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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

2.悪魔と魔界


「……なっ、なぜ悪魔がここに……!」

村長のその声で、私は我に返って下を見た。村人たちは驚き恐怖し、ただこちらを見上げている。

「お前らが勝手に用意した生け贄だ。俺がどうしようが勝手だろう」

「い、いえ!その娘でしたら、好きにしてくれて構いません」

「最初からそのつもりだ。人間ごときが口を挟むな」

「…………本当に、悪魔?」

思わず零れたその言葉に、悪魔が私の方を見た。

「これを見てもまだ信じられないのか」

「でも、今まで来なかったのに何で……」

「お前、こんな状況でよく悪魔と普通に会話できるな」

半分呆れたようなその言い草に、私もそういえばそうだと思った。

「まぁ、さっきまで殺されようとしてたんだし、それに比べたらそんな驚いてないのかな」

「……変わった奴だな」

悪魔はそう言うと、私から視線を外して改めて村人たちを見下ろした。

「この娘はただ今から俺のものだ。よって、魔界に連れていく。いいな」

「え!?」

思ったよりも大きい声が出て、私は思わず口を塞いだ。

「……それ、本気?」

「ああ。文句あるのか」

「…………いや、まぁ今さらだしいいけど」

そう、深く考えても仕方がない。この際悪魔に全て任せてしまえばいいんだ。


「ふざけんな!悪魔にリディアを渡せるかよ!」

唐突に聞こえた声に下を見ると、セシルが村人を振り切ってこっちを見ていた。

「セシル!お前何やってんだ!」

「やめろ。今すぐ戻ってこい!」

村人たちの止める声なんか無視して、セシルはまっすぐこちらを見てくる。

「人間のくせに、大した度胸だな。なら……」

この悪魔が何て言うかなんとなく想像できてしまった私は、悪魔の服を引っ張った。

「お願い、彼を傷つけないで」

私の言葉に、悪魔は何故かかなり不機嫌そうな顔をしてみせた。

「……チッ。覚えていろよ。いずれお前には俺に刃向かったことを後悔させてやる」

悪魔がそう言うと、ブワリと真っ黒な風に包まれた。

「リディア!絶対に、お前を助けに行くから!」

そういったセシルの言葉を最後に、私は強風に耐えられず目をつぶった。



風が収まって恐る恐る目を開けると、そこにはもう村も村人も何もなかった。

「………ここは……」

「魔界の隅、俺の家だ」

歩き出した悪魔の方を見てみれば、たしかに大きな家が建っている。

「ここら辺には誰もいない。お前もある程度は問題なく生活できるだろ。………ほら、突っ立ってないで来い」

ボーッとしてたせいか、悪魔にそう言われて私は小走りで悪魔の方に向かった。

「おい、走ると危ない……」

足枷が邪魔になってか、私は悪魔の言った通り転びそうになった。傾いた体にギュッと目を瞑るけど、来るであろう衝撃はなかった。
目を開けると、意外にも悪魔が私の体を支えてくれていた。

「だから走ると危ないって言っただろ。ほら、足枷も外してやるから待ってろ」

そう言って私の前にしゃがんだ悪魔は、鍵穴に指を近づけただけで足枷と手枷を外してくれた。

「………やっぱり悪魔か」

「当たり前だろ」

にしてはさっきよりも全然怖さはない。まぁ、怖いのは村人に対してだけで、私には普通に話してくれてたけど。それに、なんというか、優しい?本当は、そう恐ろしいものでもないのかもしれない。

「ほら、行くぞ」

今度は転ばないようにしっかり手を引いてくれてる。この人やっぱり悪魔っぽくないかも。


悪魔が家の扉を開けると、そこは意外にも小綺麗でしっかりした家だった。もっとボロくて怪しい感じかと思ってたけど。

「その服じゃダサいだろ。これに着替えろ。ついでに風呂沸かしとくから温まってこい」

ポイっと投げられた服を見れば、女の子用だしサイズもちょうど良さそう。

「ねぇ。どうして女の子の服があるの?」

見たところ誰かと暮らしてるわけでもなさそうだし。

「……っ!い、いや。……い、妹のだよ!そう、妹の!」

そう言いながらなぜか顔を赤くさせている悪魔。訳がわからない。

「へー。妹さんいるんだ」

「いいから風呂に入ってこい」

無理やり風呂場に押し込まれて、私は仕方なくお風呂に入るべく服を脱いだ。

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