天下界の無信仰者(イレギュラー)
彼女が待ってます
「たった一人なんて不用心じゃないのか? それとも自信家なのか?」
「私を倒せるほどの者なら下級天羽がいくらいても意味がないのでね」
「そうかい」
悲観も苦笑もすることなく、ガブリエルは事実だと特に感慨もなく言う。潔さなのか客観的な思考が売りなのか。
ただ、その姿勢から戦いは避けられないと伝わってくる。戦う気も見せないくせに役割には忠実らしい。
ガブリエルの氷のような視線に見つめられる。恵瑠と同じ澄んだ青色の瞳が刃物のような威圧感を伴っている。
強い。向かい合って分かる。今までも見てきたが戦う相手として意識して見ればそれがよく分かる。
天羽の役職がどうやって決まっているのか知らないが、こいつ、天羽の中でも最強クラスだろ。
「主、ここは私が。主はさきに東区画に向かってください」
「ミルフィア?」
隣に立っていたミルフィアが前に出た。すでに戦闘態勢だ、ガブリエルを真っ直ぐに捉え隙のない声だった。
ミルフィアは、俺の前に立つと言った。
「ガブリエルは私が倒します」
ミルフィアはガブリエルと一対一で戦うつもりだった。
この戦いで重要なのは時間だ、もたもたしていれば天界の門は開き切り本当に勝負にならなくなる。そのためここで俺が東に行くのは分かる。
だが危険だ。相手はガブリエル、どんな力を持っているか分からないが一対一よりも、ここだけでも二人で戦うべきだ。
「でも」
「早く」
そう思って言おうとするのだが、ミルフィアにきっぱりと言われてしまった。
「彼女と二人で戦っていてはどの道手遅れです。直に見て分かりましたが、扉の開く速度が上がっています。今はまだ半分も開いていませんが、開くときはあっという間でしょう。私たちに時間はありません」
言われて見上げるが、天界の門の扉が開くスピードは少しずつ上がっているように見える。
掛け算のようなものだろうか。今はまだ早くはないが、そのうち劇的に上がり瞬時に全開になるはずだ。
「それに」
ミルフィアの声に俺は視線を元に戻した。ミルフィアの小柄な背中を見つめる。
ミルフィアは小さく振り返ると、俺を見つめた。
「彼女が待ってます」
「ミルフィア……」
その目が言っていた。行ってきてくださいと。
そこで俺の想いを叶えて欲しいと、彼女の目は優しく、そして力強く言っていた。
ありがとう。
こいつはいつだって、俺のことを考えてくれる。俺が望んでいることを叶えようとしてくれる。
その思いに応えるためにも、俺は決意した。
「……死ぬなよ」
「大丈夫ですよ、主」
胸の中で感謝する。でも心配な気持ちはまだあって、それで声をかけたのだが。
「私、けっこう強いですから」
こいつは、笑ってそんなことを言ってきた。微笑んだ顔は可愛らしくて、これから戦うなんてとても思えない。
気が緩むというか、ホッとするような笑顔だったんだ。
つられて俺も小さく笑った。すぐに表情を引き締める。
「行ってくる」
「はい、ご武運を」
俺はミルフィアを広場に残し走り出していた。広場を出て東へと向かう。ミルフィアを心配する気持ちはまだあるがここは彼女を信じよう。
俺は一人で街を走っていくが、天羽の群れが上空から襲いかかってきた。
「くそ、まだこんなにいんのかよ!」
右手を王金調律で強化する。拳に黄金のオーラが集い、先頭の天羽を思いっきり殴りつけた。
吹き飛んだ天羽は背後の天羽数体を巻き込み、まるでボーリングのピンのように弾け飛んでいった。
しかし後続が続々と襲いかかってくる。なんて数だ、百体くらいいんのか?
めちゃくちゃな数だ、多勢に無勢にもほどがあるだろ。でも、これでもまだ全開じゃないんだ。
ほっとけば百なんて単位が可愛く思えるほどの大軍がやってくる。こんなのさっさと突破して、俺は俺のことをやらなくちゃ。
みんな戦ってるんだ、
「そこどけてめえら!」
俺は走った。目の前には視界を覆うほどの天羽が剣を振り上げ、俺は激突した。
「私を倒せるほどの者なら下級天羽がいくらいても意味がないのでね」
「そうかい」
悲観も苦笑もすることなく、ガブリエルは事実だと特に感慨もなく言う。潔さなのか客観的な思考が売りなのか。
ただ、その姿勢から戦いは避けられないと伝わってくる。戦う気も見せないくせに役割には忠実らしい。
ガブリエルの氷のような視線に見つめられる。恵瑠と同じ澄んだ青色の瞳が刃物のような威圧感を伴っている。
強い。向かい合って分かる。今までも見てきたが戦う相手として意識して見ればそれがよく分かる。
天羽の役職がどうやって決まっているのか知らないが、こいつ、天羽の中でも最強クラスだろ。
「主、ここは私が。主はさきに東区画に向かってください」
「ミルフィア?」
隣に立っていたミルフィアが前に出た。すでに戦闘態勢だ、ガブリエルを真っ直ぐに捉え隙のない声だった。
ミルフィアは、俺の前に立つと言った。
「ガブリエルは私が倒します」
ミルフィアはガブリエルと一対一で戦うつもりだった。
この戦いで重要なのは時間だ、もたもたしていれば天界の門は開き切り本当に勝負にならなくなる。そのためここで俺が東に行くのは分かる。
だが危険だ。相手はガブリエル、どんな力を持っているか分からないが一対一よりも、ここだけでも二人で戦うべきだ。
「でも」
「早く」
そう思って言おうとするのだが、ミルフィアにきっぱりと言われてしまった。
「彼女と二人で戦っていてはどの道手遅れです。直に見て分かりましたが、扉の開く速度が上がっています。今はまだ半分も開いていませんが、開くときはあっという間でしょう。私たちに時間はありません」
言われて見上げるが、天界の門の扉が開くスピードは少しずつ上がっているように見える。
掛け算のようなものだろうか。今はまだ早くはないが、そのうち劇的に上がり瞬時に全開になるはずだ。
「それに」
ミルフィアの声に俺は視線を元に戻した。ミルフィアの小柄な背中を見つめる。
ミルフィアは小さく振り返ると、俺を見つめた。
「彼女が待ってます」
「ミルフィア……」
その目が言っていた。行ってきてくださいと。
そこで俺の想いを叶えて欲しいと、彼女の目は優しく、そして力強く言っていた。
ありがとう。
こいつはいつだって、俺のことを考えてくれる。俺が望んでいることを叶えようとしてくれる。
その思いに応えるためにも、俺は決意した。
「……死ぬなよ」
「大丈夫ですよ、主」
胸の中で感謝する。でも心配な気持ちはまだあって、それで声をかけたのだが。
「私、けっこう強いですから」
こいつは、笑ってそんなことを言ってきた。微笑んだ顔は可愛らしくて、これから戦うなんてとても思えない。
気が緩むというか、ホッとするような笑顔だったんだ。
つられて俺も小さく笑った。すぐに表情を引き締める。
「行ってくる」
「はい、ご武運を」
俺はミルフィアを広場に残し走り出していた。広場を出て東へと向かう。ミルフィアを心配する気持ちはまだあるがここは彼女を信じよう。
俺は一人で街を走っていくが、天羽の群れが上空から襲いかかってきた。
「くそ、まだこんなにいんのかよ!」
右手を王金調律で強化する。拳に黄金のオーラが集い、先頭の天羽を思いっきり殴りつけた。
吹き飛んだ天羽は背後の天羽数体を巻き込み、まるでボーリングのピンのように弾け飛んでいった。
しかし後続が続々と襲いかかってくる。なんて数だ、百体くらいいんのか?
めちゃくちゃな数だ、多勢に無勢にもほどがあるだろ。でも、これでもまだ全開じゃないんだ。
ほっとけば百なんて単位が可愛く思えるほどの大軍がやってくる。こんなのさっさと突破して、俺は俺のことをやらなくちゃ。
みんな戦ってるんだ、
「そこどけてめえら!」
俺は走った。目の前には視界を覆うほどの天羽が剣を振り上げ、俺は激突した。
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