天下界の無信仰者(イレギュラー)
最大の一撃
そこで、俺はふと空を見上げてみた。そこには青空に浮かぶ雲がある。
その雲が流れていき、隠れていたものが現れた。
「あれは!?」
晴れた雲の先にあるもの。
それは全長十メートルはあろうかという巨大な魔法陣だった。狙いはメタトロンの頭上。上空二千メートルから地上を狙う神秘の砲口が発射の合図を待っていた。
ミルフィアの狙いはこれだったのか。今までの攻撃、そのすべてが実は陽動。
 本命の一撃を気づかれないようにするための時間稼ぎでしかなかったんだ。
メタトロンも上空に設置された魔法陣を見つけた。次に片膝を付くとエノクとペトロを片手で覆う。阻止しようにもあの高さではどうあっても間に合わない。
「主、跳びます」
そう言うとミルフィアは俺の手を掴んだ。
次の瞬間、気づけば俺は元の場所から数十キロは離れた建物の屋上に立っていた。
これは空間転移か? 発射前にいち早く避難する。
ここからでもメタトロンの巨体はよく見える。
相手に防ぐ術はない。ならばあとは放つのみ。
この戦いを終わらせるため、ミルフィアは決死の一撃を撃ち放つ。
「落ちろ」
ミルフィアの掛け声と共に、魔法陣は発光し全エネルギーを地上へと放射した。
神愛は攻撃の瞬間を見つめていた。
ミルフィアが自分の身を危険に晒しながらも完成させた渾身の魔法陣。それが、ついに発射する。
いくつもの雷を束ねたかのような光線は、成す術もなくメタトロンを直撃した。
光は一瞬にして空間を呑み込み破壊する。音すら掻き消え建物は一瞬で消し飛び超高熱が空間を満たす。酸素は瞬時に燃焼され生物はバクテリア一匹生きては残さない。
天空から地上へ放たれたもの。
それは破滅の光。
破壊の業火。
あらゆるものを力でねじ伏せる、圧倒的『弾圧』だった。
「すごい……」
数十キロ離れているのに今起きたことが信じられない。ミルフィアの一撃はここまで爆風が届いていた。
ミルフィアの攻撃が直撃した場所は火の海だ。舗装されたアスファルトはすべて蒸発し黒焦げの大地が広がっている。
 空間は熱で屈折し歪んで見える。辛うじて見えるのは破壊された建物の影と燃える大地だけだ。あとは影になっていてよく見えない。
まさに絶対的。ミルフィアの渾身の一撃が逆転勝利となった。
それはいいが、なんていうかこれ――
「ていうか、容赦なさ過ぎだろ!?」
これじゃ敵を倒すどころか街がめちゃくちゃだ。
「う……」
この惨状は当の本人も誤算だったようだ。
「う、じゃねえよ! お前のドジっ子レベルは都市を壊滅させるつもりか!?」
「主! 私はドジっ子ではありません!」
「お前はどの口が言うんだ!」
説得力ゼロだぞこいつ。
「いや、主その、これは善処した結果なんです」
「善処っていうか焦土と化してんじゃねえか! どーすんだよこれ!?」
都市は丸焦げ。
なにもない。まさに戦場跡地だ。
「私はただ主を守りたい一心で―― ?」
その時、なにかを感じ取ったのかミルフィアの顔が攻撃した場所に動いた。焦っていた表情を引き締める。
ミルフィアは真剣な態度に切り替わっていた。
「どうやら、届かなかったようですね」
「?」
ミルフィアの言葉に俺も攻撃した場所を見た。
瓦礫の影とぼやける空気によく見えない。
だが、よく見るとそこに動く影があった。壊れた建物の影かと思っていたが、それが立ち上り始めたのだ。
「ばかな……」
この時、俺は正真正銘、驚愕した。
陽炎で揺らめく空間に聳え立つ巨人の影。
すべてを破壊された爆心地の中心で、メタトロンは無傷で立っていた。
「おいおい、冗談だろ」
信じられない。建物が崩れあちこちで炎が燃えている場所で、メタトロンだけは何事もなかったかのように悠然と立っている。
絶望しかないような場所で、その出で立ちは神々しいほどの威容だった。
ミルフィアも俺の隣で驚いている。
「この攻撃が通じないとすると、神徒クラス……。まさか『六十年でそこまで』」
鋭い目つきで遠方にいるメタトロンを見つめていた。
だが、それは脅威に感じているだけではなく、他に思うところがあるような……。
「主、街の件は大丈夫です」
「え?」
ミルフィアが俺に振り向いた。
「それよりもここは一旦撤退しましょう」
「あ、ああ、そうだな。勝てる気しないぜこんな化け物」
ミルフィアの提案に賛成し俺とミルフィアは逃げ出した。居場所を聞くつもりだったが今の俺たちじゃどうあっても無理そうだ。
俺は逃げる間際最後に一度だけ振り返った。遠くにいる巨人を視界に捉える。
くそ。
俺は悔しい思いを胸に逃走した。
その雲が流れていき、隠れていたものが現れた。
「あれは!?」
晴れた雲の先にあるもの。
それは全長十メートルはあろうかという巨大な魔法陣だった。狙いはメタトロンの頭上。上空二千メートルから地上を狙う神秘の砲口が発射の合図を待っていた。
ミルフィアの狙いはこれだったのか。今までの攻撃、そのすべてが実は陽動。
 本命の一撃を気づかれないようにするための時間稼ぎでしかなかったんだ。
メタトロンも上空に設置された魔法陣を見つけた。次に片膝を付くとエノクとペトロを片手で覆う。阻止しようにもあの高さではどうあっても間に合わない。
「主、跳びます」
そう言うとミルフィアは俺の手を掴んだ。
次の瞬間、気づけば俺は元の場所から数十キロは離れた建物の屋上に立っていた。
これは空間転移か? 発射前にいち早く避難する。
ここからでもメタトロンの巨体はよく見える。
相手に防ぐ術はない。ならばあとは放つのみ。
この戦いを終わらせるため、ミルフィアは決死の一撃を撃ち放つ。
「落ちろ」
ミルフィアの掛け声と共に、魔法陣は発光し全エネルギーを地上へと放射した。
神愛は攻撃の瞬間を見つめていた。
ミルフィアが自分の身を危険に晒しながらも完成させた渾身の魔法陣。それが、ついに発射する。
いくつもの雷を束ねたかのような光線は、成す術もなくメタトロンを直撃した。
光は一瞬にして空間を呑み込み破壊する。音すら掻き消え建物は一瞬で消し飛び超高熱が空間を満たす。酸素は瞬時に燃焼され生物はバクテリア一匹生きては残さない。
天空から地上へ放たれたもの。
それは破滅の光。
破壊の業火。
あらゆるものを力でねじ伏せる、圧倒的『弾圧』だった。
「すごい……」
数十キロ離れているのに今起きたことが信じられない。ミルフィアの一撃はここまで爆風が届いていた。
ミルフィアの攻撃が直撃した場所は火の海だ。舗装されたアスファルトはすべて蒸発し黒焦げの大地が広がっている。
 空間は熱で屈折し歪んで見える。辛うじて見えるのは破壊された建物の影と燃える大地だけだ。あとは影になっていてよく見えない。
まさに絶対的。ミルフィアの渾身の一撃が逆転勝利となった。
それはいいが、なんていうかこれ――
「ていうか、容赦なさ過ぎだろ!?」
これじゃ敵を倒すどころか街がめちゃくちゃだ。
「う……」
この惨状は当の本人も誤算だったようだ。
「う、じゃねえよ! お前のドジっ子レベルは都市を壊滅させるつもりか!?」
「主! 私はドジっ子ではありません!」
「お前はどの口が言うんだ!」
説得力ゼロだぞこいつ。
「いや、主その、これは善処した結果なんです」
「善処っていうか焦土と化してんじゃねえか! どーすんだよこれ!?」
都市は丸焦げ。
なにもない。まさに戦場跡地だ。
「私はただ主を守りたい一心で―― ?」
その時、なにかを感じ取ったのかミルフィアの顔が攻撃した場所に動いた。焦っていた表情を引き締める。
ミルフィアは真剣な態度に切り替わっていた。
「どうやら、届かなかったようですね」
「?」
ミルフィアの言葉に俺も攻撃した場所を見た。
瓦礫の影とぼやける空気によく見えない。
だが、よく見るとそこに動く影があった。壊れた建物の影かと思っていたが、それが立ち上り始めたのだ。
「ばかな……」
この時、俺は正真正銘、驚愕した。
陽炎で揺らめく空間に聳え立つ巨人の影。
すべてを破壊された爆心地の中心で、メタトロンは無傷で立っていた。
「おいおい、冗談だろ」
信じられない。建物が崩れあちこちで炎が燃えている場所で、メタトロンだけは何事もなかったかのように悠然と立っている。
絶望しかないような場所で、その出で立ちは神々しいほどの威容だった。
ミルフィアも俺の隣で驚いている。
「この攻撃が通じないとすると、神徒クラス……。まさか『六十年でそこまで』」
鋭い目つきで遠方にいるメタトロンを見つめていた。
だが、それは脅威に感じているだけではなく、他に思うところがあるような……。
「主、街の件は大丈夫です」
「え?」
ミルフィアが俺に振り向いた。
「それよりもここは一旦撤退しましょう」
「あ、ああ、そうだな。勝てる気しないぜこんな化け物」
ミルフィアの提案に賛成し俺とミルフィアは逃げ出した。居場所を聞くつもりだったが今の俺たちじゃどうあっても無理そうだ。
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