天下界の無信仰者(イレギュラー)
追っ手
「おい、しつこいぞお前ら」
きっとさっきの衛兵が仲間を呼んだのだろう。エリヤはやれやれと思いながらも近づいていく。
しかしウリエルは違った。目つきが鋭さを増す。この衛兵、さっきの男性とは雰囲気がまるで違う。言葉を一切話さない空気は殺伐とし、彼らが纏う雰囲気はまるで戦場に立つ兵士のようだ。話す気どころか捕まえるつもりもない。
そんな、生半可なものではない。
「仕事熱心なのはいいけどさ――」
「エリヤ、待て。こいつら、さきほどの衛兵とは違う!」
「ああ? なに言ってんだ、衛兵に違うもなにも――」
エリヤが振り返りウリエルを見る。その時だった。
衛兵の一人が剣を抜き、エリヤの背中を切りつけてきたのだ。
「うをおおお!」
それを察しエリヤは寸前のところで回避した。危なかった。もう少しで本当に斬られていた。
「おいぃいい! いきなり切りかかってくるとかやりすぎだろ! 俺がなにしたっていうんだよ! 謹慎中なのに外に出てみただけじゃねえか。それともお前ら酒場の関係者か? ちょっと待ってろよ貯まったツケは必ず返すって」
謝罪がしたいのか言い訳がしたいのかよく分からない。
そんなエリヤを別の衛兵が襲ってきた!
「おわあああ! 分かった! 分かったって! 今週中には返すよ!」
「エリヤ構えろ! こいつら、衛兵じゃない!」
衛兵が取るような行動ではない。彼らの攻撃には躊躇いが一切ない。非情な兵士、もしくはそういう風に教育されている諜報員のようだ。
ウリエルの警告にエリヤが振り向く。
「知ってるよ、酒場の店主が雇った殺し屋だろ? 俺が金を払わないから殺しに来たんだ」
「違うわ!」
けれどぜんぜん伝わってない。
「マジ? 返さなくていいの?」
「それは払え!」
ウリエルは剣を取り出し構えた。五人を睨みながらエリヤに声をかける。
「お前は逃げろ! こいつらの狙いは私だ、お前だけなら追っては来ない」
「どういうことだよ?」
分からない。どうして彼女が狙われなければならない? しかもこんな連中に。
エリヤは唖然となるが敵は止まらない。狙いをウリエルに移し切りかかってきた。それをウリエルも負けじと剣ではじき返す。
「行け、エリヤ!」
ウリエルはもうエリヤを見ていなかった。襲いかかる衛兵の姿をした何者かと戦っている。どれも手強い。やはり衛兵ではなく特殊な訓練を受けた者たちばかりだ。
ウリエルが一人とつばぜり合いを行う。その隙にもう一人が背中へと剣を突き出した。
「くっ!」
ウリエルの表情が歪む。
「うおりゃー!」
その一人をエリヤがアッパーで吹き飛ばした。殴られた男は十数メートルも頭上に浮かんだ後地面に激突した。
「お前!」
ウリエルが叫ぶ。逃げろと言ったのにエリヤは逃げなかった。それどころか参加までしてきた。
「なぜ逃げなかった? お前まで巻き込まれるぞ!」
自分の問題に人を巻き込むつもりなんてなかった。だからウリエルは言ったのに、この男はそんな善意すら聞きやしない。
今だって、ウリエルの苦情など右から左に聞き流し残りの四人に正面を向けた。
「この動き、てめえらデバッカー部隊だな。誇りのないその太刀筋見れば一発で分かる」
彼らの連携には隙がない。一人が相手を押さえ、その間に背後からとどめを刺すやり方は実に合理的だ。正々堂々なんて非効率的な戦い方なんてしない。彼らは騎士ではなく、兵士だ。
彼らは無駄を行わない。だが、そんな彼らが口を開いた。
「そういうお前は聖騎士エリヤだな」
バレているなら隠す必要もない。油断のない、凄みのある声で男は話しかけてきた。
それでウリエルがエリヤの横にやってきた。
「すごいな、分かるのか」
「いや、なんとなくだったんだけど」
デバッカー部隊の男が続ける。
「そこを退け、聖騎士エリヤ。これは我々に下った正式な任務だ。邪魔立てするな」
デバッカー部隊といえば汚れ役専門の特殊部隊。彼らのこなす任務は秘密事項の塊だ。いわば国の危険な裏側、関わっていいことなどない。
しかしエリヤは退かなかった。デバッカー部隊? この国の暗部? そんなもの関係ない。
きっとさっきの衛兵が仲間を呼んだのだろう。エリヤはやれやれと思いながらも近づいていく。
しかしウリエルは違った。目つきが鋭さを増す。この衛兵、さっきの男性とは雰囲気がまるで違う。言葉を一切話さない空気は殺伐とし、彼らが纏う雰囲気はまるで戦場に立つ兵士のようだ。話す気どころか捕まえるつもりもない。
そんな、生半可なものではない。
「仕事熱心なのはいいけどさ――」
「エリヤ、待て。こいつら、さきほどの衛兵とは違う!」
「ああ? なに言ってんだ、衛兵に違うもなにも――」
エリヤが振り返りウリエルを見る。その時だった。
衛兵の一人が剣を抜き、エリヤの背中を切りつけてきたのだ。
「うをおおお!」
それを察しエリヤは寸前のところで回避した。危なかった。もう少しで本当に斬られていた。
「おいぃいい! いきなり切りかかってくるとかやりすぎだろ! 俺がなにしたっていうんだよ! 謹慎中なのに外に出てみただけじゃねえか。それともお前ら酒場の関係者か? ちょっと待ってろよ貯まったツケは必ず返すって」
謝罪がしたいのか言い訳がしたいのかよく分からない。
そんなエリヤを別の衛兵が襲ってきた!
「おわあああ! 分かった! 分かったって! 今週中には返すよ!」
「エリヤ構えろ! こいつら、衛兵じゃない!」
衛兵が取るような行動ではない。彼らの攻撃には躊躇いが一切ない。非情な兵士、もしくはそういう風に教育されている諜報員のようだ。
ウリエルの警告にエリヤが振り向く。
「知ってるよ、酒場の店主が雇った殺し屋だろ? 俺が金を払わないから殺しに来たんだ」
「違うわ!」
けれどぜんぜん伝わってない。
「マジ? 返さなくていいの?」
「それは払え!」
ウリエルは剣を取り出し構えた。五人を睨みながらエリヤに声をかける。
「お前は逃げろ! こいつらの狙いは私だ、お前だけなら追っては来ない」
「どういうことだよ?」
分からない。どうして彼女が狙われなければならない? しかもこんな連中に。
エリヤは唖然となるが敵は止まらない。狙いをウリエルに移し切りかかってきた。それをウリエルも負けじと剣ではじき返す。
「行け、エリヤ!」
ウリエルはもうエリヤを見ていなかった。襲いかかる衛兵の姿をした何者かと戦っている。どれも手強い。やはり衛兵ではなく特殊な訓練を受けた者たちばかりだ。
ウリエルが一人とつばぜり合いを行う。その隙にもう一人が背中へと剣を突き出した。
「くっ!」
ウリエルの表情が歪む。
「うおりゃー!」
その一人をエリヤがアッパーで吹き飛ばした。殴られた男は十数メートルも頭上に浮かんだ後地面に激突した。
「お前!」
ウリエルが叫ぶ。逃げろと言ったのにエリヤは逃げなかった。それどころか参加までしてきた。
「なぜ逃げなかった? お前まで巻き込まれるぞ!」
自分の問題に人を巻き込むつもりなんてなかった。だからウリエルは言ったのに、この男はそんな善意すら聞きやしない。
今だって、ウリエルの苦情など右から左に聞き流し残りの四人に正面を向けた。
「この動き、てめえらデバッカー部隊だな。誇りのないその太刀筋見れば一発で分かる」
彼らの連携には隙がない。一人が相手を押さえ、その間に背後からとどめを刺すやり方は実に合理的だ。正々堂々なんて非効率的な戦い方なんてしない。彼らは騎士ではなく、兵士だ。
彼らは無駄を行わない。だが、そんな彼らが口を開いた。
「そういうお前は聖騎士エリヤだな」
バレているなら隠す必要もない。油断のない、凄みのある声で男は話しかけてきた。
それでウリエルがエリヤの横にやってきた。
「すごいな、分かるのか」
「いや、なんとなくだったんだけど」
デバッカー部隊の男が続ける。
「そこを退け、聖騎士エリヤ。これは我々に下った正式な任務だ。邪魔立てするな」
デバッカー部隊といえば汚れ役専門の特殊部隊。彼らのこなす任務は秘密事項の塊だ。いわば国の危険な裏側、関わっていいことなどない。
しかしエリヤは退かなかった。デバッカー部隊? この国の暗部? そんなもの関係ない。
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