死の支配者にレクイエムを

looc

第三百十八話 冥府乃神

冥府乃神

「お、おい!大丈夫か?!」
動けるようになったらしい糸魚川さんが、僕の元に来て、僕を抱きかかえました。
「・・・だ、大丈・・・ぶ・・・あぐっ。」
「お、おい?!」
「・・・ああぐっ・・・うぐぅ・・・」
声をかけてくれているようですが今まで感じてきた痛みとは比べ物にならないほどの痛みにまともな思考を持つことができません。そしてそのまま僕の体は速やかに思考を放棄しました。




『やあ、そろそろおきなよ。』
誰?
『僕が解らないのかい?僕は奏だよ。』
・・・君が奏?
『ああ、まあ、正確にいえば君が失った記憶をまとめあげて、無理矢理切って貼って作ったものだから、調であるとも言えるしそれから、奏や調ではないとも言えるけどね。・・・うーん、まあ、そうだな。過去の奏の残響みたいなものだと思ってくれてもいいよ。』
・・・。
『あれどうしたの?』
・・・多分、君は僕の中から生まれた存在じゃないよね。
『ほう、なんでそう思った?』
僕のことを君って呼んだり、過去の僕ではなく過去の奏って言ったところからかな。あとは、直感。
『ふーん・・・まあ、正解。それじゃあ改めて挨拶といこうか。僕は冥府と裁きの神ソール・・・の、ほんの一部。』
・・・ほんの一部?
『うん。具体的に言うなら髪の毛一本程度の力しか持ってないかな。・・・まあ、つまりは戦う力なんて全くないってことだね。』
・・・なんで僕の中に?
『単純に、君の魔法に興味を持ってね。』
・・・なるほど。それで、どうして僕に話しかけてきたの?
『そうだね。君が何を犠牲にしたか。・・・聞きたくないかい?』
体を動かすために?
『そうだ。』
・・・一体何を犠牲にしたの?
『君の魂の一部さ。』
魂?
『そうさ。』
と言うことは僕は死ぬの?
『いやいや、そんなことはない。君が失ったのは魂の一割程度だからね。・・・死ぬことはない。・・・ただし、三割以上失えば間違いなく魂も消失し死ぬ。だから、これ以上無理はするな。』
ちなみに失った魂が戻ることは・・・。
『ない!・・・と言うのが普通なんだがね。まあ、僕は君を気に入った。だから、僕が君の魂の一部を補った。』
つまり、問題はないってこと?
『いいや。このまままた、魂を損耗したらその分を補うつもりなんだが・・・あまりに僕の割合が多くなりすぎると、君の自我は消え失せるぞ?』
「まあ、気をつけな」と、彼は少し笑いながらそう言いました。

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