいんで」
『あ、ああすまん。文句はシェンに言っといてくれ。……それで、手合わせはしてくれるね?』
「条件がある。それを呑んでくれるならやってもいい」
『条件か……』
『ワル。ここは乗るべきじゃない。この条件次第じゃ、僕達は神々から何を言われるか分からない』
『なら、こちらもそれなりの条件を付ければいい』
「お、中々頭はキレるのね。馬鹿だと思ってたけど」
『うるさい! それで、条件ってのは?』
『ワル!』
『シェン。頼む。やらせてくれ』
シェンは、そう言うワルの瞳を見たとき、今までに無いほどのやる気を感じ取った。これはきっと、心から戦いたいと思ったのだろうと、シェンは即座に理解した。そして、仕方がないなど、シェンも気持ちを切り替えた。
「条件ってのは、俺が勝ったらある事を世界中の奴らに広めて欲しい」
『あること? それは何だ?』
「それは――」
元々、烈毅は神を探すという目的の元、あの抜けられずの島以来冒険をして来た。が、探す前に色々ありすぎて、正直先日まですっかり忘れていた。
神を探す理由は、神の言葉なら信用性が高いから、その信用性を使って、烈毅の身の潔白というよりは、しっかりとした存在認識をしてもらう為だ。
烈毅は、それを事細かに説明する。
『そういう事か……シェン、どう思う?』
『う〜ん、いいんじゃないかな。デメリットが無いのなら、別に受けてもいいと思う』
「まぁそもそも、メリットのあるような話なんて何も無いけどな。俺が負ければ俺にしかデメリットないし」
『君はそれでいいのかい?』
「いいよ。今はそれだけで十分だから」
『ふ〜ん……面白い人間だよ』
「まあな」
『それじゃ、俺の条件だけど、もし俺が勝利したら、お前は俺の物になれ』
「それは、こき使ってやるって事?」
『そういう事だ。それと、我々の為でもある』
「我々の為?」
『君が知る必要は無い。こっちの問題だからね。ほら、さっさと始めよう』
そう言うと、ワルは烈毅から五メートル程離れた場所へ移動し、手足をブラブラとさせる。シェンは、ミーシュが使ったものよりも遥かに明るい色をした魔法の光玉を出す。
「おい、こっちは話したんたぞ? もうちょっと説明を―」
『始め』
いきなり放たれた始まりの合図で、ワルは五メートルあった距離を、瞬きよりも早く動いて詰める。烈毅は、虚をつかれてしまい、動けない。
強烈な一撃が烈毅の腹部にヒットし、爆発音の様な音と、爆風がその場に巻き起こる。
その衝撃で、その場の空間がさらに広くなる。そして何より、烈毅は今まで感じたことの無い感覚の痛みに襲われる。
これが神の一撃。重く、鋭く、大きく、早く、そして痛む。以前戦ったファンウの一撃と同等の重さだ。だが、決定的に違う物が一つある。それは―
「殺気が篭ってない。それじゃ俺は倒せない」
烈毅は、ワルの右手をがっしりと鷲掴みにすると、シェンに向かって勢いよく投げつける。抵抗しようにも、あまりにも早すぎるその動作に、動くことすらままならないワルは、されるがままにされた。
『シェン避けろ!』
轟速で飛ぶワルを、シェンはどうにかして止めようと、魔法陣を形成し始める。この勢いだと、どこまで飛ばされるのか分からないため、シェンは止めることに専念することにしたのだ。だが、それは悪手。
烈毅が、シェンの横に突然現れ、それを視界の端で捉えたシェンは、一歩下がろうとするも、それよりも早く烈毅が行動を起こし、シェンは下顎を蹴られる。
シェンは、天井にぶつかり、その勢いは止まることを知らず、どんどんと地上へと戻されていく。
『ぐっ……ワル!』
そして、シェンは地上から上空へと飛び出し、やがて身は垂直落下を始める。
音もなく四本の足で着地すると、少し向こう側の地上から、勢いよくワルが地上へと飛び出してくる。
『ワル!』
それからシェンはワルと合流し、割れ目から飛び出してきた烈毅と、対峙する。
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