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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

8.悪魔友達 II


お祭り会場から離れて悪魔がいないところに着くと、彼はゆっくりと私を降ろしてくれた。

「いきなりごめん。大丈夫だった?」

「いーえ。こちらこそ、助けてくれてありがとうございます」

「ああ、理解してくれたんだ。それにしても、怖がらないんだね」

「………怖がる理由、あります?」

首を傾げてそう聞くと、彼は少し唖然とした後クスリと笑った。

「そっか。ストラスが気にいるわけだ。君なら十分納得だよ」

「………やっぱりストラスたちとお知り合いなんですか?」

「ああ、うん。そうだよ」


「リディア!!」

名前を呼ばれて顔を上げると、急いで追いかけて来たのか、ストラスとアベルがいた。

「無事か?怪我とかは……」

「元気。ピンピンしてる」

「……そうか。良かった」

そう言うと、ストラスは安心したように息をついた。

「悪い、ヴィンス。助かった」

「いや。2人に誘拐犯だって誤解されたらどうしようかと思ったよ」

そう言って笑うこの人は、悪魔らしからぬ優しい顔をしている。

「にしても、あんなところにヴィンスがいるとは思わなかったよ」

「ちょっと暇つぶしに散歩してたんだよ。まさかあんな形で噂の子に会えるとはね」

まぁ確かに、あそこにはストラスたちみたいなのはいなかったもんねー。

「………って、ん?……噂?」

それってもしかしなくても私のことだよね?アベルも同じようなこと言ってたし。

「そうそう。リディアちゃん、俺らの間でちょっと有名だったんだよ?」

「え?何で?」

アベルが説明しようと口を開くと、ストラスがアベルの頭を思いっきり叩いた。

「いったぁ!いきなり何すんだよー!」

うん、ものすごい音したもん。かなり痛そうだった。

「余計なこと言わなくていい」

「えぇ。気になるじゃん」

私だけ仲間外れかよー。イジメはしちゃいけませんって教わらなかったの?

「ただ君は『特別』なのに、悪魔の天敵である聖女なんてやってるもんだから。それで少し気になってただけだよ」

彼のフォローのような言葉に、信じはしないもののとりあえず今は納得した。


「………とりあえず!さっさと帰るぞ。さっきの奴が追ってこないとも限らない」

「あ、待って」

私の手を引くストラスから逃れると、私はヴィンスと呼ばれた彼の前に立った。

「………えっと。どうしたの?」

「自己紹介まだだったでしょ?私はリディア。訳あってストラスのとこにお世話になってるの。よろしく」

そう言って笑うと、彼は少し驚き顔を赤くさせてから困ったように笑った。

「俺はヴィンセント。ヴィンスでいいよ。これからよろしく、リディア」

優しげなその雰囲気は、やっぱり悪魔らしくはなかった。



あれからすぐにヴィンスと別れた私たちは、やっとの事で家へと着いた。

「うぁぁああ〜。疲れたぁ」

あまりにいろいろなことがありすぎて、私は思わずソファーに倒れこんだ。

「リディア。先に着替えて来い。服がシワになるだろ」

「………むぅ。はーい」

渋々部屋に戻った私は、のんびりと部屋着に着替え始めた。
なんだかんだ、結局お祭りはほとんど遊べなかったな。まぁ、あの祭りで何をどう楽しめって話だけどね。けど、3人で出かけられただけ大きな進歩か。

思わず笑顔を零すと、私はストラスたちのいるリビングに戻った。

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