第二百八十五話撤退不可

撤退不可

「・・・生きておればいいがの・・・。」
そればかりは祈るしかありません。そうしてアネモイは気流をつくりだし、土煙を払いました。・・・すると、そこには全身に切り傷を負っていたがそれでも戦意を失わずどころか、むしろギラギラした目でアネモイを睨みつけるハセクの姿がありました。
「・・・なんじゃと！？」
「痛ェじゃねェかよォ、おい！！」
「あれをくらってなぜその程度のダメージなのじゃ！？」
「気になるか？気になるかァ？教えてあーげない。ギャハハハハハ、とりあえずテメェはぶっ殺ォォす！！」
「本当にイラつくのう。」
そう言いつつも、アネモイはハセクから感じる威圧感が増したことに気がついており、内心では焦っていました。下手したら死ぬかもってくらいまで魔力を注ぎ込んだ魔法のおかげで、こうやって存在しているだけでもギリギリな状態でおり、率直に言って大ピンチです。
「・・・アネモイ・・・様。」
「あの体の持ち主と一緒にいたおなごたちか。起きたのじゃな。」
「・・・はい。私たちにも何かできることは。」
「・・・魔力はどれくらいあるかの？」
「ほとんど空っぽです。」
「私もそうですね。・・・何より今日は魔法を使えません。」
「・・・これはまずいの。撤退するしか・・・。」
「おおっとォ！それは許さねェよ！」
それは一瞬にして距離を詰めたハセクのなんでもないような一撃でした。ですが魔力枯渇気味のアネモイに対してはその命を刈り取るような死神の鎌にも等しいものでした。アネモイは全力でその攻撃を避けて、ハセクに集中しました。
「・・・全くめんどくさくなってきたなァ！！！もういいか。『我が憎悪よ燃え上がれ、焦熱地獄。』！！！」
ハセクがそう言うと、ミーナ、星奈、アウラに向かって炎の壁が押し寄せました。