天下界の無信仰者(イレギュラー)
人類同士の戦いに天羽が介入すると?
サリエルはこう言うがラグエルが食いついた。
「人類同士の戦いに天羽が介入すると?」
「じゃあ見殺しにしろってか?」
「問題がありすぎる。協定違反はもちろんのこと、そうした場合我々は慈愛連立を支援する形になる。天羽が一部の人類の肩を持つというのか?」
「そりゃそうだろ、慈愛連立はどうであれ聖なる父を崇拝してる」
「それ以外は切り捨てると?」
「仕方がないさ」
「断じて認められない!」
ラグエルは両手をテーブルに叩きつけ席を立った。
「スパルタも、コーサラ国も、同じ人間だ!」
普段熱くなることがない男が、この場にいる全員に向け熱弁を振るっていた。
彼は実直で寡黙(かもく)だ。だが、それは感性が希薄というわけではない。
心の奥底では、彼もまた人類を思う天羽なのだ。
「思想も信仰も違えど、同じ人間ではないか!? 天羽は救う者を選別するというのか?」
彼の信仰は素直で純真だ。人を救うというその高貴な思想、それは利他的でなければならない。救うものを選ぶなど不純だ。
彼の真面目さはそれを認められなかった。
場がどんどん荒々しい雰囲気へと流れ始めていく。
そんな中であってもガブリエルは冷静だった。さきほどから腕と足を組み、瞑目し、身じろぎ一つしていない。
そんな彼女へミカエルが声をかける。
「ガブリエル、君の意見は」
ミカエルとサリエル、ラファエルとラグエルで現状意見は割れている。彼女がどちらを選ぶかでこの会議は決まる。
重要な選択だ。ガブリエルは静かに瞼を開けた。
「人類の争いへ天羽が介入する正当性に疑問がないとは言えない」
「じゃあ」
ガブリエルの意見にラファエルの顔が明るくなる。
「しかし」
「?」
が、ガブリエルは意見を反転させた。
「開戦は、このままいけば間違いなく起こるだろう。その時の備えとして天羽軍は強力な援軍となる。一部に肩入れする形になるが、かといって静観することに問題がないとは言えない。なにより、ヘブンズ・ゲートに関しては天羽長に決定権がある。決めるのは彼だ」
それは意外な発言だった。以前の会議で見せた通り、彼女はヘブンズ・ゲートには反対だった。その彼女が容認する発言をしたことにこの場は静まりかえっていた。
「これはどういうことかな、てっきり君は反対すると思っていたのだが」
そう思っていたのはミカエルも例外ではなく、嬉しい誤算に口元を持ち上げている。
「事情が変わった。それだけだ」
「なるほど。君の意見は受け取った」
これで意見は出揃った。全会一致とはいかなかったがそれでも答えは出る。
ヘブンズ・ゲート。その方針が決まった。
「ヘブンズ・ゲート稼働準備の提案はは三対二で可決とする」
ヘブンズ・ゲートの稼働準備。それが決定したことにラグエルは力なく席についた。両肘をテーブルにつき顔を伏せる。
「…………なんてことだ」
これで三柱戦争だけでなくヘブンズ・ゲートの再開まで現実的となった。もう今後はどうなるか分からない。もしかしたら第二の天界紛争が起きても不思議ではないのだ。
なにより、これによりルシファー協定は反故にされたも同然。
それはすなわち、誠実さや信用など、無意味だという証明だ。
それが、ラグエルの胸をえぐった。
「人類同士の戦いに天羽が介入すると?」
「じゃあ見殺しにしろってか?」
「問題がありすぎる。協定違反はもちろんのこと、そうした場合我々は慈愛連立を支援する形になる。天羽が一部の人類の肩を持つというのか?」
「そりゃそうだろ、慈愛連立はどうであれ聖なる父を崇拝してる」
「それ以外は切り捨てると?」
「仕方がないさ」
「断じて認められない!」
ラグエルは両手をテーブルに叩きつけ席を立った。
「スパルタも、コーサラ国も、同じ人間だ!」
普段熱くなることがない男が、この場にいる全員に向け熱弁を振るっていた。
彼は実直で寡黙(かもく)だ。だが、それは感性が希薄というわけではない。
心の奥底では、彼もまた人類を思う天羽なのだ。
「思想も信仰も違えど、同じ人間ではないか!? 天羽は救う者を選別するというのか?」
彼の信仰は素直で純真だ。人を救うというその高貴な思想、それは利他的でなければならない。救うものを選ぶなど不純だ。
彼の真面目さはそれを認められなかった。
場がどんどん荒々しい雰囲気へと流れ始めていく。
そんな中であってもガブリエルは冷静だった。さきほどから腕と足を組み、瞑目し、身じろぎ一つしていない。
そんな彼女へミカエルが声をかける。
「ガブリエル、君の意見は」
ミカエルとサリエル、ラファエルとラグエルで現状意見は割れている。彼女がどちらを選ぶかでこの会議は決まる。
重要な選択だ。ガブリエルは静かに瞼を開けた。
「人類の争いへ天羽が介入する正当性に疑問がないとは言えない」
「じゃあ」
ガブリエルの意見にラファエルの顔が明るくなる。
「しかし」
「?」
が、ガブリエルは意見を反転させた。
「開戦は、このままいけば間違いなく起こるだろう。その時の備えとして天羽軍は強力な援軍となる。一部に肩入れする形になるが、かといって静観することに問題がないとは言えない。なにより、ヘブンズ・ゲートに関しては天羽長に決定権がある。決めるのは彼だ」
それは意外な発言だった。以前の会議で見せた通り、彼女はヘブンズ・ゲートには反対だった。その彼女が容認する発言をしたことにこの場は静まりかえっていた。
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「事情が変わった。それだけだ」
「なるほど。君の意見は受け取った」
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