村人が世界最強だと嫌われるらしい
旧友に会いに行こうと思います 5
「痛い! お尻が平になったらどうるすの!?」
「知るかっ」
烈毅が連れていたのは女盗賊。それも、かなり美人のだ。小さ目のカバンを背中に背負っている。ショートな髪型は、多分動き安さを重視してだろう。
「そ、その人が犯人……なの?」
「ああ。俺らが森にいる時から盗みまくってた張本人」
「え!? じゃああの日下着が無くなってたのって……」
「私ね。まぁ、なんで盗んだのかって言うと、下着の着替えを忘れたからね。あの遠征の日に」
「クソ野郎め……私の大切な下着を……」
ルノとレーナが殺気を放つ。烈毅は、それをなんとか抑えようと、必死に声を投げかける。
「待て待て。そう怒るなって。こいつも反省してるって」
「うんうん。ていうか、あの時遠征に参加したのはただの興味本位だし? 盗む気はなかったんだけど、下着を忘れてしまったために少し拝借した訳で……」
「「返せ」」
「わ、わかったわ! だからお願い! そんな殺気立てて近寄らないで!?」
その後、彼女らは和解し合い、女盗賊を逃がすと言う結果になった。
「色々申し訳なかったわね。私はミルテス。またどこかで会うかもしれないから、名乗っておくわね!」
「ああ、俺は烈毅。後は――」
自己紹介も終わり、ミルテスは去っていく。念のため、もう盗みはするなと釘を指してはあるが、盗賊は盗みをするのが得意だから盗賊なわけであって、どうせまたやらかすのだろう。
だが、盗まれた者が帰ってきた事は嬉しいのか、ルノとレーナは素直に喜んでいる。
だがここで疑問が生まれる。
なぜ固執に俺らを狙ったのか。そこは烈毅にもわからない。スパイという線はないとは思っている。もしスパイなら、盗みをしてまでわざわざ尾行している事を、バレるようなことはしないからだ。
そんな事を考えても拉致があかないため、烈毅達はさっさと朝食を済ませ、目的地へと向かう事にした。
そして三日後。ようやく目的地メルクリアへと到着する。そして、メルクリア境界線内に入るやいなや、強力なモンスターが襲いかかってくる。
全てをレーナにやらせる訳にもいかなかったため、烈毅も参加しようとしたが、ナーシェ、ミーシュが先にレーナのフォローに入ってくれたため、そのまま見ることにした。
連携はだいぶ取れている。レーナの背後をナーシェが守り、遠くでミーシュが魔法で援護する。
ぶっつけ本番で組んだ即席パーティーにしてはかなり上出来。烈毅もそれには頷きながら感心する。
その後、戦闘が終わり、モンスター戦うのも面倒だと思ったため、少し小走りでメルクリア町へと入る事にした。
ここは国一番人が集まる場所なだけあり、モンスターもかなり強いし、数も多い。さらに、雑魚は他の冒険者がレベル上げのために殺してしまうため、必然的に強いモンスターが残ってしまうのだ。
メルクリア町の前まで来た五人は一度止まり、身を隠すため烈毅、ナーシェ、ミーシュはフードを深く被る。
そしてメルクリア町内に入ると、その途端に町の熱気に当てられ、少し退いてしまう。
「安いよ安いよ〜! 今は魚が特に美味しくて安いよ〜!」
「魔法薬に回復薬。毒消し草に麻痺直し薬。必要な分だけ買っていきな〜!!」
「な、なによここ……私達の出身地とは大違いじゃない……」
「お、俺もここは久しぶりなんだが、こんなに盛んじゃなかったぞ……」
「当たり前です。この町は進化し続けるんです。ささ、早く情報集めに行きますよ」
「お、おう……」
ナーシェは烈毅の手を掴み、引っ張って行く。フードを被ってる事をいい事に、実はめちゃくちゃニヤニヤしているのは秘密だ。
それについて行くように、残りの三人は後ろを歩いて行く。
フードを被った三人は周りからは変な風見られ、多くの視線を浴びてしまう。
「れ、烈毅! 視線が集まりすぎてる!」
ルノはヒソヒソ声で烈毅に話しかける。
「仕方ないだろ? フードなんて被ってればこうなる」
「私恥ずかしいんだけど!?」
「我慢しろ。そしたら後でご飯奢ってやる」
「我慢します」
それから五人は掲示板の前に移動し、目立った報告やクエストがないか調べる。
その中で、烈毅は一つだけ変なクエストを見つける。
これは……おかしいぞ?
そのクエストは、烈毅が調子にのって根絶やしにして、この国から消し去ったモンスターの討伐依頼だった。
その名はベビィデビル。
名前の通り、小さい悪魔の様な姿をしたモンスターで、かなりの雑魚モンスターだ。しかも、そのベビィデビルは、ある特定の場所にしか生息しておらず、ここメルクリア付近にはその生息地は無いのだ。
にもかかわらず、すぐ先の洞窟で発見されたと言うクエスト依頼を見て、烈毅は気にせずにはいられなかった。
「ほら、烈毅行くわよ」
「すまん。俺トイレ行きたくなった。先に宿で休んでて?」
「トイレなら宿にも……」
「宿のトイレ臭いから野糞してくる〜」
「はぁ!?」
そう言って、烈毅はメルクリア町を飛び出していった。
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