天下界の無信仰者(イレギュラー)
心配しなくても宮司君とはすぐに会えるわ
神愛と別れてからミルフィアたちは同じ部屋に入れられていた。四つのベッドがあるきれいとは呼べない部屋に無理やり入れられ鉄格子の扉を閉められる。さらには対オラクル用の障壁まで閉められた。
早々に去っていく騎士の姿を三人は見送る。
「これからどうなるのかしらね」
つぶやきながら加豪はベッドへと腰を下ろした。口調は落ち着いた風ではあるが表情には少し翳りが見える。加豪に続いてミルフィアと天和も適当にベッドへと腰を下ろした。
友人が死んだのだ。それは加豪にも、いや、ここにいる三人とも胸を痛めている。さらには神官長派たちの計画だ。今後のことに不安を覚えるのも無理はない。
「主……」
だが、ミルフィアは別のことを考えているようだった。
「ミルフィア、大丈夫?」
加豪が心配する。ミルフィアの目線は足元に固定されてり思い詰めているようだった。
「主は恵瑠を救うと真剣でした。危険もなにも度外視で、自分を追い詰めながら頑張っていました」
神愛の頑張りを知っている。なぜそこまで恵瑠を救おうとしたのか、その理由も知っている。
最低な世界で生まれ育った神愛の、数少ない友人。それは神愛にとって神なんかよりも偉大な人たちだ。
だから、破滅の危険があろうとも神愛は頑張った。それほどまで神愛の気持ちは大きかったのだ。
「だけど、救えなかった」
ミルフィアは目を閉じた。自分が仕える彼のことに思いを馳せて、ミルフィアは心痛(しんつう)に眉を寄せた。
「主は泣いていた。悲しんでいた。恵瑠を抱き締めて、この世の終わりのように泣いていた」
「…………」
ミルフィアが語る当時のことを加豪は黙って聞き入る。
「今だって、悩み、苦しんでいる。なのに私はなにも出来ていない」
悔しそうにミルフィアは言う。さきほど一人ではないと伝えたがなんの解決にもなっていない。
 神愛の苦しみはミルフィアの苦しみだ。戸惑う神愛にミルフィアの胸は痛む。
「ミルフィアはどうしたいの?」
「え?」
そこで聞かれた質問にミルフィアは顔を上げた。
見れば、加豪は優しそうな顔でミルフィアを見つめていた。
「神愛が苦しんでること。悲しんでいること。悩んでいること。それを知ってる。ねえ、ミルフィアの望みはなに? それは、伝えちゃいけないことなの?」
「私は……」
ミルフィアは迷っていた。いや、望みはある。答えは分かっていたけれど、それを伝えることに迷っていたのだ。
主人と奴隷としての関係。言われたことならなんでもする覚悟はある。でも、自分からなにかを言っていいものか。
過去、それで失敗したことがある。
取り返しのつかないことになるのでは? ミルフィアは怖かったのだ。
だけど加豪は言う。
「迷ったなら行動してみなさいよ。それでつまづいたなら、その時また悩めばいいわ」
気負わずに、さらりとそう言ってくれたのだ。
迷うことは悪くないと、そう言われた気がした。行動すればいいと、背中を押してくれた。その言葉にミルフィアの胸は軽くなっていた。
「ありがとうございます、加豪」
「ううん、友達でしょう?」
加豪は軽く顔を横に振る。長く赤い髪がさらりと揺れた。
「心配しなくても宮司君とはすぐに会えるわ」
二人がやり取りをしていると天和が話しかけてきた。どういうことかと加豪が振り向く。
「どういう意味よ?」
天和は正面を向いている。物静かに座っている天和だが、その表情は真剣だった。
「教皇派と神官長派の激突は、思っているより早いわ」
早々に去っていく騎士の姿を三人は見送る。
「これからどうなるのかしらね」
つぶやきながら加豪はベッドへと腰を下ろした。口調は落ち着いた風ではあるが表情には少し翳りが見える。加豪に続いてミルフィアと天和も適当にベッドへと腰を下ろした。
友人が死んだのだ。それは加豪にも、いや、ここにいる三人とも胸を痛めている。さらには神官長派たちの計画だ。今後のことに不安を覚えるのも無理はない。
「主……」
だが、ミルフィアは別のことを考えているようだった。
「ミルフィア、大丈夫?」
加豪が心配する。ミルフィアの目線は足元に固定されてり思い詰めているようだった。
「主は恵瑠を救うと真剣でした。危険もなにも度外視で、自分を追い詰めながら頑張っていました」
神愛の頑張りを知っている。なぜそこまで恵瑠を救おうとしたのか、その理由も知っている。
最低な世界で生まれ育った神愛の、数少ない友人。それは神愛にとって神なんかよりも偉大な人たちだ。
だから、破滅の危険があろうとも神愛は頑張った。それほどまで神愛の気持ちは大きかったのだ。
「だけど、救えなかった」
ミルフィアは目を閉じた。自分が仕える彼のことに思いを馳せて、ミルフィアは心痛(しんつう)に眉を寄せた。
「主は泣いていた。悲しんでいた。恵瑠を抱き締めて、この世の終わりのように泣いていた」
「…………」
ミルフィアが語る当時のことを加豪は黙って聞き入る。
「今だって、悩み、苦しんでいる。なのに私はなにも出来ていない」
悔しそうにミルフィアは言う。さきほど一人ではないと伝えたがなんの解決にもなっていない。
 神愛の苦しみはミルフィアの苦しみだ。戸惑う神愛にミルフィアの胸は痛む。
「ミルフィアはどうしたいの?」
「え?」
そこで聞かれた質問にミルフィアは顔を上げた。
見れば、加豪は優しそうな顔でミルフィアを見つめていた。
「神愛が苦しんでること。悲しんでいること。悩んでいること。それを知ってる。ねえ、ミルフィアの望みはなに? それは、伝えちゃいけないことなの?」
「私は……」
ミルフィアは迷っていた。いや、望みはある。答えは分かっていたけれど、それを伝えることに迷っていたのだ。
主人と奴隷としての関係。言われたことならなんでもする覚悟はある。でも、自分からなにかを言っていいものか。
過去、それで失敗したことがある。
取り返しのつかないことになるのでは? ミルフィアは怖かったのだ。
だけど加豪は言う。
「迷ったなら行動してみなさいよ。それでつまづいたなら、その時また悩めばいいわ」
気負わずに、さらりとそう言ってくれたのだ。
迷うことは悪くないと、そう言われた気がした。行動すればいいと、背中を押してくれた。その言葉にミルフィアの胸は軽くなっていた。
「ありがとうございます、加豪」
「ううん、友達でしょう?」
加豪は軽く顔を横に振る。長く赤い髪がさらりと揺れた。
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「どういう意味よ?」
天和は正面を向いている。物静かに座っている天和だが、その表情は真剣だった。
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