天下界の無信仰者(イレギュラー)
位階(クラス)
信仰者についてはだいぶ知っていたつもりだがまだ知らないことがあったのか。ミルフィアは「はい」と言うと説明してくれた。
「信仰者には神化の度合いによって位階分けをすることができるんです。まずは一番最初の段階である信仰者。これはそのまま信仰者と呼ぶことが多いですね。主を除いて天下界の人々は輪廻界を通って生まれるので、すべての人はプリーストとして生まれてくるわけです。プリーストは神化の恩恵があり物理耐性や異能耐性、また物理耐性無効、異能耐性無効が備わります」
「それは恵瑠から聞いたよ、美術館でな」
信仰するだけでそれらの能力が備わるんだから、やっぱり神化ってすごいと思う。
「そうでしたか。では次ですね。信仰を続けていくことで神化の度合いも高まっていきますが、それによって神託物が出せるようになります。そうした信仰者は高位者と呼ばれるようになります。この位階になるとその人固有の能力である神託物が出せるだけでなく、さらに強力な耐性と耐性無効を身に付けます。そのため高位者になるとそれ未満の信仰者では傷つけることが出来なくなるんです」
「へぇ」
要は、同じ信仰者同士でもプリーストとスパーダじゃ無信仰者と信仰者くらい差があるってことか。いや、神託物もあるからもっとになるな。スパーダというだけでプリースト相手には無敵ってわけだ。
「加豪すげえじゃん」
俺は加豪に振り向いてそう言うと、加豪は紅茶を飲みながら反対の手を小さく持ち上げた。
「それでこの位階にはまだ続きがありまして。さらに信仰心が高くなれば次元すらも操ることが出来るんです」
「次元だって?」
おいおい、そんなこともできるのか。
「はい。空間である三次元、そこに時間を加えた四次元、さらに五次元である並行世界。最初は三次元だけですが、神化が進めばいずれ五次元すらも操れるようになります。主は聖騎士が突然現れたと言っていましたが、あれは空間を操り転移していたからです。そうした次元すらも操れるようになった信仰者のことを超越者と呼ぶのです」
「オラクルか……」
俺の目の前に幾度となく現れたペトロ。聖騎士と呼ばれる慈愛連立のトップクラスの信仰者のあいつはそのオラクルだっということか。なるほど、さすがというわけだ。
ちなみに気になったことを聞いてみた。
「並行世界って?」
聞きなれない言葉だ。いったいどういう次元なんだろう。
「並行世界とはある世界から分岐した別世界のことです。並行世界は私たちがいる世界と同じとは限らず、たとえばその宇宙では主は女性かもしれませんし、違う学校に通っているかもしれません。もしくはまったく違う世界かもしれない。そうした独自の発展をした別世界が無限に存在しているんです」
「無限ねぇ」
たしかに似たような世界が無限にあれば無限の可能性があるってことだし、女である俺がいても不思議じゃないってわけか。
「超越者、特に四次元以上に到達した信仰者なら自分の時間を止め不老になることもできますから、目指す価値はあると思います」
なるほど。四次元以上の超越者は時間を操れる。ようは自分の時間を止めたり戻せば若いままでいられるわけか。
「そういうことか」
それにしても、どうしてお前はそこで語気が強くなるんだ?
「それで次が最後になるのですが」
「まだあるのか!?」
これ以上なにがあるっていうんだ、もう十分だろ。
「はい。神理が人に及ぼした影響はとても大きいものです。生まれた時点で耐性持ちなど神理のなかった時代からすれば反則もいいとこです。ですが、神化が人類史に与えた影響はそれだけではありません」
その時、ミルフィアの顔が一瞬だけ暗くなったのを俺は見逃さなかった。
どうしてそんな顔をしたのか俺には分からなかったけれど、もしかしたら。
ミルフィアには前世がある。そして俺にも。ミルフィアの根拠のない言い分ではあるけれど。でももしそれが本当ならば。ミルフィアは神理のない時代も生きてきて、そこにあった驚きも、そして悲劇も目撃してきたのだろうか。
天羽の襲来も。
二柱戦争も。
それからの時代も。
多くの争いを。
それは、とても悲しいことなんじゃないだろうか?
「神理を信仰する者は神に近づく」
ミルフィアは真剣な声でそう言った。
「それは神化と呼ばれる。いるんです、実際に神となった者たちが。思っただけで世界を自由に操れる存在。それが位階の頂点、神徒。神化によって神となり、全能の力を得た人間たちです」
「そんなのがいるのか?」
神化というのは神に近づくということだが、そのレジェンドというのは神そのものになったというわけか。
「神徒となった信仰者は高位な役職なり地位についています。その国を代表する信仰者ですからね。全能とは世界改変、もしくは因果律の操作を差します。それにより世界を自由に作り替えたり操ることができるわけですね」
「いや、世界を操れるわけですねって、それかなりすごいことなんじゃねえの?」
ミルフィアは平然と話しているがこれってかなりすごいことだろ? だって世界だぞ? それを自由に操れるなんて、それこそ金持ちハーレムなんでもありの天国状態だろ。
「そんなことができるならやりたい放題だろ」
「いえ、実はそうでもないんです」
「? どういうことだ?」
世界改変とか難しい言葉は俺にはよくわからないが、でも全能っていうのになれば世界を自由にできるんだろ? ならやらない手はないと思うのだが。
「神徒は全能ですがあくまでも神化によって得た全能なんです。たとえば慈愛連立は人を助ける神理ですから、その神徒となれば人助けの神のようなものでしょう。逆説的にその人では他者を害することに全能は使わないということです」
「なるほど」
その神理を極めているからこそ全能の用途が限定されているわけか。慈愛連立の神徒なら人を助けることに力は使えるだろうが、それ以外には使えない、というか使おうという考えそのものがない。もし煩悩のまま使おうものなら神徒足り得ないということだ。
「信仰者には神化の度合いによって位階分けをすることができるんです。まずは一番最初の段階である信仰者。これはそのまま信仰者と呼ぶことが多いですね。主を除いて天下界の人々は輪廻界を通って生まれるので、すべての人はプリーストとして生まれてくるわけです。プリーストは神化の恩恵があり物理耐性や異能耐性、また物理耐性無効、異能耐性無効が備わります」
「それは恵瑠から聞いたよ、美術館でな」
信仰するだけでそれらの能力が備わるんだから、やっぱり神化ってすごいと思う。
「そうでしたか。では次ですね。信仰を続けていくことで神化の度合いも高まっていきますが、それによって神託物が出せるようになります。そうした信仰者は高位者と呼ばれるようになります。この位階になるとその人固有の能力である神託物が出せるだけでなく、さらに強力な耐性と耐性無効を身に付けます。そのため高位者になるとそれ未満の信仰者では傷つけることが出来なくなるんです」
「へぇ」
要は、同じ信仰者同士でもプリーストとスパーダじゃ無信仰者と信仰者くらい差があるってことか。いや、神託物もあるからもっとになるな。スパーダというだけでプリースト相手には無敵ってわけだ。
「加豪すげえじゃん」
俺は加豪に振り向いてそう言うと、加豪は紅茶を飲みながら反対の手を小さく持ち上げた。
「それでこの位階にはまだ続きがありまして。さらに信仰心が高くなれば次元すらも操ることが出来るんです」
「次元だって?」
おいおい、そんなこともできるのか。
「はい。空間である三次元、そこに時間を加えた四次元、さらに五次元である並行世界。最初は三次元だけですが、神化が進めばいずれ五次元すらも操れるようになります。主は聖騎士が突然現れたと言っていましたが、あれは空間を操り転移していたからです。そうした次元すらも操れるようになった信仰者のことを超越者と呼ぶのです」
「オラクルか……」
俺の目の前に幾度となく現れたペトロ。聖騎士と呼ばれる慈愛連立のトップクラスの信仰者のあいつはそのオラクルだっということか。なるほど、さすがというわけだ。
ちなみに気になったことを聞いてみた。
「並行世界って?」
聞きなれない言葉だ。いったいどういう次元なんだろう。
「並行世界とはある世界から分岐した別世界のことです。並行世界は私たちがいる世界と同じとは限らず、たとえばその宇宙では主は女性かもしれませんし、違う学校に通っているかもしれません。もしくはまったく違う世界かもしれない。そうした独自の発展をした別世界が無限に存在しているんです」
「無限ねぇ」
たしかに似たような世界が無限にあれば無限の可能性があるってことだし、女である俺がいても不思議じゃないってわけか。
「超越者、特に四次元以上に到達した信仰者なら自分の時間を止め不老になることもできますから、目指す価値はあると思います」
なるほど。四次元以上の超越者は時間を操れる。ようは自分の時間を止めたり戻せば若いままでいられるわけか。
「そういうことか」
それにしても、どうしてお前はそこで語気が強くなるんだ?
「それで次が最後になるのですが」
「まだあるのか!?」
これ以上なにがあるっていうんだ、もう十分だろ。
「はい。神理が人に及ぼした影響はとても大きいものです。生まれた時点で耐性持ちなど神理のなかった時代からすれば反則もいいとこです。ですが、神化が人類史に与えた影響はそれだけではありません」
その時、ミルフィアの顔が一瞬だけ暗くなったのを俺は見逃さなかった。
どうしてそんな顔をしたのか俺には分からなかったけれど、もしかしたら。
ミルフィアには前世がある。そして俺にも。ミルフィアの根拠のない言い分ではあるけれど。でももしそれが本当ならば。ミルフィアは神理のない時代も生きてきて、そこにあった驚きも、そして悲劇も目撃してきたのだろうか。
天羽の襲来も。
二柱戦争も。
それからの時代も。
多くの争いを。
それは、とても悲しいことなんじゃないだろうか?
「神理を信仰する者は神に近づく」
ミルフィアは真剣な声でそう言った。
「それは神化と呼ばれる。いるんです、実際に神となった者たちが。思っただけで世界を自由に操れる存在。それが位階の頂点、神徒。神化によって神となり、全能の力を得た人間たちです」
「そんなのがいるのか?」
神化というのは神に近づくということだが、そのレジェンドというのは神そのものになったというわけか。
「神徒となった信仰者は高位な役職なり地位についています。その国を代表する信仰者ですからね。全能とは世界改変、もしくは因果律の操作を差します。それにより世界を自由に作り替えたり操ることができるわけですね」
「いや、世界を操れるわけですねって、それかなりすごいことなんじゃねえの?」
ミルフィアは平然と話しているがこれってかなりすごいことだろ? だって世界だぞ? それを自由に操れるなんて、それこそ金持ちハーレムなんでもありの天国状態だろ。
「そんなことができるならやりたい放題だろ」
「いえ、実はそうでもないんです」
「? どういうことだ?」
世界改変とか難しい言葉は俺にはよくわからないが、でも全能っていうのになれば世界を自由にできるんだろ? ならやらない手はないと思うのだが。
「神徒は全能ですがあくまでも神化によって得た全能なんです。たとえば慈愛連立は人を助ける神理ですから、その神徒となれば人助けの神のようなものでしょう。逆説的にその人では他者を害することに全能は使わないということです」
「なるほど」
その神理を極めているからこそ全能の用途が限定されているわけか。慈愛連立の神徒なら人を助けることに力は使えるだろうが、それ以外には使えない、というか使おうという考えそのものがない。もし煩悩のまま使おうものなら神徒足り得ないということだ。
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