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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

7.悪魔の祭り


お祭りが行われる場所に近づくに連れて、悪魔が少しずつ見えてきた。

隣を歩くストラスは私のフードに手をかけると、それを頭にかぶせてきた。

「リディア。フードを取るなよ」

「え?何で?」

それじゃあ、しっかりと見れないじゃん。というか、不審者じゃん。

「ほら。上までしっかり隠した方が安心でしょ」

「ああ、そっか」

匂い、隠さなきゃいけないんだもんね。これで何とかなってるのか、私にはよく分からないけど。

「あと、絶対に俺たちから離れるなよ」

「………うん」


「あ、見えてきたよ」

アベルの言葉に顔を上げると、やっとお祭り会場が見えた。見た目はやっぱり悪魔らしくて、妙に廃れている。周りにいるのも悪魔だけ。こう見ると改めて魔界だと実感させられる。

「2人みたいに人の形した人はいないんだね」

ミイラだったり、骸骨だったり、1つ目の化け物だったり。見たところストラスみたいに角と翼以外は人間、みたいな人はいない。

「まぁ、低俗な奴らの集まりだからね」

「ふーん」

低俗だとそうなるんだ。悪魔ってよく分からんな。


「おい、なんだかいい匂いがしないか」

「屋台とは違う甘い匂いがするな」

「一体どこからだ?」

悪魔たちのその話し声に私は思わずギクリと反応した。うっわ、何だこの緊張感。

「リディア。まだバレてないんだから、怪しまれるようなことするなよ」

「分かってるって」

道に沿って並ぶ屋台を見ていくけど、さすがは魔界。人間が食べられるものなど存在しなかった。

変なトカゲみたいな生き物を焼いたものとか、目玉を串刺しにしたものとか。とりあえず、ヤバい。

「………ねぇ、ストラスたちもああいうの食べるの?」

「食べるよー?人間の食べ物も食べられるけどね」

「うわー、私の前では食べないでね」

「はは、分かってるよ。そんなひどいことしないって」

ホント、目玉とか食べられたら私は気絶する自信がある。


「………なんというか、人間じゃ楽しめなさそうだね」

食べ物はもちろんのこと、射的の景品や売ってるおもちゃも理解が追いつかない。

「やっぱり、今から帰るか?低俗とはいえ、この数だし。バレたら面倒だ」

「ううん。私は2人と出かけれたことが嬉しいし」

「うっ。リディアちゃん、それはダメだって」

そう言って両手で顔を覆ったアベル。一体何がダメなんだよ。

そう思ってると、いきなり2人の足が止まった。不思議に思って、2人の視線の先を追って前を見た。そこにはストラスたちと同じ角と翼を持った人間の姿の悪魔がいた。

「へぇ、面白いもん持ってるじゃん。よかったらそれ、俺にくれない?」

明らかに私の方を見てそう言うこの男。ストラスたちはコイツから隠すように私の前に出た。

「………人の物に手出すなんて、随分と悪趣味だな」

「いいじゃん、悪魔なんだから。そういうのは得意分野でしょ」

「冗談じゃない。同じ悪魔にそんなことされてたまるかよ」

「………ふーん。そっか。じゃあ、多少は力づくで手に入れようかな」

この男はそう言うと、勢いよく翼を広げて飛んだ。その風の勢いで、私のフードがフワリと落ちたのが分かった。

しまったと思うよりも先に、後ろに嫌な気配がして勢いよく振り返った。

「へぇ、可愛いね。この匂いもやっぱりこの子からみたいだし」

いつの間にか後ろに回り込んでいたコイツは、グイッと顔を近づけてきた。

咄嗟のことに動けずにいると、後ろから腕を引っ張られてストラスに抱き寄せられた。顔を上げればストラスはこの人を睨んでいる。

「おー、怖い怖い。そんなに睨むなよ。それに、今はもう敵は俺だけじゃねぇよ?」

その言葉にハッとして周りを見てみると、周囲の悪魔たちがみんな私の方を見ていた。


「なぜ人間がここにいる?」

「しかしあの人間、なかなかに美味そうだ」

「なぜか妙に惹きつけられる。一口だけでも食べたいな」

完全に目をつけられてる。逃げようにもこれじゃあどのみち捕まる。

「…………ストラス」

「……大丈夫だ。何も心配するな」

私の言葉にも、ストラスは私を不安にさせないように真っ直ぐにそう返してくれた。


「………ストラス!アベル!」

後ろから唐突に、2人を呼ぶ声が聞こえた。
それと同時に、私の体はフワリと浮いた。離れていくストラスとアベルを見て、私は知らない誰かにお姫様抱っこされてると理解した。あまりに突然な事に少し戸惑ったけど、すぐに私を抱えている人物を見た。おそらくさっきの声と同一人物。角と黒い翼を持った、白銀の髪。

2人の知り合いなのか。けど多分、この人は私を助けてくれただけなんだと思う。2人の知り合いなら尚更。


「……大丈夫」

私の視線に、彼はポツリとそう返した。

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