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これでも一応生け贄です

高槻鳴海

1.生け贄


小さな村の隅にある、小さな教会。
そこに私、リディアは聖女として1人で住んでいる。否、住んでいた。今日までは。

この村では5年に一度、悪魔に生け贄を捧げなくてはならない。まぁこんなもの、所詮はおまじないや迷信に過ぎず、実際に悪魔なんか来ない。村の人たちは信じてるようだけど、正直私は興味がない。

けど今日私は、このよく分からない儀式で生け贄とさせられる。生け贄となる条件は、16歳になる女の子。しかし今年は運悪く、条件に合う子が私しかいなかった。だからわざわざこんな余所者に近い私を選んだんだ。

一応教会に住んでいる以上、聖女らしく格好とかも気を使っていたのだけど、それはもう無意味らしい。


とまぁ、諦めて儀式のために村を降りたのが数時間前のこと。儀式専用の白い地味な服に着替えさせられた私は、これから始まる儀式のために移動をする。
外に出れば、もう日も暮れ始めた頃だった。

儀式の行われる場所に着けば、もう多くの村人が準備を終えて待っていた。

「本当にあの聖女を生け贄にするのか?」

「仕方ないだろ。今年はアレしかいないんだ」

「けど悪魔に聖女を捧げるなんて、逆に怒りを買うんじゃないか」

「こればっかりはな。祈るしかないだろ」

同じような会話がそこら中からコソコソと聞こえてくる。まぁ、そう思われるのが当然だ。

村の人が私に手枷と足枷をつけると、台の上に寝かせた。周りにロウソクの炎があって、私を囲むように村人たちがいる。

私を寝かせたのを確認した村長は、儀式を始めた。

儀式とは言っても、さっき言った通り実際に悪魔を召喚してするわけじゃない。ただ私はジッとここに寝ていて、儀式の最後に何の意味もなく殺されるだけ。それだけで村人は悪魔に危害を加えられないと安心するんだから、馬鹿みたいだ。

長い間行われた儀式も終盤になり、村長が私を殺すために近づいてくる。
ああ、ほんと何もない人生だった。つまらない人生だった。たった1つ、救いがあったとするならそれは……。


「リディア!!」


唐突に名前を呼ばれてそっちを見れば、村人に止められながらもこちらに手を伸ばす男の子の姿が。

流れ者の私に唯一優しくしてくれた人。いつも私を助けてくれた人。

今度の生け贄が私だと知った時も、一緒に逃げようと提案してくれた。案の定、それを知った村人に、彼はしばらく私に会わないよう監視されてたけど。
まぁでも、最後にその顔を見れただけ良かったけど。

「…………ありがとう、セシル」

必死に手を伸ばしてくれる彼に、私は笑顔を向けた。すると、村長の振り下ろした剣がすぐ近くにまで迫っているのが横目で見える。

「………っ、」

思わず目をつぶったけど、一向に痛みは来なかった。
なぜか感じる謎の浮遊感に違和感を感じて、私は恐る恐る目を開けた。

眼前に見えたのは、真っ黒な髪をした端正な男。頭にある2本の角と背中から生えた漆黒の翼さえなければ、みんなが寄ってくるであろうほどの容姿。

突然のことにあまり状況が理解できずに、呆然としてしまう。

私が理解できるのは、この男は私が今まで信じて来なかった悪魔であるということ。そして私は今、この悪魔に抱きかかえられて、この男の翼によって浮いているということだけ。

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