天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

決戦の時は近い

 反動に地面が砕け散った。猛風に破片が飛んでいく。

 発射された無価値な炎ファイア・オブ・ノーライフが天を昇り、青の一線が地上と天を繋ぐ。

 無価値な炎ファイア・オブ・ノーライフは月の中心へと直撃した。黒目を焼き払い、白目へと広がっていく。

 あらゆるものを消滅させる炎が魔を払い、月すら溶かしていく。

 炎上する月。空を覆うほどのそれが青く燃える様は歪な青空だった。炎の空だ。

 ウリエルの炎は、月すら燃やし尽くしていく。

 絶対死の視線イービル・アイは消滅し、それを追い出すように厚い雲が蓋をする。空は再び暗雲に包まれ昼間となっていた。

「……ふぅ」

 ウリエルからようやく安堵の表情が漏れる。今まで体を蝕んできた視線は感じない。ようやく得られた解放感に表情が緩む。

 羽を地面から引き抜き姿勢を正す。辺りは激戦を物語るように壊滅状態だ、建物は例外なく崩れているか溶けている。

 焦げ跡も周囲を覆うほどだ。

 それを潜り抜け、ウリエルは立っている。勝負を勝ちきり生き残った。

 しかし、決戦はこれからだ。二千年前の決着を清算しただけ。未来を作るのはこれから。

 ウリエルは気持ちを切り替え、再び戦意の火を灯す。

 来るがいい、ゴルゴダの騎士。その信念と決意を燃やそうとも、灰の中から生まれる新たな時代を作り上げるために。

 ウリエルは正面を見据えた。決戦を間近に控え、伝説の天羽は一人立つ。

 理想のために。

 そして、愛する者のために。

 決戦の時は近い。

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