村人が世界最強だと嫌われるらしい
抜けられずの島 4
波の音がなる中、血に染まった砂浜には、烈毅とヘールが睨み合い、それを横から見るように変異種、そして、烈毅のすぐ後ろにはヘールの催眠魔法で気絶させられたルノ達。傍から見れば、絶望的な状況だ。だか、烈毅はこの状況に少しワクワクしていた。
守らなければならない存在には、烈毅が倒されない限り手は触れられはしない。そんな事は、絶対にあってはならない。その緊張感が、烈毅の戦闘本能を奮い立たせ、高揚感を味わわせていた。
「さてぇ、こんなに長く睨み合ったところでぇ、何も進みませんのでぇ、こちらから仕掛けさせてもらいますぅ」
そう言い、ヘールは持っていた杖を構え、胸の辺りまで杖を上げると、魔法を詠唱し始める。
「炎よ、獄炎となって焼き尽くせ。―ヘルフレイム―」
すると、魔法陣が空中に現れ、人の三倍ほどの大きさをした炎の塊が、魔法陣から放たれる。これほどの大きさを出せるということは、本当にかなり上位の者で間違いないだろう。多分、ミーシュの全力よりも遥かに上をいくだろう。
その魔法はかなりの速度で烈毅に向かって落ちていき、烈毅はそれを避けようとはせず、受け切る体勢を取る。離れすぎれば、今発動させているユニークスキルが解けてしまう。そのための判断だ。
「そんな真正面から受けたらぁ、丸焦げになりますよぉ?」
「なめんな」
ニヤッと笑い、ヘールの言ったことに小声で答える。確実に命中する距離までヘルフレイムが迫る。
そして、あたるかと思ったその瞬間、空中でヘルフレイムが爆発し、その場には物凄い熱風と爆発音が響き渡る。
近くにいた変異種達は焼けて消滅し、その場には廃すら残らない。跡形もなく消え去った。後にあったジャングルにも燃え移り、辺りは火の海となる。
「はぁ……殺さないで運ぶつもりでしたが、これでは多分跡形もなく消え去ったでしょうねぇ……せっかくの戦力がぁ、これでは魔王様に叱られますぅ」
ヘールが杖を下ろそうとしたその瞬間――
「それなら良かったなぁ? まだ叱られずに済むぞ?」
殺気を放って言ったその一言に、ヘールは初めて焦った表情を見せる。ここまで平然とした態度と顔でいたヘールが、瞬時に杖を構え直し、戦闘態勢へと入ったのだ。
「おいおい、そんな焦らなくたって俺は待ってやるよ?」
炎が波打つ中から、烈毅が肩を何度も回しながら歩いてくる。物凄い魔法を食らったのにも関らず、わかるのは服が多少燃えたという程度。あとは、ほぼ無傷と言っていい。
「なぜぇ……あれだけの魔法を食らって生きていられるのですかぁ?」
「いやぁ、ビビったよ。俺に炎耐性がなかったら完全に死んでたよ」
「炎耐性……?」
「ああ、そうだよ、炎耐性。他にもいろいろ耐性があるんだよ。だから、俺はほぼ無傷ってわけ。あ、因みに言っとくぞ? 俺、物理攻撃以外ダメージ入らないから」
それは、烈毅のユニークスキル"完全魔法耐性"だ。ありとあらゆる魔法に対し、耐性や無効化能力を保有するものだ。ただし、これにも欠点があり、自分に向けてのバフ効果を与えられる魔法を無効化してしまうというのと、武器にかけられた魔法は無効化できないというものだ。
つまりは、直接烈毅にかけられる魔法は、ほぼ全て無効化されるということだ。
「そんな……ありえない」
「おいおい、口調が可笑しいぞ? 語尾は伸ばすんじゃ無かったのかぁ?」
烈毅は、ヘールの真似をした口調でそう言う。魔法が通じないとなれば、近接戦闘に持ち込むしかない。だが、今のヘールに、烈毅と互角にやりあうだけの力が無い。それは、ヘールも理解していた。
「本当にめんどくさい人ですぅ……ここは一旦撤退させて貰うとしましょうかなぁ? ですがぁ、この島にかけた魔法は永続的に続きますのでぇ、一生朝を過ごしてくださいぃ。では御機嫌よぉ」
そう言って、ヘールは海へ飛び込み、物凄い速さで遠くへ離れていった。それに続いて、変異種達も海に飛び込み、ヘールに付いていく形で去っていった。短い戦闘時間だったが、何故か少し疲れた気がした。
「はぁ……行ったか。とりあえず、この事はファイアに報告しとこうかな」
そう思い、烈毅は念話を使用する。だが、何故かファイアには繋がらず、時間が経っても、一向に繋がる気配は無かった。
「これ、多分阻害魔法がかけられてるなぁ? 抜け目がねぇなヘールとかいう奴……それより、どうやってここから抜け出すかだよなぁ~」
烈毅は、大の字になりながら血に染まった砂浜に寝転ぶ。変異種の死体からは、悪臭がその場を立ち込め、そして辺りには、臓物や脳、眼球などが無造作に散らばっている。その中、ほんの微かに、潮の匂いがした。
しばらく空を見ながら気持ちを落ち着かせた後、ユニークスキルを解くことを忘れていた烈毅は、すぐに解除し、催眠魔法で気絶させられていたルノ達を起こす。
「お~い、起きろ~、チューしちゃうぞ~」
そんな冗談交じりに放った一言に、ナーシェが突然と目をギャンと見開き、「今、チューするって言った!?」と、鬼の形相で烈毅に近寄る。
「お前、本当は魔法かかってなかったんじゃないの……」
守らなければならない存在には、烈毅が倒されない限り手は触れられはしない。そんな事は、絶対にあってはならない。その緊張感が、烈毅の戦闘本能を奮い立たせ、高揚感を味わわせていた。
「さてぇ、こんなに長く睨み合ったところでぇ、何も進みませんのでぇ、こちらから仕掛けさせてもらいますぅ」
そう言い、ヘールは持っていた杖を構え、胸の辺りまで杖を上げると、魔法を詠唱し始める。
「炎よ、獄炎となって焼き尽くせ。―ヘルフレイム―」
すると、魔法陣が空中に現れ、人の三倍ほどの大きさをした炎の塊が、魔法陣から放たれる。これほどの大きさを出せるということは、本当にかなり上位の者で間違いないだろう。多分、ミーシュの全力よりも遥かに上をいくだろう。
その魔法はかなりの速度で烈毅に向かって落ちていき、烈毅はそれを避けようとはせず、受け切る体勢を取る。離れすぎれば、今発動させているユニークスキルが解けてしまう。そのための判断だ。
「そんな真正面から受けたらぁ、丸焦げになりますよぉ?」
「なめんな」
ニヤッと笑い、ヘールの言ったことに小声で答える。確実に命中する距離までヘルフレイムが迫る。
そして、あたるかと思ったその瞬間、空中でヘルフレイムが爆発し、その場には物凄い熱風と爆発音が響き渡る。
近くにいた変異種達は焼けて消滅し、その場には廃すら残らない。跡形もなく消え去った。後にあったジャングルにも燃え移り、辺りは火の海となる。
「はぁ……殺さないで運ぶつもりでしたが、これでは多分跡形もなく消え去ったでしょうねぇ……せっかくの戦力がぁ、これでは魔王様に叱られますぅ」
ヘールが杖を下ろそうとしたその瞬間――
「それなら良かったなぁ? まだ叱られずに済むぞ?」
殺気を放って言ったその一言に、ヘールは初めて焦った表情を見せる。ここまで平然とした態度と顔でいたヘールが、瞬時に杖を構え直し、戦闘態勢へと入ったのだ。
「おいおい、そんな焦らなくたって俺は待ってやるよ?」
炎が波打つ中から、烈毅が肩を何度も回しながら歩いてくる。物凄い魔法を食らったのにも関らず、わかるのは服が多少燃えたという程度。あとは、ほぼ無傷と言っていい。
「なぜぇ……あれだけの魔法を食らって生きていられるのですかぁ?」
「いやぁ、ビビったよ。俺に炎耐性がなかったら完全に死んでたよ」
「炎耐性……?」
「ああ、そうだよ、炎耐性。他にもいろいろ耐性があるんだよ。だから、俺はほぼ無傷ってわけ。あ、因みに言っとくぞ? 俺、物理攻撃以外ダメージ入らないから」
それは、烈毅のユニークスキル"完全魔法耐性"だ。ありとあらゆる魔法に対し、耐性や無効化能力を保有するものだ。ただし、これにも欠点があり、自分に向けてのバフ効果を与えられる魔法を無効化してしまうというのと、武器にかけられた魔法は無効化できないというものだ。
つまりは、直接烈毅にかけられる魔法は、ほぼ全て無効化されるということだ。
「そんな……ありえない」
「おいおい、口調が可笑しいぞ? 語尾は伸ばすんじゃ無かったのかぁ?」
烈毅は、ヘールの真似をした口調でそう言う。魔法が通じないとなれば、近接戦闘に持ち込むしかない。だが、今のヘールに、烈毅と互角にやりあうだけの力が無い。それは、ヘールも理解していた。
「本当にめんどくさい人ですぅ……ここは一旦撤退させて貰うとしましょうかなぁ? ですがぁ、この島にかけた魔法は永続的に続きますのでぇ、一生朝を過ごしてくださいぃ。では御機嫌よぉ」
そう言って、ヘールは海へ飛び込み、物凄い速さで遠くへ離れていった。それに続いて、変異種達も海に飛び込み、ヘールに付いていく形で去っていった。短い戦闘時間だったが、何故か少し疲れた気がした。
「はぁ……行ったか。とりあえず、この事はファイアに報告しとこうかな」
そう思い、烈毅は念話を使用する。だが、何故かファイアには繋がらず、時間が経っても、一向に繋がる気配は無かった。
「これ、多分阻害魔法がかけられてるなぁ? 抜け目がねぇなヘールとかいう奴……それより、どうやってここから抜け出すかだよなぁ~」
烈毅は、大の字になりながら血に染まった砂浜に寝転ぶ。変異種の死体からは、悪臭がその場を立ち込め、そして辺りには、臓物や脳、眼球などが無造作に散らばっている。その中、ほんの微かに、潮の匂いがした。
しばらく空を見ながら気持ちを落ち着かせた後、ユニークスキルを解くことを忘れていた烈毅は、すぐに解除し、催眠魔法で気絶させられていたルノ達を起こす。
「お~い、起きろ~、チューしちゃうぞ~」
そんな冗談交じりに放った一言に、ナーシェが突然と目をギャンと見開き、「今、チューするって言った!?」と、鬼の形相で烈毅に近寄る。
「お前、本当は魔法かかってなかったんじゃないの……」
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