村人が世界最強だと嫌われるらしい
妖狐の国に来ちゃいました 7
「ほ、ほらこれ見ろ! しっかりキュウだろ!?」
だらーんとしたキュウの姿を見て、確かにそうだという顔をしながら眺めるも、どうしてこうなったのかを知りたがるような顔をして烈毅を睨む。
烈毅はそれを察して、簡潔に説明する。
「……まぁ、確かにキュウ様を届けに来たというのはわかったからいい、入れ」
「ありがとうな~」
重そうな扉がギギギと音を立てながら開かれ、烈毅は二人を抱えたまま城内へと入る。そして、その城内に圧倒され、思わず「うわぁ」と声を漏らしてしまう。
目の前には、十人並んでも余裕で通れるほどの大きさの階段があり、床にはびっしりと赤い絨毯が敷かれ、真上には五メートルはあろう大きさのシャンデリア、部屋に均等の位置で置かれた花。全てが完璧なまでに美しく、まさに『王』と感じさせるようなものであった。
烈毅は城を見回しながら歩いていると、階段が続いていた先の扉がゆっくりと開かれ、そこから一人の人物が歩いてくる。
「どんなお客人かとおもぉて来たら、これは珍しいもんが来たもんやぁ。それに、キュウも連れてきてくれておおきに」
関西弁のような喋り方でその扉の向こうから現れたのは、正しく『美』の集合体。本気で惚れそうになるくらいの眩しさを見せる。
金髪の髪をビシッと揃えた花月巻き。顔の輪郭はハッキリと見え、顔は小さく肌は白い。目は大人と思わせるキリッとした目付き。着物の上からでもわかる突き出た胸は、どこかエロさを醸し出す。東京の真ん中を歩いていたのなら、絶対に誰もが振り向くような、そんな人がゆっくりと階段をおり、烈毅の前まで来る。
「こ、こんにちわ。俺……私はキュウ、様の……」
「そんな畏まらなくてもええよぉ。いつも喋るみたいに喋ってもらってかまへんよぉ?」
ゆったりとした口調なのに、その言葉には重みのようなものを感じる。これがこの国の女王なのかと、烈毅は感心する。
「じゃ、じゃあ普通に敬語で……えっと、王女様の娘のキュウを届けに来ました。今は少し寝てますけど、そのうち起きると思うのでご心配なく」
「寝てる……というよりは、気絶してるように見えるけど……」
「気のせいですよ。きっと疲れてるんでしょうね!」
「フフ……面白いお方やなぁ。自分、名前は?」
「人村烈毅って言います」
「少し変わった名前やなぁ。ウチはネキツ。旦那はシェルド。よろしゅうなー」
「こちらこそ」
見た目よりもずっと優しそうで、どこか懐かしさを感じる。烈毅はそう思いながら、キュウをネキツへと渡す。
「自分ら、この後はどないしなはりますの?」
「特に予定はありませんよ。この国を歩き回ろうかなくらいに思ってます」
「そんな長居はせぇへんのやろぉ?」
「そうですね。ここから門まではかなり距離がありますし、表の世界で仲間が待ってるんで、すぐに帰ります」
「なら、キュウの力がまた必要になりますなぁ」
「そうなんですが……構いませんか?」
「かまへんかまへん。その代わり、ウチも付いていくけれど、かまへんなぁ?」
「ええ、問題ありません。最悪の場合は僕が守るんで」
「頼りになるなぁ。それと、自分ら宿は決まってる?」
「いえ、まだ決まってませんけど……」
「なら、ここ使って。少し過ごしにくいと思うけど」
「本当ですか? なら遠慮なく」
少しどころかめちゃくちゃ過ごしにくいわ!
「キュウを連れてきてくれてお礼や。ホンマおおきに」
その後、城を一通り案内されてから部屋へと案内され、その日はもう寝ることにした。寝ずに二日もぶっ続けで動いていたせいで、正直疲れていた。
ミーシュはまだ気を失っており、起きる気配はない。だだっ広い城の中の部屋は、案の定広く、そしてまた家具の一つ一つがとても高級品ばかり。鑑定スキルはないけれど、一目見ただけでそうと分かってしまう。
そんなものに囲まれた中、横で寝ているミーシュの顔を見ているうちに、烈毅も寝落ちしてしまう。シングルベッドが二つ離れて並んでおり、寝相でぶつかる事はない。二人は、静かに眠った。
――翌日の朝。
ベチ。
顔を何者かに蹴られた痛みで、烈毅は目が覚める。
「痛てぇ……ん? 痛い?」
あまりにも不思議すぎて、烈毅はすぐに体を起こして、痛みの正体を見る。それは、烈毅とは反対方向を向いて寝ていたミーシュだった。
「まてまてまてまて。ベッドは離れた場所にある。俺はこのベッドから動いてない。ってことは……いやいやいやいや、さすがにそんな事はないだろう。寝ながらフラフラ歩いて来た訳でもないし、転がって来た訳でもない……ならどうして?」
ベチ。
再び顔を蹴られ、烈毅はその足を払い除ける。どうしてだどうしてだとひたすら考えるも、やはりミーシュの寝相が悪かったとしか考えられなかった。
だから、烈毅はミーシュを起こして聞いてみることにした。
「おーい、起きろミーシュ」
「んんん……あ、おはよ……」
爆発した寝癖の事はほっといて、烈毅は目をこすっているミーシュに、なぜ自分のベッドにいたのかを訊く。
「なぁミーシュ。なんでお前は俺のベッドにいるんだ?」
「……知らないわよ……私はここ最近の記憶はないわ……」
「まさか……気を失ってから起きてないと?」
「そうよ」
「ほんとに?」
「だからそうだって」
「…………こんどからお前は布団に縛って寝させるからな」
だらーんとしたキュウの姿を見て、確かにそうだという顔をしながら眺めるも、どうしてこうなったのかを知りたがるような顔をして烈毅を睨む。
烈毅はそれを察して、簡潔に説明する。
「……まぁ、確かにキュウ様を届けに来たというのはわかったからいい、入れ」
「ありがとうな~」
重そうな扉がギギギと音を立てながら開かれ、烈毅は二人を抱えたまま城内へと入る。そして、その城内に圧倒され、思わず「うわぁ」と声を漏らしてしまう。
目の前には、十人並んでも余裕で通れるほどの大きさの階段があり、床にはびっしりと赤い絨毯が敷かれ、真上には五メートルはあろう大きさのシャンデリア、部屋に均等の位置で置かれた花。全てが完璧なまでに美しく、まさに『王』と感じさせるようなものであった。
烈毅は城を見回しながら歩いていると、階段が続いていた先の扉がゆっくりと開かれ、そこから一人の人物が歩いてくる。
「どんなお客人かとおもぉて来たら、これは珍しいもんが来たもんやぁ。それに、キュウも連れてきてくれておおきに」
関西弁のような喋り方でその扉の向こうから現れたのは、正しく『美』の集合体。本気で惚れそうになるくらいの眩しさを見せる。
金髪の髪をビシッと揃えた花月巻き。顔の輪郭はハッキリと見え、顔は小さく肌は白い。目は大人と思わせるキリッとした目付き。着物の上からでもわかる突き出た胸は、どこかエロさを醸し出す。東京の真ん中を歩いていたのなら、絶対に誰もが振り向くような、そんな人がゆっくりと階段をおり、烈毅の前まで来る。
「こ、こんにちわ。俺……私はキュウ、様の……」
「そんな畏まらなくてもええよぉ。いつも喋るみたいに喋ってもらってかまへんよぉ?」
ゆったりとした口調なのに、その言葉には重みのようなものを感じる。これがこの国の女王なのかと、烈毅は感心する。
「じゃ、じゃあ普通に敬語で……えっと、王女様の娘のキュウを届けに来ました。今は少し寝てますけど、そのうち起きると思うのでご心配なく」
「寝てる……というよりは、気絶してるように見えるけど……」
「気のせいですよ。きっと疲れてるんでしょうね!」
「フフ……面白いお方やなぁ。自分、名前は?」
「人村烈毅って言います」
「少し変わった名前やなぁ。ウチはネキツ。旦那はシェルド。よろしゅうなー」
「こちらこそ」
見た目よりもずっと優しそうで、どこか懐かしさを感じる。烈毅はそう思いながら、キュウをネキツへと渡す。
「自分ら、この後はどないしなはりますの?」
「特に予定はありませんよ。この国を歩き回ろうかなくらいに思ってます」
「そんな長居はせぇへんのやろぉ?」
「そうですね。ここから門まではかなり距離がありますし、表の世界で仲間が待ってるんで、すぐに帰ります」
「なら、キュウの力がまた必要になりますなぁ」
「そうなんですが……構いませんか?」
「かまへんかまへん。その代わり、ウチも付いていくけれど、かまへんなぁ?」
「ええ、問題ありません。最悪の場合は僕が守るんで」
「頼りになるなぁ。それと、自分ら宿は決まってる?」
「いえ、まだ決まってませんけど……」
「なら、ここ使って。少し過ごしにくいと思うけど」
「本当ですか? なら遠慮なく」
少しどころかめちゃくちゃ過ごしにくいわ!
「キュウを連れてきてくれてお礼や。ホンマおおきに」
その後、城を一通り案内されてから部屋へと案内され、その日はもう寝ることにした。寝ずに二日もぶっ続けで動いていたせいで、正直疲れていた。
ミーシュはまだ気を失っており、起きる気配はない。だだっ広い城の中の部屋は、案の定広く、そしてまた家具の一つ一つがとても高級品ばかり。鑑定スキルはないけれど、一目見ただけでそうと分かってしまう。
そんなものに囲まれた中、横で寝ているミーシュの顔を見ているうちに、烈毅も寝落ちしてしまう。シングルベッドが二つ離れて並んでおり、寝相でぶつかる事はない。二人は、静かに眠った。
――翌日の朝。
ベチ。
顔を何者かに蹴られた痛みで、烈毅は目が覚める。
「痛てぇ……ん? 痛い?」
あまりにも不思議すぎて、烈毅はすぐに体を起こして、痛みの正体を見る。それは、烈毅とは反対方向を向いて寝ていたミーシュだった。
「まてまてまてまて。ベッドは離れた場所にある。俺はこのベッドから動いてない。ってことは……いやいやいやいや、さすがにそんな事はないだろう。寝ながらフラフラ歩いて来た訳でもないし、転がって来た訳でもない……ならどうして?」
ベチ。
再び顔を蹴られ、烈毅はその足を払い除ける。どうしてだどうしてだとひたすら考えるも、やはりミーシュの寝相が悪かったとしか考えられなかった。
だから、烈毅はミーシュを起こして聞いてみることにした。
「おーい、起きろミーシュ」
「んんん……あ、おはよ……」
爆発した寝癖の事はほっといて、烈毅は目をこすっているミーシュに、なぜ自分のベッドにいたのかを訊く。
「なぁミーシュ。なんでお前は俺のベッドにいるんだ?」
「……知らないわよ……私はここ最近の記憶はないわ……」
「まさか……気を失ってから起きてないと?」
「そうよ」
「ほんとに?」
「だからそうだって」
「…………こんどからお前は布団に縛って寝させるからな」
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