アップスタートデイズ

深谷シロ

第4話 雑用係なんて最悪だっ!

「僕達はまず起きたら朝食を作る手伝いをするんだ。」


まだ朝食を食べていないようだ。僕は食べているが文句を言うだけ無駄だろう。わざわざ怒られるような事をするつもりも無い。


僕達は厨房へ行った。厨房では朝食を作っているためか、いい匂いがする。釣られそうだ。


「おはようございます。」


アルフレッドが突然挨拶したので僕も急いで挨拶する。まさに雑用だな……こちらから挨拶はするのか。


「ああ、おはよう。じゃあ、手伝え。」


ここでは身分が一番下か。明らかな命令口調だな。まあ、僕達が報告出来る筈もないし、勝手にそんな口調にしているだけだろう。


「はい。」


アルフレッドはすぐさま水道の近くに行った。やはり僕達は料理は作れないようだ。まあ、変な料理を作られても困るからだろうな。毒入れられるとか考えているのだろうか。あ、それ良い考えだな。取っておこう。


僕達は次々と溜まる食器を順に洗っていった。気温が低いだけに水が冷たい。アルフレッドの手が既に赤くなっている。


「兄さん、変わるよ。」


「ああ、ありがとう。」


すぐに変わった。ここではお湯が出ないようだが、あまり冷水で洗い物を続けていると、この後の作業に支障が出そうだ。僕は無駄に怒られたくない。それだけだ。別に兄だから助けたいという気持ちがある訳じゃない。


僕は前世での手伝いの記憶を蘇らせつつ、手早く食器洗いを終わらせた。ここには食洗機はあるようだが、使わせてはくれないらしい。あるだけ無駄だよな。


アルフレッドは僕が初めてにしては早かった作業に驚いていたが、口には出さなかった。兄としての面目だろうか。別にそんなのは求めてないんだけどね。


そのまま僕達は来た食器を交代で洗い、朝食が完成するのを待った。朝食は勿論、祖母のものだ。次に召使い。最後に僕達だ。余り物が回ってくるが、流石に食事自体はあるらしい。まあ、餓死したら死体処分に困るだろうからな。それに関しては心配ないようだ。


食事を終えると勿論、後片付け。全て僕達がした。アルフレッドがあまりにも不器用だという事が分かったので、幾つもある水道を使って分担作業を行った。比率的には7:3ぐらいで僕の方が圧倒的に洗ったのだが。アルフレッドは効率が悪い仕方をしているのだ。遅いのも当然だ。まあ、僕がすれば良いだけので教えようとは思わない。目で見て覚えてくれ。


「兄さん、次の作業は何?」


「……あ、あぁ。次は掃除だよ。」


呆然しているアルフレッドに次の作業を聞いた。掃除か。さっさと終わらせよう。なんかシンデレラに似てるな……。いや、女じゃないけどさ。


僕達は掃除用具のある部屋に行った。掃除は勿論、僕達だけ。この家に召使いって必要なの?


掃除も素早く終わらせた。どうせ塵一つに文句を言うのだろうから、塵一つ残さなかった。あらゆる所をアルフレッド以上に掃除した。当然、アルフレッドは呆然としている。いや、まあ僕の方が前世の年齢分、年上だからね……。張り合おうとしなくて良いのに……。


この後は昼食の準備だった。当然、朝食とスタイルは一緒だ。ずっと食器洗い。食事は最後。後片付けは全部やる。午後からはアルフレッドの貴族学院があるようだ。アルフレッドは制服に着替えて、貴族学院へと行った。


僕はその間も仕事をさせられるのかと思ったが、する仕事も残ってないので部屋に籠っていた。それぐらいの権利はある筈だ。無いと困る。


貴族学院は7歳から行くようだ。小学校より1年遅いのか。多分、基礎知識だと劣ってるんだろうな、この世界。異世界革命でも起こそうかと思ったけど身分が身分か。父親も逮捕されてるし……。ひ、ま、だ、な。


結局、アルフレッドが帰ってくるまでは、仕事が何も無かった。何も無いというのも暇で困る。魔術について学びたいな。


「あ、おかえり。」


「ただいま……。」


どうやら貴族学院にも父親の噂は出回り始めたらしい。大変だな……そこの暮らしも大変か。まあ、勉強だったら威張れそうだし、いいか。


「帰ってからの仕事は何?」


アルフレッドが何かを言う前に聞いておく。


「ああ、うん。夕食と風呂の準備だけだよ。」


夕食は言うまでもないが、朝食と昼食とスタイルが一緒だ。説明するまでもない。風呂は僕達も残り湯に入らせてくれるらしいが、時刻は皆が寝静まった後らしい。子供が一番最後に寝るってどういうこと?あまりにも日本との暮らしと違いすぎて混乱しそうだ。風呂の支度は当然、僕達。


「レインが来てくれたから楽になりそうだ。風呂は下から熱することで温めるんだ。薪はあるから、火を焚く準備だね。」


雑用係さんはどうやら火をおこす所から始めるらしい。原始時代かよ……。仕方なく火をおこした。アルフレッド曰く、これで終わりらしい。呆気ない……。予想より簡単じゃないか。僕はそう思っていたが、アルフレッドはそうではないらしい。大分疲れていた。まあ、貴族学院での事もあるのだろう。


どちらも入浴を済ませると、部屋に戻り寝た。どうやらこの家では洗濯はないらしい。穢れるとか何とか。お前らの服全て売ってやろうか。僕だって触りたくない。手が穢れる。


ここでの暮らしは取り敢えずそれほど大変でないと分かって安心だ。でも雑用係は嫌だな。

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