天下界の無信仰者(イレギュラー)
あいつが、恵瑠だからさ
俺は離れ元の場所に戻った。それでミルフィアが声をかけてきた。
「主、でしたら私も」
これからすぐに襲撃を受けているという基地へと行く。それにミルフィアもついて来るという。
「私もつき合うわよ」
「ついて行くわ」
ミルフィアに続いて加豪と天和も声を上げてきた。席を立ち近寄ってきた。
三人だって恵瑠と会いたいに決まってる。俺と同じくらいその気持ちは強いだろう。危険を覚悟の上で三人はついて行くと言っている。
「いや、俺一人で行かせてくれ」
「主!?」
そんな三人に向かって、俺は申し訳なく断った。
「ごめん。わがままだって分かってる、お前たちの気持ちも分かる。でも! あいつとは二人で話がしたいんだ」
「神愛……」
加豪がつぶやく。
三人の気持ちは分かる。自分がどれだけ身勝手なことを言っているのかも分かっているさ。
でも、どうしても。あいつの気持ちを確かめたい。学校での時間も、二人で逃走していた時も、ずっと一緒だった。
あいつが追われて大変だった時、俺だけがあいつのそばにいた。
だから、俺じゃないと。あいつと一対一で、正面から立ち向かわないとダメなんだって思うんだ。
三人は黙っていたが、加豪が話しかけてきた。
「あんたがどれだけあの子を、ううん、友達を大事にしてるからは分かってる。これまでを見てればなおさらね」
「加豪」
加豪の話し方は寂しそうだったけど、その顔は笑っていた。
「いまさら、あんたを止めようなんて思わないわよ」
加豪は諦めたように、けれど笑ってそう言ってくれた。
「それが宮地君の望みなら」
天和も譲ってくれた。
「ありがとな、二人とも」
俺のわがままにつき合ってくれて。
これって、ほんとはすごいことなんじゃないか? 友人なんてずっといなかった俺だから分からないけどさ、こんなにもいい友達なんているか?
俺の勝手を聞き受けてくれる、応援してくれる。その笑顔と気持ちに俺は救われてる。
恵瑠も大事な友達だけど、こいつらだって同じ大切な友人だ。
「ミルフィア」
「私は……」
隣にいるミルフィアに振り向いた。彼女は顔を僅かに下に向け、その表情は暗そうだった。
一度俺は恵瑠に倒された。それは事実。またそうならないという保障はない。ミルフィアの心配は尤もだ。
「不安がない、心配しないと言えば、それは嘘になります。万が一のことがあれば」
だからミルフィアの顔は暗い。俺が一人で行くことに不安を感じている。その気持ちは嬉しい。
誰かから心配されるというのは贅沢な悩みだ。
だからこそ心苦しい。その人の優しさを無駄にするようで。俺だってミルフィアがたった一人で危険な場所に行くと言えば心配するさ。
ミルフィアの気持ちを痛いほど理解しながら、それでも俺は言った。
「心配ないさ」
努めて笑顔で。なんでもないことのように。不安に思わなくていいと、そう伝えた。
「なぜそう言えるのですか?」
ミルフィアが顔を上げる。片手を胸に当て心配そうに見上げる。
その顔に言ってやった。
「あいつが、恵瑠だからさ」
「主……」
四大天羽? 審判? ウリエル?
知るかそんなの。あいつは恵瑠だ、俺の知ってる恵瑠なんだよ。
俺はミルフィアに悪い気はしたが横を通り過ぎ前に出た。
「連れてってくれ。あいつは俺が止める。その間に怪我人たちを搬送してくれ」
すでに事は起こっているんだ、もたもたしていられない。
方針が決まり辺りがばたついている。一人の男が近づいてくると現場まですぐ移動できるよう車で待機しているように言われた。
「行ってくる」
俺は振り返った。そこにいるミルフィアにそう告げると、彼女も覚悟を決めたように顔を上げた。
「主。相手が恵瑠だというのは分かっていますが、なにが起こるが分かりません。お気をつけて」
「ああ、分かってるさ」
彼女の忠告に頷き、俺は先導する軍人の後を追いかけ走り出した。
待ってろよ恵瑠、今行くからな。
「主、でしたら私も」
これからすぐに襲撃を受けているという基地へと行く。それにミルフィアもついて来るという。
「私もつき合うわよ」
「ついて行くわ」
ミルフィアに続いて加豪と天和も声を上げてきた。席を立ち近寄ってきた。
三人だって恵瑠と会いたいに決まってる。俺と同じくらいその気持ちは強いだろう。危険を覚悟の上で三人はついて行くと言っている。
「いや、俺一人で行かせてくれ」
「主!?」
そんな三人に向かって、俺は申し訳なく断った。
「ごめん。わがままだって分かってる、お前たちの気持ちも分かる。でも! あいつとは二人で話がしたいんだ」
「神愛……」
加豪がつぶやく。
三人の気持ちは分かる。自分がどれだけ身勝手なことを言っているのかも分かっているさ。
でも、どうしても。あいつの気持ちを確かめたい。学校での時間も、二人で逃走していた時も、ずっと一緒だった。
あいつが追われて大変だった時、俺だけがあいつのそばにいた。
だから、俺じゃないと。あいつと一対一で、正面から立ち向かわないとダメなんだって思うんだ。
三人は黙っていたが、加豪が話しかけてきた。
「あんたがどれだけあの子を、ううん、友達を大事にしてるからは分かってる。これまでを見てればなおさらね」
「加豪」
加豪の話し方は寂しそうだったけど、その顔は笑っていた。
「いまさら、あんたを止めようなんて思わないわよ」
加豪は諦めたように、けれど笑ってそう言ってくれた。
「それが宮地君の望みなら」
天和も譲ってくれた。
「ありがとな、二人とも」
俺のわがままにつき合ってくれて。
これって、ほんとはすごいことなんじゃないか? 友人なんてずっといなかった俺だから分からないけどさ、こんなにもいい友達なんているか?
俺の勝手を聞き受けてくれる、応援してくれる。その笑顔と気持ちに俺は救われてる。
恵瑠も大事な友達だけど、こいつらだって同じ大切な友人だ。
「ミルフィア」
「私は……」
隣にいるミルフィアに振り向いた。彼女は顔を僅かに下に向け、その表情は暗そうだった。
一度俺は恵瑠に倒された。それは事実。またそうならないという保障はない。ミルフィアの心配は尤もだ。
「不安がない、心配しないと言えば、それは嘘になります。万が一のことがあれば」
だからミルフィアの顔は暗い。俺が一人で行くことに不安を感じている。その気持ちは嬉しい。
誰かから心配されるというのは贅沢な悩みだ。
だからこそ心苦しい。その人の優しさを無駄にするようで。俺だってミルフィアがたった一人で危険な場所に行くと言えば心配するさ。
ミルフィアの気持ちを痛いほど理解しながら、それでも俺は言った。
「心配ないさ」
努めて笑顔で。なんでもないことのように。不安に思わなくていいと、そう伝えた。
「なぜそう言えるのですか?」
ミルフィアが顔を上げる。片手を胸に当て心配そうに見上げる。
その顔に言ってやった。
「あいつが、恵瑠だからさ」
「主……」
四大天羽? 審判? ウリエル?
知るかそんなの。あいつは恵瑠だ、俺の知ってる恵瑠なんだよ。
俺はミルフィアに悪い気はしたが横を通り過ぎ前に出た。
「連れてってくれ。あいつは俺が止める。その間に怪我人たちを搬送してくれ」
すでに事は起こっているんだ、もたもたしていられない。
方針が決まり辺りがばたついている。一人の男が近づいてくると現場まですぐ移動できるよう車で待機しているように言われた。
「行ってくる」
俺は振り返った。そこにいるミルフィアにそう告げると、彼女も覚悟を決めたように顔を上げた。
「主。相手が恵瑠だというのは分かっていますが、なにが起こるが分かりません。お気をつけて」
「ああ、分かってるさ」
彼女の忠告に頷き、俺は先導する軍人の後を追いかけ走り出した。
待ってろよ恵瑠、今行くからな。
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