天下界の無信仰者(イレギュラー)
この場で説明して欲しいのか?
「んだよ礼は言わないってか? それともお前も照れてんのか? どいつもこいつもシャイばかりだぜ」
「とりあえず貴様は始末書だ」
「なんのだよ!?」
「この場で説明して欲しいのか?」
「とか言ってほんとは虚仮威しだろ? そんな脅しで騙せるのは臆病者だけだぜ。俺は違う」
「まずは教皇宮殿の破損」
「だからあれはサンダルフォンが」
「加えて先日の酒場での件だが」
「ああ~、分かったよ。くそ、めんどくせえな」
エリヤの顔がみるみると下を向いていく。叩けばホコリが飛び散る身では分が悪すぎる。
「エリヤ。お前も騎士ならばもっとしっかりしろ。弟を見習うんだな」
「……髪を白に染めろってか?」
「違う」
ラグエルは呆れたように顔を振った。
「まずその服装はなんだ?」
「支給品。センスの悪さは俺に言うなよ?」
「服装の乱れのことだ」
「着こなしは俺流だろ」
「規則に従え阿呆。マルタ様の立場も考えろ。お前の振る舞いでどれだけ要らぬ苦労をかけたか」
「そうなのか?」
エリヤは首を伸ばしマルタに聞いてみる。けれどマルタは答えず微笑のまま黙秘していた。
「違うってさ」
「まったく」
それをいいことにエリヤは違うと決めつけラグエルは額に手を当てる。教皇マルタなりの優しさは分かるが叱ることもして欲しい。
「この件は総教会庁にも追って伝える。それまで貴様は謹慎だ。……と言いたいところだが、神官庁の所属ではないお前では私から直接処分は下せん。よかったな」
「お前の部下じゃなくてよかったぜ」
「ぬかせ。それはこちらの台詞だ。お前が部下なら私の首が飛ぶわ」
「部下じゃなくてもこの場でその首飛ばしてやろうか」
「減らず口を」
飄々としたエリヤと剛健としたラグエルの口論が続く。
そこへ、駆け寄る足音があった。猛スピードで走るとともに大声が聞こえてくる。
「エリヤ兄さんのぉお!」
「げ!」
その声にエリヤの背筋がピンと張った。今日一番の驚きようだ。
すぐさに部屋の入り口へと顔を向ける。その顔面に、走ってきた少女がドロップキックをお見舞いした!
「バカァアア!」
「ぐはあ!」
少女渾身のスペシャルチャージにエリヤの体が倒れる。あまりの出来事に部屋中の騎士たちが口を開けて見つめていた。あの屈強なエリヤを、一人の少女が蹴り飛ばしたのだ。
エリヤは蹴られた頬に手を当てながら、金髪の少女を見上げた。
「いってー! なにすんだよシルフィア!」
その少女は幼さの残る十歳くらい女の子だった。この場にはそぐわない町娘の格好で、気品のある金髪に青い瞳が可愛らしいが、その目はエリヤを険しい目つきで見下ろしていた。
「それはこちらの台詞です! 私たち一番のお兄さんであるにも関わらずこの体たらく! お酒に喧嘩に加えて隠し事とはなんですか! どうしてエノク兄さんと試合があると教えてくれなかったんです? 家族なんだから教えてくださいよ!」
「お前の兄でも言えないことの一つや二つあるっつーの。お前はいちいち小便しましたとか報告されたいのか」
「兄さんが私の兄さんじゃないならあなたと結婚します! そして嫁として夫の公正に一生尽くします。ええ、それはもう良夫と誰もが口を揃えていうくらいに」
「やめろ! やめてくれ……。お前が四六時中とかぜったい痩せる……鬱になるわ……」
「ならば兄らしくしてください。つぎ私に内緒のことをしたら一ヶ月飲み物は水のみですからね!」
「一ヶ月!? お前は鬼か!?」
「いいえ、兄を慕い正しき道に導く愛らしい妹です」
「聞いてねえよ……」
「とりあえず貴様は始末書だ」
「なんのだよ!?」
「この場で説明して欲しいのか?」
「とか言ってほんとは虚仮威しだろ? そんな脅しで騙せるのは臆病者だけだぜ。俺は違う」
「まずは教皇宮殿の破損」
「だからあれはサンダルフォンが」
「加えて先日の酒場での件だが」
「ああ~、分かったよ。くそ、めんどくせえな」
エリヤの顔がみるみると下を向いていく。叩けばホコリが飛び散る身では分が悪すぎる。
「エリヤ。お前も騎士ならばもっとしっかりしろ。弟を見習うんだな」
「……髪を白に染めろってか?」
「違う」
ラグエルは呆れたように顔を振った。
「まずその服装はなんだ?」
「支給品。センスの悪さは俺に言うなよ?」
「服装の乱れのことだ」
「着こなしは俺流だろ」
「規則に従え阿呆。マルタ様の立場も考えろ。お前の振る舞いでどれだけ要らぬ苦労をかけたか」
「そうなのか?」
エリヤは首を伸ばしマルタに聞いてみる。けれどマルタは答えず微笑のまま黙秘していた。
「違うってさ」
「まったく」
それをいいことにエリヤは違うと決めつけラグエルは額に手を当てる。教皇マルタなりの優しさは分かるが叱ることもして欲しい。
「この件は総教会庁にも追って伝える。それまで貴様は謹慎だ。……と言いたいところだが、神官庁の所属ではないお前では私から直接処分は下せん。よかったな」
「お前の部下じゃなくてよかったぜ」
「ぬかせ。それはこちらの台詞だ。お前が部下なら私の首が飛ぶわ」
「部下じゃなくてもこの場でその首飛ばしてやろうか」
「減らず口を」
飄々としたエリヤと剛健としたラグエルの口論が続く。
そこへ、駆け寄る足音があった。猛スピードで走るとともに大声が聞こえてくる。
「エリヤ兄さんのぉお!」
「げ!」
その声にエリヤの背筋がピンと張った。今日一番の驚きようだ。
すぐさに部屋の入り口へと顔を向ける。その顔面に、走ってきた少女がドロップキックをお見舞いした!
「バカァアア!」
「ぐはあ!」
少女渾身のスペシャルチャージにエリヤの体が倒れる。あまりの出来事に部屋中の騎士たちが口を開けて見つめていた。あの屈強なエリヤを、一人の少女が蹴り飛ばしたのだ。
エリヤは蹴られた頬に手を当てながら、金髪の少女を見上げた。
「いってー! なにすんだよシルフィア!」
その少女は幼さの残る十歳くらい女の子だった。この場にはそぐわない町娘の格好で、気品のある金髪に青い瞳が可愛らしいが、その目はエリヤを険しい目つきで見下ろしていた。
「それはこちらの台詞です! 私たち一番のお兄さんであるにも関わらずこの体たらく! お酒に喧嘩に加えて隠し事とはなんですか! どうしてエノク兄さんと試合があると教えてくれなかったんです? 家族なんだから教えてくださいよ!」
「お前の兄でも言えないことの一つや二つあるっつーの。お前はいちいち小便しましたとか報告されたいのか」
「兄さんが私の兄さんじゃないならあなたと結婚します! そして嫁として夫の公正に一生尽くします。ええ、それはもう良夫と誰もが口を揃えていうくらいに」
「やめろ! やめてくれ……。お前が四六時中とかぜったい痩せる……鬱になるわ……」
「ならば兄らしくしてください。つぎ私に内緒のことをしたら一ヶ月飲み物は水のみですからね!」
「一ヶ月!? お前は鬼か!?」
「いいえ、兄を慕い正しき道に導く愛らしい妹です」
「聞いてねえよ……」
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