天下界の無信仰者(イレギュラー)
つかの間の名誉に酔っていればいい。
だが、彼の誇りをあざ笑うかのように、ここからサリエルの転落が始まった。
アザゼルによってつけられた傷は呪的な効力があり回復が遅れた。手負いとなった彼は休養を余儀なくされ戦場を離れることになった。
しかし今は戦争中、天羽軍の主力である四大天羽が欠けているなど士気に関わる。
そのためサリエルの代理として、天羽たちから人気を集めるウリエルが四大天羽に選ばれたのだ。
ウリエルはその名誉に恥じぬ戦いをすると誓い、いくつもの功績を挙げた彼女が四大天羽に選ばれることをみなは歓迎した。
それを快く思わないのはサリエルだけだった。ふざけるな、横取りだろうが。
お前が邪魔しなければ少なくともアザゼル一人は屠れたものを。その邪魔者が四大天羽だと?
何度怒りで目を覚ましたか分からない。傷の回復が遅れたことに憤怒があるのは間違いないだろう。
しかしそれも一時の苦汁だと我慢した。この傷が癒え戦場に出られるようになれば元通りだ。正式な四大天羽は自分だ、やつは所詮代理。
つかの間の名誉に酔っていればいい。
そう思っていた。
が、事態は彼にさらなる不運を告げた。
「ああ!? ウリエルが裏切っただとぉ!? ふざっけんな! 勝ち逃げしようってかあいつ!?」
「落ち着けサリエル」
病室で横になるサリエルにガブリエルが告げたのは、まさかのウリエルの裏切りだった。
「どういうことだオイ! ガブリエル、あいつが堕天羽になったていうのは本当なんだろうな?」
「言った通りだ、ウリエルが人間との接触を行なっている。天界の規則違反だ、よってウリエルを堕天羽と認定。それだけだ」
ガブリエルはあくまで事務的な口調だ。そこには感情の起伏は見られない。ご立派なことだがサリエルはそれどころではない。
「おいおいちょっと待てよ、それだけってことはねえだろう? あいつは四大天羽だ。ってことはだ、そこに空きが生まれるってことだよな?」
「いや、そうはならん」
「なにぃ!?」
「確認したが四大天羽の登録情報はウリエルのまま変わっていない。天主イヤス様の意思だ、素直に受け取れ」
「どういうことだ!? そもそもなぁ、四大天羽の一角は俺だったんだぞ! それを代理で勤めてただけの奴がおまけに反逆行為だぞ、それがなんで未だに四大天羽のままなんだ? ああ!? 今すぐ俺と交代しろや!」
サリエルの怒声が部屋中に響き渡る。すさまじい熱量が彼から放出されているがそれでもガブリエルの冷静さは変わらない。
「何度も言わせるな、すべてはイヤス様の意思だ。お前はこのまま七大天羽として継続、役目を果たせ。以上だ」
そう言ってガブリエルは出ていった。サリエルは病室に一人残され顔を俯かせる。
「…………ふざけんな……!」
怒りが燃えている。胸の内から湧き上がる炎の熱はウリエルのそれをも上回っていた。
「ふざけんじゃねえぞウリエル……!」
納得できない。できるはずがない。
「なぜ俺じゃないッ。四大天羽の栄光は、俺のはずじゃなかったのか!?」
選ばれた四人の天羽。四人だけの天羽。自分はそれに選ばれた。特別の愛をいただいたのだ。
その証を取られ、挙げ句やつはそれに泥を塗ったのだ。
サリエルは吠えた。怒りのままに大声を天井にぶつけて吠える。
「逃がさねえぞ! いつか、てめえを倒し俺の方が強いと証明してやる! 勝ち逃げなんて認めねえぞ、ウリエルぅううう!」
許さない。やつのすべて、やつの一切を。
そしてやつを賞賛し、歓迎した周りを見返してやるのだ。
四大天羽の栄光。その一つはやつじゃない。
この俺、サリエルのものであることを。
サリエルはその胸に一生消えることのない火を灯した。
それは驚くことに、二千年もの間続いていくのだった。
アザゼルによってつけられた傷は呪的な効力があり回復が遅れた。手負いとなった彼は休養を余儀なくされ戦場を離れることになった。
しかし今は戦争中、天羽軍の主力である四大天羽が欠けているなど士気に関わる。
そのためサリエルの代理として、天羽たちから人気を集めるウリエルが四大天羽に選ばれたのだ。
ウリエルはその名誉に恥じぬ戦いをすると誓い、いくつもの功績を挙げた彼女が四大天羽に選ばれることをみなは歓迎した。
それを快く思わないのはサリエルだけだった。ふざけるな、横取りだろうが。
お前が邪魔しなければ少なくともアザゼル一人は屠れたものを。その邪魔者が四大天羽だと?
何度怒りで目を覚ましたか分からない。傷の回復が遅れたことに憤怒があるのは間違いないだろう。
しかしそれも一時の苦汁だと我慢した。この傷が癒え戦場に出られるようになれば元通りだ。正式な四大天羽は自分だ、やつは所詮代理。
つかの間の名誉に酔っていればいい。
そう思っていた。
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「ああ!? ウリエルが裏切っただとぉ!? ふざっけんな! 勝ち逃げしようってかあいつ!?」
「落ち着けサリエル」
病室で横になるサリエルにガブリエルが告げたのは、まさかのウリエルの裏切りだった。
「どういうことだオイ! ガブリエル、あいつが堕天羽になったていうのは本当なんだろうな?」
「言った通りだ、ウリエルが人間との接触を行なっている。天界の規則違反だ、よってウリエルを堕天羽と認定。それだけだ」
ガブリエルはあくまで事務的な口調だ。そこには感情の起伏は見られない。ご立派なことだがサリエルはそれどころではない。
「おいおいちょっと待てよ、それだけってことはねえだろう? あいつは四大天羽だ。ってことはだ、そこに空きが生まれるってことだよな?」
「いや、そうはならん」
「なにぃ!?」
「確認したが四大天羽の登録情報はウリエルのまま変わっていない。天主イヤス様の意思だ、素直に受け取れ」
「どういうことだ!? そもそもなぁ、四大天羽の一角は俺だったんだぞ! それを代理で勤めてただけの奴がおまけに反逆行為だぞ、それがなんで未だに四大天羽のままなんだ? ああ!? 今すぐ俺と交代しろや!」
サリエルの怒声が部屋中に響き渡る。すさまじい熱量が彼から放出されているがそれでもガブリエルの冷静さは変わらない。
「何度も言わせるな、すべてはイヤス様の意思だ。お前はこのまま七大天羽として継続、役目を果たせ。以上だ」
そう言ってガブリエルは出ていった。サリエルは病室に一人残され顔を俯かせる。
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怒りが燃えている。胸の内から湧き上がる炎の熱はウリエルのそれをも上回っていた。
「ふざけんじゃねえぞウリエル……!」
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「なぜ俺じゃないッ。四大天羽の栄光は、俺のはずじゃなかったのか!?」
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その証を取られ、挙げ句やつはそれに泥を塗ったのだ。
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