天下界の無信仰者(イレギュラー)
覚悟、ですか?
意外だった。てっきりこのまま部屋に入れられ裁判にでもかけられるものだと思っていたが。普通ならばそうだろう。実はやってきたのもラグエルではなくサリエルかと思っていた。
「なぜだ?」
だからエリヤは聞き返すのだがラグエルは覚えの悪い子供を見るような目で言い返す。
「なぜ? ふん。頭の中まで筋肉質なお前にも分かりやすく教えてやる。この緊迫した世界状況で落ちこぼれとはいえ聖騎士が反逆、謀反を起こしたなどニュースになってみろ。そんなことも分からないからお前は馬鹿なんだ」
「お前の言いたいことも俺のことが嫌いなのもよく分かったよ」
「それはよかった」
エリヤは元気なく立ち上がった。扉が開けられラグエルに連れ出される。他に見張りはいない。信用されているのか大所帯で騒ぎ立てたくないだけなのか。
「それで、俺はこれからどこに行くんだ?」
「総教会庁だ。そこでおまえには処分を受けてもらう。あくまでも今回とは別件でだ。おあつらいむきな理由が提示されるだろう」
「そうかい」
順当にいけば司法庁に任せるべきなのだがそれでは公になる。腹を探られるのも癪だ。ここは所属元である総教会庁に任せるのが一番穏便ということだった。
それに、神官庁は裁こうと思えばいつでも裁けるのだから。
二人は留置所の入り口前にまで着ていた。受付や休憩所など広場になっている。
「見ろ、お前の保護者だ」
「保護者?」
言われエリヤが目を動かす。
そこにはこことは不釣り合いな少女が一人佇んでいた。愛らしい容姿をした少女がこちらに気づく。
「兄さん!?」
「シルフィア!?」
それはシルフィアだった。エリヤが捕まったことを知らされ引き渡し役として呼ばれたのだ。
だがシルフィアを見るなりエリヤはラグエルの肩を掴んだ!
「おいラグエル、俺を今すぐ牢屋に入れてくれ!」
「に、い、さぁああああん!」
シルフィアが猛ダッシュで近づいてくる。勢いをつけると床を蹴り、小さい体でエリヤの顔面にドロップキックを打ち付けた!
「ぐはあ!」
エリヤの体が吹き飛ばされ床をすべる。シルフィアは体操選手もかくやといったきれいさで着地し自らの兄を見下ろしている。
「なにやっているんですかこの大馬鹿兄さんは!」
「それ三回目だよ」
「では十回になるまで聞かせてあげます!」
「なんの記録狙ってるんだ」
エリヤは蹴られた頬をさすりながら立ち上がる。あの小さい体のどこにこれほどの力があるのか。それかよっぽど信心深いのか。
シルフィアはエリヤを睨みつけていたが、すぐにラグエルに振り向くと深々と頭を下げた。
「ラグエルさんすみません。私の愚兄がまたもご迷惑をおかけして。それにこんな大事を。私の監督不足です。ほんとうにすみませんでした。ほら、兄さんも謝る!」
「があ!」
シルフィアの蹴りがすねに直撃する。
「はあ」
そんな兄妹を見てラグエルはため息を吐いた。
「シルフィア、君が謝ることはない。ただし今回は事が事だ。覚悟しておいて欲しい」
「覚悟、ですか?」
シルフィアが見上げる。その目は不安に染まっていた。
「なぜだ?」
だからエリヤは聞き返すのだがラグエルは覚えの悪い子供を見るような目で言い返す。
「なぜ? ふん。頭の中まで筋肉質なお前にも分かりやすく教えてやる。この緊迫した世界状況で落ちこぼれとはいえ聖騎士が反逆、謀反を起こしたなどニュースになってみろ。そんなことも分からないからお前は馬鹿なんだ」
「お前の言いたいことも俺のことが嫌いなのもよく分かったよ」
「それはよかった」
エリヤは元気なく立ち上がった。扉が開けられラグエルに連れ出される。他に見張りはいない。信用されているのか大所帯で騒ぎ立てたくないだけなのか。
「それで、俺はこれからどこに行くんだ?」
「総教会庁だ。そこでおまえには処分を受けてもらう。あくまでも今回とは別件でだ。おあつらいむきな理由が提示されるだろう」
「そうかい」
順当にいけば司法庁に任せるべきなのだがそれでは公になる。腹を探られるのも癪だ。ここは所属元である総教会庁に任せるのが一番穏便ということだった。
それに、神官庁は裁こうと思えばいつでも裁けるのだから。
二人は留置所の入り口前にまで着ていた。受付や休憩所など広場になっている。
「見ろ、お前の保護者だ」
「保護者?」
言われエリヤが目を動かす。
そこにはこことは不釣り合いな少女が一人佇んでいた。愛らしい容姿をした少女がこちらに気づく。
「兄さん!?」
「シルフィア!?」
それはシルフィアだった。エリヤが捕まったことを知らされ引き渡し役として呼ばれたのだ。
だがシルフィアを見るなりエリヤはラグエルの肩を掴んだ!
「おいラグエル、俺を今すぐ牢屋に入れてくれ!」
「に、い、さぁああああん!」
シルフィアが猛ダッシュで近づいてくる。勢いをつけると床を蹴り、小さい体でエリヤの顔面にドロップキックを打ち付けた!
「ぐはあ!」
エリヤの体が吹き飛ばされ床をすべる。シルフィアは体操選手もかくやといったきれいさで着地し自らの兄を見下ろしている。
「なにやっているんですかこの大馬鹿兄さんは!」
「それ三回目だよ」
「では十回になるまで聞かせてあげます!」
「なんの記録狙ってるんだ」
エリヤは蹴られた頬をさすりながら立ち上がる。あの小さい体のどこにこれほどの力があるのか。それかよっぽど信心深いのか。
シルフィアはエリヤを睨みつけていたが、すぐにラグエルに振り向くと深々と頭を下げた。
「ラグエルさんすみません。私の愚兄がまたもご迷惑をおかけして。それにこんな大事を。私の監督不足です。ほんとうにすみませんでした。ほら、兄さんも謝る!」
「があ!」
シルフィアの蹴りがすねに直撃する。
「はあ」
そんな兄妹を見てラグエルはため息を吐いた。
「シルフィア、君が謝ることはない。ただし今回は事が事だ。覚悟しておいて欲しい」
「覚悟、ですか?」
シルフィアが見上げる。その目は不安に染まっていた。
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