天下界の無信仰者(イレギュラー)
すぐに終わる
(まずい状況だ、このままでは)
ウリエルが現れたということは最終段階にまで来てしまったということだ。神官長派の攻撃はウリエル復活の時間稼ぎ、その目的が果たされてしまった。
ミカエルは上機嫌に、しかし念のためにとウリエルに聞いた。
「さて、それでは確認しておこうか。ウリエル。分かっているだろうが――」
「黙れ」
「……? なんだって?」
ミカエルの表情が険しくなっていく。確認のための言葉をウリエルに遮られたのだ。
ウリエルは元堕天羽だ。天羽として復権したものの不安要素はある。もしかするとまた裏切る可能性がある。
「分かり切ったことを聞くな」
ウリエルの厳しい声が届く。
どちらか? なにを考えている? なにをするつもりだ? ミカエルも、そしてエノクもウリエルの言葉に集中する。
「私たちの存在意義。私たちが作られた所以。それはすべて、一つの大義によるものだ。私はもう、誰にも傷ついて欲しくない」
ウリエルは静かに目を瞑る。その言葉はかつてと変わらない。みなが笑顔でいられる世界にしたいと、自身が笑顔で語っていた、人であった時と同じ言葉。
「だから」
だが。
ウリエルは瞳は開けた。そこには静かな、しかし灼熱を思わせる意思が宿っていた。
「やらなければならない。かつての使命を果たすために」
ウリエルは言った。天羽再臨を目指す。無限の天羽軍の力を以って、二千年前の侵攻を再開すると。
そこには、すでに栗見恵瑠の面影はなかった。
「ふっ、ならいいんだ」
彼女の返答にミカエルは再び納得した笑みになった。
「ウリエル!」
反対にエノクは叫んだ。それは許されないことだ。
エノクの声にウリエルが振り向く。その睨みつけるような目つき。だがエノクは知っている、常に目を光らせ不審がないかと気を張っているこの目を。常に戦場にいるような油断のない目。
「また会ったな、エノク。私を殺したことは気にしなくていい」
「けっきょくそちら側か」
「その通りだな」
ウリエルは神官長派として天羽の味方についた。元から天羽、それは当然のことだった。
目の前にいるのは、かつて人類の天敵とまで呼ばれた、審判の天羽、ウリエルだ。
「神の愛に応えること。人類の救済。地上の平和。それらはすべて、私の正義だ。それを邪魔するのなら、今度はお前が死ぬぞ、エノク」
ウリエルからの忠告。それに対しエノクは無言。
言葉を交わすことにもはや意味はない。エノクは理解したのだ、戦うしかないと。その決意がウリエルにも伝わり武装した。
ウリエルの右手に剣が現れる。それは悪を裁く正義の象徴。だが見る者は思うだろう、これはなんだと?
両手剣にしても長すぎる。刀身の太さは並みのものと同じまま長さだけが二倍ほどもある。それは実用性よりもむしろ威圧感、神の愛を受け入れぬ愚者を畏怖させるシンボルだ。
だが、大きさだけならば彼も負けていない。
メタトロンが動き出す。片腕を構え照準をウリエルに固定する。拳の影に隠れたことでウリエルは見上げた。そのまま地上へと声をかける。
「ミカエル、お前では火力不足だ。こいつは私がやる」
「いいのかい?」
「すぐに終わる」
ウリエルは浮上した。メタトロンと同じ高さにまで飛び上がる。巨人と対峙するが、しかし不安はない。するどい表情で見据える。
ウリエルが現れたということは最終段階にまで来てしまったということだ。神官長派の攻撃はウリエル復活の時間稼ぎ、その目的が果たされてしまった。
ミカエルは上機嫌に、しかし念のためにとウリエルに聞いた。
「さて、それでは確認しておこうか。ウリエル。分かっているだろうが――」
「黙れ」
「……? なんだって?」
ミカエルの表情が険しくなっていく。確認のための言葉をウリエルに遮られたのだ。
ウリエルは元堕天羽だ。天羽として復権したものの不安要素はある。もしかするとまた裏切る可能性がある。
「分かり切ったことを聞くな」
ウリエルの厳しい声が届く。
どちらか? なにを考えている? なにをするつもりだ? ミカエルも、そしてエノクもウリエルの言葉に集中する。
「私たちの存在意義。私たちが作られた所以。それはすべて、一つの大義によるものだ。私はもう、誰にも傷ついて欲しくない」
ウリエルは静かに目を瞑る。その言葉はかつてと変わらない。みなが笑顔でいられる世界にしたいと、自身が笑顔で語っていた、人であった時と同じ言葉。
「だから」
だが。
ウリエルは瞳は開けた。そこには静かな、しかし灼熱を思わせる意思が宿っていた。
「やらなければならない。かつての使命を果たすために」
ウリエルは言った。天羽再臨を目指す。無限の天羽軍の力を以って、二千年前の侵攻を再開すると。
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「ふっ、ならいいんだ」
彼女の返答にミカエルは再び納得した笑みになった。
「ウリエル!」
反対にエノクは叫んだ。それは許されないことだ。
エノクの声にウリエルが振り向く。その睨みつけるような目つき。だがエノクは知っている、常に目を光らせ不審がないかと気を張っているこの目を。常に戦場にいるような油断のない目。
「また会ったな、エノク。私を殺したことは気にしなくていい」
「けっきょくそちら側か」
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ウリエルは神官長派として天羽の味方についた。元から天羽、それは当然のことだった。
目の前にいるのは、かつて人類の天敵とまで呼ばれた、審判の天羽、ウリエルだ。
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ウリエルからの忠告。それに対しエノクは無言。
言葉を交わすことにもはや意味はない。エノクは理解したのだ、戦うしかないと。その決意がウリエルにも伝わり武装した。
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