天下界の無信仰者(イレギュラー)
おうよ、俺がやった
なにかしら理由がある。それを考え、ヨハネが口を動かした。
「まさか、洗脳されている?」
「ちっ、時間稼ぎにもならねえか」
そこへ突如現れる声にヨハネとヤコブはすぐさま背後へと振り向いた。
そこにいたのはサリエル。宮殿から空間転移で飛んできたらしい。二人をラファエルのもとへと行かせるのを阻止するためにここへと飛ばしたらしいが、二人が倒したことで本人がやってきた。
 その顔はやれやれとつまらなそうにしている。
「ここの兵士の様子はおかしかった。士気があるようには見えませんでしたが任務は忠実。しかし連携はまるで出来ていない。これでは操り人形だ。彼らの目が赤いことと、操っているのはあなたですか?」
「おうよ、俺がやった」
彼は簡単に言うがこれは衝撃的な発言だ。
ここには五〇〇人近い兵士がいる。また彼らは最下位とはいえ全員信仰者、異能耐性を持つものたちだ。それを全員一人で洗脳するなど驚異的だ。
なのだが、サリエルは変わらず飄々とした態度で言う。
「これだけの数の人間動かそうと思ったらこうした方が手っ取り早いんでね」
「まさか、攻め込んでいる人間すべてを洗脳下に?」
「プリースト程度、俺の『眼』なら問題にならねえよ」
サリエルはサングラスの縁を僅かに持ち上げる。
どうやら彼固有の能力らしい。オラクルというだけでも手強いのにさらに不安材料が増える。
「あなたたちは宮殿の中へ。何者も入れないようにしてください。ここは私が」
「ヨハネ?」
サリエルという強敵を前にしてヨハネの指示が飛ぶ。ヤコブは思わず声をかけていた。
「兄さん、兄さんはさきにラファエルのところまで飛んでください。どの道一緒には行けないでしょう。それにこの男も十分脅威です」
「だがヨハネ」
「話し合っている時間はありません」
ヨハネは一人でサリエルと戦う気だった。能力はここを襲撃している数千人を洗脳する力。だがそれだけとは限らない、未知数だ。ヨハネ一人にまかせていいものかヤコブは躊躇った。
「行ってください。私、これでもあなたに勝ったんですよ?」
そんなヤコブに、ヨハネは笑った。少しだけ意地悪な笑顔を浮かべ、ヤコブに大丈夫だと伝えた。
それにヤコブも小さく笑い、ヨハネを見つめた。
「次はああはいかんからな、これが終わったら覚えていろよ」
「なんですって?」
「ふん!」
ヤコブは大きく鼻を鳴らした。まったくもって気に食わん弟だと思う。だが、それがどこか馴染む。ヤコブは言いようのない安心感を覚えながら空間転移を行った。
行き先は、宮殿をねらい打つラファエルの屋上。
ヤコブは目を開ける。そこは屋上よりもやや上空、ラファエルの射線上であり、今まさにピンク色の砲撃が放たれたところだった!
「はああ!」
ヤコブの代名詞ともいえるホタテ型のシールドを展開し宮殿を襲う光矢を消滅させる。その後空間転移で屋上上空にまで移動した。
 甲冑を着込んだ体がズシンと床に着地する。起き上がり正面を向けば、そこには弓を下ろしヤコブを見つめるラファエルがいた。
ヤコブはラファエルと対峙する。柵のない屋上、大きな建物ということもありここは広い。両者の距離は五メートルほど離れている。
ヤコブは盾を閉じると同時に剣を引き抜いた。自分の背後にはいくつもの砲撃を受け煙りを 上げている教皇宮殿がある。
 それを守るためにもここで負けるわけにはいかない。戦意を漲らせ、目の先にいるラファエルを睨む。
だが、襲撃者であるラファエルには戦意どころか活気というものすらなかった。
 意気消沈、もしくは葬列の参加者か、その顔は教皇宮殿を揺らすほどの大砲撃を繰り出す射手とはとても思えない姿勢だった。
「まさか、洗脳されている?」
「ちっ、時間稼ぎにもならねえか」
そこへ突如現れる声にヨハネとヤコブはすぐさま背後へと振り向いた。
そこにいたのはサリエル。宮殿から空間転移で飛んできたらしい。二人をラファエルのもとへと行かせるのを阻止するためにここへと飛ばしたらしいが、二人が倒したことで本人がやってきた。
 その顔はやれやれとつまらなそうにしている。
「ここの兵士の様子はおかしかった。士気があるようには見えませんでしたが任務は忠実。しかし連携はまるで出来ていない。これでは操り人形だ。彼らの目が赤いことと、操っているのはあなたですか?」
「おうよ、俺がやった」
彼は簡単に言うがこれは衝撃的な発言だ。
ここには五〇〇人近い兵士がいる。また彼らは最下位とはいえ全員信仰者、異能耐性を持つものたちだ。それを全員一人で洗脳するなど驚異的だ。
なのだが、サリエルは変わらず飄々とした態度で言う。
「これだけの数の人間動かそうと思ったらこうした方が手っ取り早いんでね」
「まさか、攻め込んでいる人間すべてを洗脳下に?」
「プリースト程度、俺の『眼』なら問題にならねえよ」
サリエルはサングラスの縁を僅かに持ち上げる。
どうやら彼固有の能力らしい。オラクルというだけでも手強いのにさらに不安材料が増える。
「あなたたちは宮殿の中へ。何者も入れないようにしてください。ここは私が」
「ヨハネ?」
サリエルという強敵を前にしてヨハネの指示が飛ぶ。ヤコブは思わず声をかけていた。
「兄さん、兄さんはさきにラファエルのところまで飛んでください。どの道一緒には行けないでしょう。それにこの男も十分脅威です」
「だがヨハネ」
「話し合っている時間はありません」
ヨハネは一人でサリエルと戦う気だった。能力はここを襲撃している数千人を洗脳する力。だがそれだけとは限らない、未知数だ。ヨハネ一人にまかせていいものかヤコブは躊躇った。
「行ってください。私、これでもあなたに勝ったんですよ?」
そんなヤコブに、ヨハネは笑った。少しだけ意地悪な笑顔を浮かべ、ヤコブに大丈夫だと伝えた。
それにヤコブも小さく笑い、ヨハネを見つめた。
「次はああはいかんからな、これが終わったら覚えていろよ」
「なんですって?」
「ふん!」
ヤコブは大きく鼻を鳴らした。まったくもって気に食わん弟だと思う。だが、それがどこか馴染む。ヤコブは言いようのない安心感を覚えながら空間転移を行った。
行き先は、宮殿をねらい打つラファエルの屋上。
ヤコブは目を開ける。そこは屋上よりもやや上空、ラファエルの射線上であり、今まさにピンク色の砲撃が放たれたところだった!
「はああ!」
ヤコブの代名詞ともいえるホタテ型のシールドを展開し宮殿を襲う光矢を消滅させる。その後空間転移で屋上上空にまで移動した。
 甲冑を着込んだ体がズシンと床に着地する。起き上がり正面を向けば、そこには弓を下ろしヤコブを見つめるラファエルがいた。
ヤコブはラファエルと対峙する。柵のない屋上、大きな建物ということもありここは広い。両者の距離は五メートルほど離れている。
ヤコブは盾を閉じると同時に剣を引き抜いた。自分の背後にはいくつもの砲撃を受け煙りを 上げている教皇宮殿がある。
 それを守るためにもここで負けるわけにはいかない。戦意を漲らせ、目の先にいるラファエルを睨む。
だが、襲撃者であるラファエルには戦意どころか活気というものすらなかった。
 意気消沈、もしくは葬列の参加者か、その顔は教皇宮殿を揺らすほどの大砲撃を繰り出す射手とはとても思えない姿勢だった。
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