天下界の無信仰者(イレギュラー)
真の首謀者
「やりましたね、主」
彼の背後からミルフィアが勝利を称える。天羽長ミカエルとの戦闘に勝利したのだ。あれほどの激闘を制したことにミルフィアは微笑み神愛の勇姿を誇らしげに見つめていた。
「ああ、勝ったな。俺たちの勝利だ」
彼女の声色に合わせ神愛も嬉しそうに勝利を口にした。ミカエルとの戦い。あれは振り返ってみてもすさまじいものだった。今でも勝ったのが信じられないくらいだ。
それくらい、ミカエルは強かった。
神愛は緩んでいた顔を引き締めた。
「戦っていて、分かったことがあるんだ」
『なんでしょうか?』
今まで戦っていた相手の姿を思い返し、神愛は自分の胸に拳を当てた。
「あいつも……譲れないもののために戦っていたんだな、ってさ。きっと、とても大切なものだったんだと思う。ふざけたやつだったけどさ、そこはすげえと思うよ」
ミカエルは強かった。だが、それは力だけがすごかったわけじゃない。どんな困難にも果敢に戦う姿は覚悟の強さを示していたし、その点だけで言えば、誰も彼に勝てなかったろう。
『そうですね。でも、主だってそれは同じです。ここに至るまで多くの困難がありました。でも、主は進むことを止めず、約束を諦めなかった。それも十分素晴らしいことです』
しかしあの激闘をくぐり抜けたのは神愛も同じ。過程にある多くの困難を乗り越えた神愛も英雄と称すに相応しい。
ミルフィアは自分の左胸に手を当てて、誇らしげに目を閉じた。
『あなたに賞賛を。我が主』
心の底から。ミルフィアからのほめ言葉に神愛は恥ずかしそうに笑った。
「何言ってんだよ。みんなのおかげ。お前のおかげさ、ミルフィア。ありがとうな」
『いえ、私が主に仕えること、手伝うこと。それは当然のことです』
ミルフィアはニコっと笑い、そんな風に笑う彼女に神愛はやれやれと両肩を持ち上げた。
「それじゃあ帰るか。もう少しここにいてもいいけど、あっちも心配だからな」
そう言って神愛は地上のある方角を向いた。こっちの勝負はついたがまだあっちは終わっていない。早く戻って戦いが終わったことを伝えなくては。
神愛は三次元操作をするために目的地を脳裏に描き念じようとした。
その時だった。
「なに!?」
『これは?』
この場をすさまじい重圧が襲った!
「おいおいなんだよこれ!? 普通じゃねえぞ!」
突然の重圧にたまらず焦る。今まで感じたこともない存在感だ。そのすさまじさは『気配だけで宇宙が壊れそうなほど』だ。
いったい誰だ? 考えるが心当たりは一人もいない。というよりも、比べる相手すらいないほどだ。今まで出会ってきた者たちとは明らかに別格の力。
この宇宙ですら入りきらないほどの、圧倒的な存在感。
『まさか』
そこでミルフィアが反応した。
『主、気を付けてください! 来ます!』
声には危機感があった。この期に及んでなにが来るというのか。しかもミカエルを前にしても平静だった彼女がここまで焦る相手とは?
まさか。
神愛にも予感が浮かび、それはすぐに確信となった。
ミカエルが戦った元々の動機。始まりのきっかけとなったものはなんだったのか。
それは、二千年前の使命と名誉に他ならない。
来たのだ、真の首謀者が。
「来るか……!」
来る危機感に神愛は表情を引き締める。
この世界には人が住む天下界と神が住む天上界がある。天下界にも全能となった者たちはいるが、それも信仰者の枠の中。しょせん神を信仰している神、下位の神でしかない。
神は信仰しない。
神は祈らない。
信仰している神など紛い物。
本物の神とは、己の真理を神域にまで昇華させ、神理とした三人の超人のみ。
三柱の神。その一つが、現れる。
彼の背後からミルフィアが勝利を称える。天羽長ミカエルとの戦闘に勝利したのだ。あれほどの激闘を制したことにミルフィアは微笑み神愛の勇姿を誇らしげに見つめていた。
「ああ、勝ったな。俺たちの勝利だ」
彼女の声色に合わせ神愛も嬉しそうに勝利を口にした。ミカエルとの戦い。あれは振り返ってみてもすさまじいものだった。今でも勝ったのが信じられないくらいだ。
それくらい、ミカエルは強かった。
神愛は緩んでいた顔を引き締めた。
「戦っていて、分かったことがあるんだ」
『なんでしょうか?』
今まで戦っていた相手の姿を思い返し、神愛は自分の胸に拳を当てた。
「あいつも……譲れないもののために戦っていたんだな、ってさ。きっと、とても大切なものだったんだと思う。ふざけたやつだったけどさ、そこはすげえと思うよ」
ミカエルは強かった。だが、それは力だけがすごかったわけじゃない。どんな困難にも果敢に戦う姿は覚悟の強さを示していたし、その点だけで言えば、誰も彼に勝てなかったろう。
『そうですね。でも、主だってそれは同じです。ここに至るまで多くの困難がありました。でも、主は進むことを止めず、約束を諦めなかった。それも十分素晴らしいことです』
しかしあの激闘をくぐり抜けたのは神愛も同じ。過程にある多くの困難を乗り越えた神愛も英雄と称すに相応しい。
ミルフィアは自分の左胸に手を当てて、誇らしげに目を閉じた。
『あなたに賞賛を。我が主』
心の底から。ミルフィアからのほめ言葉に神愛は恥ずかしそうに笑った。
「何言ってんだよ。みんなのおかげ。お前のおかげさ、ミルフィア。ありがとうな」
『いえ、私が主に仕えること、手伝うこと。それは当然のことです』
ミルフィアはニコっと笑い、そんな風に笑う彼女に神愛はやれやれと両肩を持ち上げた。
「それじゃあ帰るか。もう少しここにいてもいいけど、あっちも心配だからな」
そう言って神愛は地上のある方角を向いた。こっちの勝負はついたがまだあっちは終わっていない。早く戻って戦いが終わったことを伝えなくては。
神愛は三次元操作をするために目的地を脳裏に描き念じようとした。
その時だった。
「なに!?」
『これは?』
この場をすさまじい重圧が襲った!
「おいおいなんだよこれ!? 普通じゃねえぞ!」
突然の重圧にたまらず焦る。今まで感じたこともない存在感だ。そのすさまじさは『気配だけで宇宙が壊れそうなほど』だ。
いったい誰だ? 考えるが心当たりは一人もいない。というよりも、比べる相手すらいないほどだ。今まで出会ってきた者たちとは明らかに別格の力。
この宇宙ですら入りきらないほどの、圧倒的な存在感。
『まさか』
そこでミルフィアが反応した。
『主、気を付けてください! 来ます!』
声には危機感があった。この期に及んでなにが来るというのか。しかもミカエルを前にしても平静だった彼女がここまで焦る相手とは?
まさか。
神愛にも予感が浮かび、それはすぐに確信となった。
ミカエルが戦った元々の動機。始まりのきっかけとなったものはなんだったのか。
それは、二千年前の使命と名誉に他ならない。
来たのだ、真の首謀者が。
「来るか……!」
来る危機感に神愛は表情を引き締める。
この世界には人が住む天下界と神が住む天上界がある。天下界にも全能となった者たちはいるが、それも信仰者の枠の中。しょせん神を信仰している神、下位の神でしかない。
神は信仰しない。
神は祈らない。
信仰している神など紛い物。
本物の神とは、己の真理を神域にまで昇華させ、神理とした三人の超人のみ。
三柱の神。その一つが、現れる。
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