天下界の無信仰者(イレギュラー)
聖騎士ペトロ
一方その頃。ゴルゴダ美術館のとある一室。
「そっかー、お嬢さんもいろいろ大変なんだね」
「はい、そう言ってもらえると助かります」
「君がその人を大切にしている気持ちは伝わってくるよ。わたしも慈愛連立の信者だからさ。
実はね、わたしも愛する妻がいるんだが、どうも浮気をしているみたいで」
「それはひどい!」
「いったいなにがいけなかったのか……ッ」
「あなたの苦しみ、私にはよく分かります」
「うう、ありがとうッ」
ミルフィア、現在警備員の人生相談中。
*
「くそ、どうなってんだ」
「助けはこない。素直にその娘を渡してもらおうか」
ペトロが一歩前に出る。まるで身を焼かれるような闘志だ、静かな佇まいだがその意思は戦意で昂っている。
下手すれば、一瞬で勝負がつきそうだ。
だが、俺だって負けられない。俺が弱気になったら、それが恵瑠にも伝わっちまう!
「てめえらはどうして恵瑠を狙う? こいつはただの学生だぞ」
「なるほど、ただの学生か」
俺はペトロを睨みつける。そのまま鋭い口調で聞くがペトロは小さく笑った。
「お前は知らないだけまだ幸福だ」
「なに?」
しかしそれもすぐになくなる。ペトロは戦場に立つ騎士の顔立ちで俺たちを見つめてきた。
「いいか少年。そこにいるのはただの娘ではない。慈愛連立、いいや、人類すべての敵なのだ」
「なに?」
人類すべての敵? なに言ってんだこいつ。
「かつて起きた、歴史という闇に葬られた最初の惨劇。それを繰り返さんためにも」
こいつはなにを言っている? しかしペトロが冗談で言っているようには聞こえない。
「その娘は生かしておけん。世界のためだ」
そう言ってペトロは剣を引き抜いた。剣先を向けてくる。
「少年、その娘を渡せ」
「渡したらどうするつもりだ? みんなでケーキバイキングでも行くのかよ」
「お前が知る必要はない」
「そうかい」
ペトロとにらみ合う。無言のまま数秒経つが、とてつもないプレッシャーだ。体が痺れてくる。
「これが最後の警告だ。渡さなければ、実力で排除する」
ペトロの目が俺を貫く。その眼光が本気だと告げている。
このままでは俺までタダでは済まない。怪我では済まない。
だけど。
「……黙れ」
俺は言った。
「てめえらが恵瑠を狙う理由は知らねよ。でもな、こいつは俺の友達だ。俺は友達を守る!」
ここで恵瑠を見捨てて渡せって? ふざけんな。ここで渡すくらいなら初めから恵瑠の護衛なんか付くか。
「神愛君……」
俺の発言に恵瑠が見上げてくる。その顔は怯えていたが、それよりも俺の方が心配そうだった。
「でも、それじゃ神愛君まで!」
恵瑠が心配そうに声をかけてくる。けれど無視した。今は恵瑠の心配に構っている余裕はない。
「そのせいで世界が危機に晒されるんだぞ」
「知るか! 俺は俺の守りたいものを守るんだよ!」
「そうか」
ペトロは短く呟くと剣を構えた。
くる!
その時、近くの建物が突然崩れ始めた!
「何事だ!?」
ペトロの動きが止まる。
建物は大きな音を立てながら崩れ、その影響で土煙が一気に舞い上がった。視界が悪く騎士たちもせき込んでいる。
「恵瑠、逃げるぞ!」
「え!?」
俺は恵瑠の手を握り反対側へと走り出した。
どういうわけか知らないがこれはチャンスだ、この隙に逃げ切るしかない。
「早く行くぞ!」
「でもどこに行けばいいのか」
「どこでもいいから行くんだよ!」
「でも」
「山ぁあああ!」
「川ぁあああ!」
それで俺たちはペトロたちの追手を振り切りなんとかこの場を切り抜けられた。
「そっかー、お嬢さんもいろいろ大変なんだね」
「はい、そう言ってもらえると助かります」
「君がその人を大切にしている気持ちは伝わってくるよ。わたしも慈愛連立の信者だからさ。
実はね、わたしも愛する妻がいるんだが、どうも浮気をしているみたいで」
「それはひどい!」
「いったいなにがいけなかったのか……ッ」
「あなたの苦しみ、私にはよく分かります」
「うう、ありがとうッ」
ミルフィア、現在警備員の人生相談中。
*
「くそ、どうなってんだ」
「助けはこない。素直にその娘を渡してもらおうか」
ペトロが一歩前に出る。まるで身を焼かれるような闘志だ、静かな佇まいだがその意思は戦意で昂っている。
下手すれば、一瞬で勝負がつきそうだ。
だが、俺だって負けられない。俺が弱気になったら、それが恵瑠にも伝わっちまう!
「てめえらはどうして恵瑠を狙う? こいつはただの学生だぞ」
「なるほど、ただの学生か」
俺はペトロを睨みつける。そのまま鋭い口調で聞くがペトロは小さく笑った。
「お前は知らないだけまだ幸福だ」
「なに?」
しかしそれもすぐになくなる。ペトロは戦場に立つ騎士の顔立ちで俺たちを見つめてきた。
「いいか少年。そこにいるのはただの娘ではない。慈愛連立、いいや、人類すべての敵なのだ」
「なに?」
人類すべての敵? なに言ってんだこいつ。
「かつて起きた、歴史という闇に葬られた最初の惨劇。それを繰り返さんためにも」
こいつはなにを言っている? しかしペトロが冗談で言っているようには聞こえない。
「その娘は生かしておけん。世界のためだ」
そう言ってペトロは剣を引き抜いた。剣先を向けてくる。
「少年、その娘を渡せ」
「渡したらどうするつもりだ? みんなでケーキバイキングでも行くのかよ」
「お前が知る必要はない」
「そうかい」
ペトロとにらみ合う。無言のまま数秒経つが、とてつもないプレッシャーだ。体が痺れてくる。
「これが最後の警告だ。渡さなければ、実力で排除する」
ペトロの目が俺を貫く。その眼光が本気だと告げている。
このままでは俺までタダでは済まない。怪我では済まない。
だけど。
「……黙れ」
俺は言った。
「てめえらが恵瑠を狙う理由は知らねよ。でもな、こいつは俺の友達だ。俺は友達を守る!」
ここで恵瑠を見捨てて渡せって? ふざけんな。ここで渡すくらいなら初めから恵瑠の護衛なんか付くか。
「神愛君……」
俺の発言に恵瑠が見上げてくる。その顔は怯えていたが、それよりも俺の方が心配そうだった。
「でも、それじゃ神愛君まで!」
恵瑠が心配そうに声をかけてくる。けれど無視した。今は恵瑠の心配に構っている余裕はない。
「そのせいで世界が危機に晒されるんだぞ」
「知るか! 俺は俺の守りたいものを守るんだよ!」
「そうか」
ペトロは短く呟くと剣を構えた。
くる!
その時、近くの建物が突然崩れ始めた!
「何事だ!?」
ペトロの動きが止まる。
建物は大きな音を立てながら崩れ、その影響で土煙が一気に舞い上がった。視界が悪く騎士たちもせき込んでいる。
「恵瑠、逃げるぞ!」
「え!?」
俺は恵瑠の手を握り反対側へと走り出した。
どういうわけか知らないがこれはチャンスだ、この隙に逃げ切るしかない。
「早く行くぞ!」
「でもどこに行けばいいのか」
「どこでもいいから行くんだよ!」
「でも」
「山ぁあああ!」
「川ぁあああ!」
それで俺たちはペトロたちの追手を振り切りなんとかこの場を切り抜けられた。
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