死の支配者にレクイエムを

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第五十四話 自縄自縛

自縄自縛

その鬼は、獅子を睨み付けると、そちらへ走った。獅子は、それを叩き潰そうとした。しかし鬼は、獅子の腕をなんでもないかのように右腕一本で抑え、そして、そのまま体全体で腕を掴むと、獅子を投げ飛ばしました。それに怯んだ、獅子に対し、鬼は、顔面を殴りました。
「ギャウッ。」
獅子は、今までとは、比べ物にならないほど、情けない鳴き声をあげ、必死に、顔の上の鬼を引き剥がそうとしました。それに対し、鬼は、両手に炎を纏い、そのまま、殴りつけていました。殴られる痛みと火傷に、暴れる獅子ですが、すでに大勢は決していました。やがて、動きは、緩慢になってゆき、その動きもやがて、止まりました。
鬼は、理性なき目で、辺りを見渡します。そして、一人の人間を見つけました。そして、衝動に任せるようにその女に向かって動こうとしたときのことでした。突如として、地面から、黒い縄が、現れて、その鬼に突き刺さりました。
「・・・体を、返せ・・・鬼。消、え去れ。」
その鬼の口から、そう紡がれました。そして、さらに縄が現れ、鬼を穿ち、雁字搦めに拘束しました。鬼の周りに、黒い霧が嵐のように吹き荒れて、鬼の姿は、見えなくなりました。
それが晴れると、そこには、長かった角が短くなった男の子が横たわっていました。

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