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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

4.悪魔友達


ストラスの家に住み始めて、早くも数週間が過ぎようとしていた。

案外すぐに慣れたこの生活は、今ではこれが普通になりつつある。とは言っても、私は特にやることもなく、ただゴロゴロしているだけ。掃除洗濯、料理は全てストラスがこなしてくれてる。


「おい、リディア。ちょっと出かけてくる。大人しく待ってろよ」

「私は犬かなんかですか?」

留守番くらいどうって事ない。むしろ元一人暮らしの私にかかればお手の物だ。

「じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃーい」

ストラスをお見送りすると、私はリビングに戻ってソファに横になった。

ストラスは割とすぐに外出する。買い物だとか人に会うだとか理由はそれぞれ。どれもおおよそは2、3時間程度で戻ってくる。けど私は一度も家から出たことがない。というか、出してくれない。

やることのない私にできるのは、家でゴロゴロするくらいだ。………まぁ、やることがあったとしてもやるとは思えないけど。


しばらくボーッとして過ごしていると、玄関のドアがコンコンと叩かれた。あまりに突然のことに、思わず呆然としてしまう。

ストラスなら普通に家に入ってくるはずだからそれはない。とするとお客さん。けどこんな辺境の家に足を運ぶ物好きなんているか?現に、私がここに来てから訪問者なんて1人も来なかった。


そうこう考えていると、もう一度コンコンとノックをする音がした。
ええい、考えてても仕方がない。2回もノックするって事は何か急用なのかもしれない。

私が恐る恐る玄関のドアを開けると、そこには1人の青年がいる。

見た目年齢はストラスと同じくらい。赤い髪に漆黒の翼。ストラス以外の悪魔を見て、やっぱりここが魔界だと再認識させられる。

「………えーっと。ストラスなら今は出てますけど……」

「なるほどね。君が例の聖女ちゃんか。うん、可愛いし、噂通り本当にいい匂いだ」

「……噂?」

噂になるようなことなんてしないよ?そもそも家から出してさえもらえないのに。

この人の話が理解できずにいると、この人はいきなり私を壁に押し付けて来た。

「………え?」

「君、気付いてない?自分がどれだけ俺たちを誘惑してるのか」

「………何言って……」

「ああ、そう。ストラスはまだ話してないのか」

彼の口からストラスの名前が出て来た。つまり、2人は顔見知りってこと?

「いいよ、教えてあげる。君の匂いは、俺たち悪魔にとって特別なんだ。君を食べたがる人も、娶りたい人もいる。そういう存在なんだよ」

彼が私の首筋を舐めるから、思わずビクリと反応する。

「君は悪魔にとって、良いようにも悪いようにもなる」

「…………あ、」


この人の視線から逃れるように目をそらすと、唐突に開放感とともにガシャンッ、という音が聞こえた。
その音に顔を上げると、目の前には息を切らして明らかに不機嫌顔のストラスが立っていた。

「………ストラス」

「……っ悪い、リディア。大丈夫か?何もされてないか?」

「……大丈夫。走ってきてくれたの?」

今思えばドアも開けっぱなしだったし、心配してくれたのかもしれない。


「……ひっどいなぁ。親友を殴り飛ばすなんて」


突如聞こえた声にさっきの人物の存在を思い出した。ホコリを払いながら立ち上がった彼は、そう言ってストラスを見た。

「人のものに手を出す親友がいてたまるか」

「ゴメンって。ほら、ストラスがご執心だったから気になっただけ」

「……え?」

「っ、余計なことを言うな。というかもう帰れ。邪魔だ」

「なんでよ。こんな遠いとこまで遊びにきてあげたのにそれはないでしょ。ねぇ?リディアちゃん」

「いえ。速やかにご帰宅願います」

「ははっ、ストレートだね。でも気にならない?ストラスが内緒にしてること」

その言葉に思わずピクリと反応した。そりゃあ、気になる事は山ほどある。けど、この人を信用して良いのかは別問題だし。

「おい。何勝手に言ってるんだ。冗談じゃねぇ」

「でもストラス。この子には自分の置かれてる立場、理解してもらった方がいいんじゃないの」

「…………」

ストラスは少しの間黙り込むと、チラリと私を見た。

「私は大丈夫だよ。むしろどっちかっていうと気になる」

ここでやめられたら逆に気になるし。自分のことくらい把握しないと。

「………はぁ。わかった。中で話すか」

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