天下界の無信仰者(イレギュラー)
こっちです、主
ここに恵瑠はいない。あいつがどうなったのか、それを知っているのは俺だけだ。
二日前、あいつの姿を見たのは俺だ。
「あいつに、攻撃されたんだ」
火傷で痛む場所に手を当てる。二日経っても治らないのはあいつの炎が強力だからなのか、それとも俺の気持ちの問題だからなのか。
でも、こんな痛みより、胸の奥からくる痛みの方が、俺にとってはよっぽど辛かった。
俺が言うことは予想してたと思う。けれど実際に言われてミルフィアは顔をわずかに下に向けた。
「人と天羽。彼女は、もともとあちら側ではありますが」
そう言うミルフィアは寂しそうな顔を浮かべている。恵瑠との敵対はミルフィアにとっても辛い事実だ。
いや、俺たちだけじゃない。加豪や天和にだって悲しいことだ。
恵瑠。あいつは、俺たちの敵になってしまったんだろうか。疑いたくない。あいつは今も友達だって信じたい。
でも、あいつが俺を攻撃したのは事実で、そのことが重くおしかかる。
分からないことが多かった。これから先どうなるかも、なにをすればいいのかも。
ただ先行きに暗雲を感じるだけで、どうすることも出来ない。
俺は布団に視線を落として、ぽつりとつぶやいた。
「夢を、見た気がするんだ」
悪夢じゃねえぞ。その前だ。
「夢ですか?」
ミルフィアが聞き返す。俺は振り返らず、小さな声で続けた。
「あいつを、近くに感じる夢を……」
内容は覚えていない。気のせいなのかもしれない。それはとても曖昧で、意識がぼやけたものだった。
ただ、あいつが近くにいてくれた。とても近くに。
その熱を、その息を感じる。そんな夢とも呼べない、気配のようなものを感じた気がするんだ。
「そういえば」
俺は置いていた羽を再び手に取った。どうしてこんなところに。俺の体にくっついていたものがそのまま運ばれたのかと思っていたけど。
「もしかして」
けれど、別の可能性が頭を過ぎる。
もしかして、ここには恵瑠が運んできてくれたんじゃないのか? あいつが俺をここまで運んでくれた。
ここに恵瑠はいたんだ、それでこの羽が落ちた。ぼんやりとした意識で感じたあいつの気配は本当だったじゃないのか?
そう思うといろいろ納得できる。
俺はあいつの攻撃を受けたが、あの状況ではそうしなければ別のやつに殺されていた。
なぜあの状況で俺は生きている?
決まってる、恵瑠が助けてくれたんだ!
「恵瑠……!」
羽の根本を力強く握る。疑念や不安が一気に晴れて、代わりに感謝の念が胸を覆ってくる。
あいつは友達だ、今だって!
俺はベッドを降りた。同時に火傷の跡を黄金のオーラが覆い治療する。
「ミルフィア、戦略会議がされてる部屋は分かるか?」
「はい。ですが主」
「案内してくれ」
俺はミルフィアを見つめた。戸惑ったようなミルフィアだったが、恵瑠への思いを込めた俺の視線に納得したように頷いてくれた。
「こっちです、主」
俺たちは部屋を出て会議室を目指した。
やっぱり諦めきれない。あいつが敵になるなんて、もう友達じゃないなんて。
ずっと一緒だったんだ、楽しい時間があった。それを全部捨てれるはずがない。
俺も。
あいつも!
俺はミルフィアの後を歩き会議室の前にまで来た。扉の前にはは二人の警備の人が立っていたが俺のことを聞いていたのか通してくれた。
扉を開ける。広い部屋だった。右側は全面ガラスで街を眺められ、左側の壁には絵画が飾られている。
中央にはいくつもの長方形の机によって四角に組み立てられ、両側に人が座っていた。
見たとこ左側が軍の人間で右側が聖騎士隊の人間だろう。
そこには加豪と天和も座っていた。
「神愛!? あんた大丈夫なの?」
「おはよう」
「おう、大丈夫さ。ありがとうな。あと天和、お前夢の中で好き勝手しやがって。次したら絶対許さねえからな」
「え、どういうこと」
俺の入室に加豪が驚きながら無事を確認してくる。
二日も眠っていたからな、きっと心配してくれてたんだろう。天和は平常運転か。
まあ、こいつの場合驚かれてもこっちが心配するわ。
二日前、あいつの姿を見たのは俺だ。
「あいつに、攻撃されたんだ」
火傷で痛む場所に手を当てる。二日経っても治らないのはあいつの炎が強力だからなのか、それとも俺の気持ちの問題だからなのか。
でも、こんな痛みより、胸の奥からくる痛みの方が、俺にとってはよっぽど辛かった。
俺が言うことは予想してたと思う。けれど実際に言われてミルフィアは顔をわずかに下に向けた。
「人と天羽。彼女は、もともとあちら側ではありますが」
そう言うミルフィアは寂しそうな顔を浮かべている。恵瑠との敵対はミルフィアにとっても辛い事実だ。
いや、俺たちだけじゃない。加豪や天和にだって悲しいことだ。
恵瑠。あいつは、俺たちの敵になってしまったんだろうか。疑いたくない。あいつは今も友達だって信じたい。
でも、あいつが俺を攻撃したのは事実で、そのことが重くおしかかる。
分からないことが多かった。これから先どうなるかも、なにをすればいいのかも。
ただ先行きに暗雲を感じるだけで、どうすることも出来ない。
俺は布団に視線を落として、ぽつりとつぶやいた。
「夢を、見た気がするんだ」
悪夢じゃねえぞ。その前だ。
「夢ですか?」
ミルフィアが聞き返す。俺は振り返らず、小さな声で続けた。
「あいつを、近くに感じる夢を……」
内容は覚えていない。気のせいなのかもしれない。それはとても曖昧で、意識がぼやけたものだった。
ただ、あいつが近くにいてくれた。とても近くに。
その熱を、その息を感じる。そんな夢とも呼べない、気配のようなものを感じた気がするんだ。
「そういえば」
俺は置いていた羽を再び手に取った。どうしてこんなところに。俺の体にくっついていたものがそのまま運ばれたのかと思っていたけど。
「もしかして」
けれど、別の可能性が頭を過ぎる。
もしかして、ここには恵瑠が運んできてくれたんじゃないのか? あいつが俺をここまで運んでくれた。
ここに恵瑠はいたんだ、それでこの羽が落ちた。ぼんやりとした意識で感じたあいつの気配は本当だったじゃないのか?
そう思うといろいろ納得できる。
俺はあいつの攻撃を受けたが、あの状況ではそうしなければ別のやつに殺されていた。
なぜあの状況で俺は生きている?
決まってる、恵瑠が助けてくれたんだ!
「恵瑠……!」
羽の根本を力強く握る。疑念や不安が一気に晴れて、代わりに感謝の念が胸を覆ってくる。
あいつは友達だ、今だって!
俺はベッドを降りた。同時に火傷の跡を黄金のオーラが覆い治療する。
「ミルフィア、戦略会議がされてる部屋は分かるか?」
「はい。ですが主」
「案内してくれ」
俺はミルフィアを見つめた。戸惑ったようなミルフィアだったが、恵瑠への思いを込めた俺の視線に納得したように頷いてくれた。
「こっちです、主」
俺たちは部屋を出て会議室を目指した。
やっぱり諦めきれない。あいつが敵になるなんて、もう友達じゃないなんて。
ずっと一緒だったんだ、楽しい時間があった。それを全部捨てれるはずがない。
俺も。
あいつも!
俺はミルフィアの後を歩き会議室の前にまで来た。扉の前にはは二人の警備の人が立っていたが俺のことを聞いていたのか通してくれた。
扉を開ける。広い部屋だった。右側は全面ガラスで街を眺められ、左側の壁には絵画が飾られている。
中央にはいくつもの長方形の机によって四角に組み立てられ、両側に人が座っていた。
見たとこ左側が軍の人間で右側が聖騎士隊の人間だろう。
そこには加豪と天和も座っていた。
「神愛!? あんた大丈夫なの?」
「おはよう」
「おう、大丈夫さ。ありがとうな。あと天和、お前夢の中で好き勝手しやがって。次したら絶対許さねえからな」
「え、どういうこと」
俺の入室に加豪が驚きながら無事を確認してくる。
二日も眠っていたからな、きっと心配してくれてたんだろう。天和は平常運転か。
まあ、こいつの場合驚かれてもこっちが心配するわ。
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