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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

5.リディア


リビングに入った私たちは向かい合って座った。ちなみに自称ストラスの親友さんはしれっとストラスの隣に座っている。

「………まず、リディアの体質からだ」

少しの沈黙の後、ストラスは重い口を開いた。

確か自称ストラスの親友さん……面倒だから親友さんでいいや。確か親友さんは私の匂いがどうとか言ってたよね。その事だろうか。


「お前は自分で気付いてないだろうが、お前が醸し出している匂い。それは俺たち悪魔をひどく魅了する」

「………魅了?」

「ほら、言ったでしょ。君を食べたがる人も娶りたい人もいるって」

「お前、そんなこと言ったのかよ」

「だって知っといたほうがいいでしょー?」

「……とりあえず、お前は悪魔からしたら恰好の獲物なんだよ」

「うーん。いきなりそんなこと言われても実感ないんだけどなー」

そもそも悪魔を信じてなかった人種だしなー。悪魔に好かれやすいとか考えられない。

「もし今日みたいなことが起きて、俺が側にいない場合、自力で逃げなきゃ困るんだぞ」

「うん、そうだねー」

「楽観的すぎるだろ。最悪食い殺されるってのに」

「大丈夫だよ。もしそんな事になっても、ストラスが助けてくれるでしょ?だってほら、私はストラスのものなんでしょ?」

いつぞやのストラスの言葉を出すと、ストラスは少し驚いた後微笑した。

「わぁお。ストラスが笑ったよ」

ストラスが笑うことがそんなに珍しいのか?確かに笑わない方だとは思うけど、私の知る限り微笑程度なら数回は見てる。


「とにかく、リディアは無闇に外に出るな。どこか行くときは必ず俺と行くこと」

「はーい」

本当に分かってるのか、的な視線を向けられたけど、まぁ気にしない。


「あ、ストラスー。なんか飲み物入れて来てくれよー。喉乾いた」

話を買えるように親友さんがそう言うと、ストラスはめちゃくちゃ嫌そうな顔をした。

「なんで俺がお前のために動かなきゃならないんだよ」

「あ、私も喉乾いたー」

「…………入れてくればいいんだろ」

そう言って渋々席を立ったストラス。なんか申し訳ない。

「ね、リディアちゃん。アイツっていつもあんな風なの?」

「………あんなって?」

「ほら、飲み物入れて来たり、心配したり」

「え。まぁ、いつも通りですけど」

世話を焼いてくれるのも、地味に過保護なのも。特にいつもと変わったところはない。

「ふーん、そっかぁ。……あ、俺はアベルな。よろしく、リディアちゃん」

「………はぁ」

「ああ、やっぱ信用されてない?ゴメンって、あれはちょっとした冗談なんだよ。……あ、じゃあお詫びにいいこと教えてあげる」

「いいこと?」

「うん。リディアちゃんが来てるその服。実はリディアちゃんのためにストラスが事前に用意したものだったり?」

「え?」

「あとはこの家も。元は、人間にとっては趣味の悪いような家だったのをわざわざ模様替えしてたね。場所はもともとこんな辺境だったから、ちょうど良かったんでしょ。他の悪魔の目に触れないように。人間の飲食についても勉強してたみたいだし」

そっか。この家から出してもらえなかったのも、全部私を守るためか。

そう考えたら、私は思わずクスリと笑っていた。

「なんだ。ストラス、私が来る前から過保護だったのか」

「………っ!」

アベルを見ると、なぜか少し顔を赤らめている。何なんだよ、いきなり。

「どうかしたの?アベル」

「………あー、もう。君、そんな顔もできるんだね」

「どんな顔ですか。何、そんな変な顔してた?」

「………いいや。可愛い女の子の顔だった」

「何だそれ」

私はいつでも可愛いでしょうが。むしろ可愛いの塊でしょうが。………いや、それは盛ったな。

「はぁ。ストラスに謝らなきゃなー。けどよりによって、彼のことを考えて笑う君が、とはね」

「だから何なんですか。いい加減怒っちゃいますよ?」

さっきから独り言ばっかで全然私ついていけてないし。ストラスの話もいつの間にか終わってるしね。いつの間にこんなよく分からない話になってるの。

「………って、あれ?あの口ぶりからすると、ストラスって私が来るより前から私のこと知ってたの?」

「ああ、そっか。その話も聞いてないのか。リディアちゃんの想像通り、知ってたよ。最初からここに連れて来るつもりだったみたいだし。まぁ、詳しくは本人から聞いてみてよ」

「……はぁ」

なんか、すっかり騙されてたな。てっきりあの時がお互い初対面だと思ってたのに。


「悪い、ごちゃごちゃやってたら遅れた」

後ろを振り返ると、ストラスが3人分の飲み物を持って来ていた。

「ふふ、ありがとー」

「……?ああ。……って、アベル!お前リディアに何吹き込んだ?」

「やだなー。何も言ってないって。ね、リディアちゃん」

「うん。私は何も聞いてないよ」

「………怪しすぎんだろ」

未だに不満そうな顔をしているストラスを見て、私は思わず笑みを零した。

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