天下界の無信仰者(イレギュラー)
運命が、目の前に現れたのだ。
知らず、エノクはつぶやいていた。
「いくぜ、勝負の続きだ」
そう言って神愛が殴りかかってきた。
剣と拳をぶつけ合う。強化された両者の間で火花が散り轟音が鳴り響く。猛然と殴りつけてくる神愛に剣が弾かれそうになるのをエノクは耐えた。
「くぅ」
力が思うように出せず防戦に追い込まれていく。
エノクはなんとか神愛と距離を取り直後神愛の頭上からメタトロンの拳が降りてきた。
神愛の足場が影で覆われる。見上げればすぐそこまで拳が迫っていた。
逃げられない。
「うおおお!」
神愛の足場で黄金の風が渦巻いた。それは神愛の全身を昇っていく。上昇する黄金を纏い神愛は拳を打ち付けた。
地面が悲鳴を挙げるようにひび割れた。衝撃に空気のうねりが辺りを吹き飛ばし、神愛とメタトロンの拳が押しつけ合う。
押しつぶされそうな力が神愛を襲う。全身に力を入れるがぜんぜん押し返せない。一撃で潰されない神愛もすごいがすごいだけじゃ意味が無い。
欲しいのは、そんな賞賛じゃない。
「ぬ、ぐう!」
エノクに負けられない理由があるように、神愛にだって負けられない理由がある。今もそこで見てくれている友を助けるためにも。
この戦いには、絶対に勝つ。
彼女との約束を守るために。
「負けてたまるかぁあ!」
噴出する黄金のオーラがメタトロンの拳を飲み込んだ。そして。
「おおおおお!」
爆発する強化が、メタトロンの拳を押し返していた。
「なんと」
メタトロンの拳は引き離され神愛から離れていく。エノクの前にはへこんだ地面に立つ、全身を黄金に包まれた神愛の姿だった。
「俺は約束したんだ。あいつを守るって。そうだ、約束したんだよ」
神愛が改めて拳を作る。その動作だけで神愛を中心にして風が巻き起こった。
「誰にも邪魔はさせないぜ」
神愛の中でなにかが目覚めていた。それは感情を呼び起こし急激に神化を上げていた。
忘れていたものを少しずつ取り戻していく。この時、運命というものがあるのならそれはまさにこの一戦に他ならない。
それは、六十年も前から決まっていた戦い。
二人の、約束の時だった。
神愛は一歩を踏み出した。黄金が再戦のゴングを鳴らす。
「エノク。全力で来い。今度は俺も全力で戦ってやる」
「なるほど」
エノクもここにきて完全に理解した。
「そうか」
これは六十年越しの決闘。約束の再戦だ。
「そういうことか」
運命が、目の前に現れたのだ。
『じゃあこうだ。お前はこれから立派に生きろ。今よりももっと強くなって、俺なんかよりももっとたくさんの人を救うんだ。お前はいずれこの国に必要な男になる。それで次に俺とお前が戦う時がきたらよ』
負けられない。負けられない。
絶対に、負けられない!
『約束だぜ、エノク。次に戦う時は、俺を越えてくれよ』
約束を、叶える時だ!
「うおおおお!」
「はああああ!」
二人は同時に走り出し、何度目になるかも分からない激突を行った。
二人の戦いは苛烈なものだった。嵐のように激しく炎のように熱かった。
この戦いが始まって神愛の強化がエノクの技を越えていった。神愛が拳を振れば猛風が巻き起こり地面の表層を吹き飛ばしていく。まるで歩く暴風、崩れた建物の瓦礫が飛んでいく。
ここにいる全員の予想を裏切って、エノクの苦戦が続いていた。神託物を破壊され不完全だとしても神愛の強さは今まででも群を抜いていた。
「どうしたエノク、この程度かよ。俺を超えるんじゃなかったのか!」
神愛は勢いに任せエノクに言葉をぶつける。そこになにか意図があったわけじゃない。ただ、自然と出てくるのだ。
「俺を超えてみろよエノクぅう!」
「いくぜ、勝負の続きだ」
そう言って神愛が殴りかかってきた。
剣と拳をぶつけ合う。強化された両者の間で火花が散り轟音が鳴り響く。猛然と殴りつけてくる神愛に剣が弾かれそうになるのをエノクは耐えた。
「くぅ」
力が思うように出せず防戦に追い込まれていく。
エノクはなんとか神愛と距離を取り直後神愛の頭上からメタトロンの拳が降りてきた。
神愛の足場が影で覆われる。見上げればすぐそこまで拳が迫っていた。
逃げられない。
「うおおお!」
神愛の足場で黄金の風が渦巻いた。それは神愛の全身を昇っていく。上昇する黄金を纏い神愛は拳を打ち付けた。
地面が悲鳴を挙げるようにひび割れた。衝撃に空気のうねりが辺りを吹き飛ばし、神愛とメタトロンの拳が押しつけ合う。
押しつぶされそうな力が神愛を襲う。全身に力を入れるがぜんぜん押し返せない。一撃で潰されない神愛もすごいがすごいだけじゃ意味が無い。
欲しいのは、そんな賞賛じゃない。
「ぬ、ぐう!」
エノクに負けられない理由があるように、神愛にだって負けられない理由がある。今もそこで見てくれている友を助けるためにも。
この戦いには、絶対に勝つ。
彼女との約束を守るために。
「負けてたまるかぁあ!」
噴出する黄金のオーラがメタトロンの拳を飲み込んだ。そして。
「おおおおお!」
爆発する強化が、メタトロンの拳を押し返していた。
「なんと」
メタトロンの拳は引き離され神愛から離れていく。エノクの前にはへこんだ地面に立つ、全身を黄金に包まれた神愛の姿だった。
「俺は約束したんだ。あいつを守るって。そうだ、約束したんだよ」
神愛が改めて拳を作る。その動作だけで神愛を中心にして風が巻き起こった。
「誰にも邪魔はさせないぜ」
神愛の中でなにかが目覚めていた。それは感情を呼び起こし急激に神化を上げていた。
忘れていたものを少しずつ取り戻していく。この時、運命というものがあるのならそれはまさにこの一戦に他ならない。
それは、六十年も前から決まっていた戦い。
二人の、約束の時だった。
神愛は一歩を踏み出した。黄金が再戦のゴングを鳴らす。
「エノク。全力で来い。今度は俺も全力で戦ってやる」
「なるほど」
エノクもここにきて完全に理解した。
「そうか」
これは六十年越しの決闘。約束の再戦だ。
「そういうことか」
運命が、目の前に現れたのだ。
『じゃあこうだ。お前はこれから立派に生きろ。今よりももっと強くなって、俺なんかよりももっとたくさんの人を救うんだ。お前はいずれこの国に必要な男になる。それで次に俺とお前が戦う時がきたらよ』
負けられない。負けられない。
絶対に、負けられない!
『約束だぜ、エノク。次に戦う時は、俺を越えてくれよ』
約束を、叶える時だ!
「うおおおお!」
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二人は同時に走り出し、何度目になるかも分からない激突を行った。
二人の戦いは苛烈なものだった。嵐のように激しく炎のように熱かった。
この戦いが始まって神愛の強化がエノクの技を越えていった。神愛が拳を振れば猛風が巻き起こり地面の表層を吹き飛ばしていく。まるで歩く暴風、崩れた建物の瓦礫が飛んでいく。
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「どうしたエノク、この程度かよ。俺を超えるんじゃなかったのか!」
神愛は勢いに任せエノクに言葉をぶつける。そこになにか意図があったわけじゃない。ただ、自然と出てくるのだ。
「俺を超えてみろよエノクぅう!」
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