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アップスタートデイズ

深谷シロ

第3話 こんな待遇で最悪だっ!

前世の記憶を取り戻したのが一昨日。展開が早すぎます。僕は切実にそう思った。僕は今、王都にいる。


「来ましたわ。」


僕が転移した場所は王都の貴族街だった。母親の実家のようだ。貴族だったとは。僕を待っていたように家から1人の側使いらしき老婆が出てきた。


「こちらへいらっしゃい。」


僕の手を引くと乱暴に家へと連れていった。ここでの暮らしも大変そうだ。僕は応接室らしき場所に連れていかれた。中では1人の女性が座っていた。優雅にお茶を飲んでいる。彼女が母親の母親……祖母か。年齢的にはそれが妥当そうだ。


「ここへ座りなさい。」


僕を引っ張っていた老婆はそう言った。抗っても仕方が無いので僕はそこへ座る。僕が座ったのを細目で見ると老婆は礼をして立ち去った。やはり側使いであったようだ。


「あなたがメルラの子ね。」


メルラは僕の母親の名前だ。やはり祖母らしい。


「はい、そうです。」


なんとなく敬語を使った方が良い気がした。祖母は僕を睨む。何か粗相があっただろうか。


「まあ、良いです。アルフレッドをこちらへ。」


手を2回叩いて祖母は言った。すると老婆の「畏まりました。」という声が聞こえた。どうやら指示する時は手を2回、叩くらしい。僕は恐らく使えない行為だろうが覚えておこう。


すぐに老婆は戻ってきた。隣にはアルフレッドと呼ばれた少年がいる。兄だろう。僕は自分の顔をまだ見た事がないが、似ているのではないだろうか。兄弟だろうから当然ではあるのだが。


「何でしょう。」


アルフレッドには祖母に対する怯えがあるようだ。隠そうと必死になっているが隠せていない。不愉快そうに老婆と祖母が顔を歪めるが、注意はしなかった。慣れているらしい。この家の状況が何となく分かってきた。取り敢えず暮らしは保証されるが、苦しい生活になりそうだ。まずまずアルフレッドの衣服が明らかにこの家に合っていないのだ。


「あなたの弟よ。ほら、名乗りなさい。」


仕方なく僕は名乗った。何故、自分の兄に向かって名乗らなくてはならないのか。


「レインです。」


簡潔に終わらせた。互いによろしくと言っておく。あまりに長いと2人の老婆の顔がさらに歪みそうだったからだ。この家ではこの2人が絶対だろう。怒らせてはいけない2人だ。


「あなたは私の孫ではあるけど、別に孫だからといって優しくするつもりはありません。この家にいるからには働きなさい。アルフレッドと同じく教育はロレアに任せます。」


「分かりました、メリーナ様。」


祖母がメリーナ、老婆がロレアか。嫌でも覚えることになりそうだ。


「よろしくお願いします。」


早めに言っておいた。後で小言を言われる前に先手を打っておこう。今回の生活ではそれが重要になりそうだ。


祖母の話はそれだけだった。再びロレアに手を引っ張られ、家の中を軽く説明された。今日から働かなくてはならないらしい。前世でも家での手伝いレベルはあるが、こちらでの生活にはすぐに慣れるがどうか心配だ。努力するとしよう。


「今日1日はアルフレッドに仕事内容を聞きなさい。明日からはあなたもアルフレッドと同じ仕事をします。1日のスケジュールはアルフレッドと変わりません。それからメリーナ様とは関わらないように言われております。メリーナ様の生活スタイルは変わりませんが、考えて行動しなさい。」


それも兄に聞け、という事だろう。手短に済ませて欲しい。僕だってこんな老婆と話したくはないんだ。


「それではアルフレッド、レインを部屋に案内しなさい。私は仕事に戻ります。仕事の邪魔になるので私や給仕、執事にも話されることのないように。」


まさかの堂々の邪魔者扱いされるとは考えていなかった。召使いより下の立場か。小間使いレベルじゃないか。考えても仕方が無いのでアルフレッドに部屋に案内してもらった。


「兄さん。」


「どうしたんだい?」


「ここって変だね。」


「……続きは部屋でしよう。ここだと誰に聞かれているか分からない。」


僕達は部屋へと急いだ。部屋は小さい。机とベットがそれぞれ2つずつ置かれているがそれで部屋に殆ど隙間が無い。明らかな嫌がらせだ。面倒だな……。


「ここでの暮らしはあまり良くない。母さんといた方が絶対良い。でもあんな事があったから僕達はここにいるしかない。」


アルフレッドはそう言った。僕もその意見には賛成しているから頷く。


「ここでは僕達は召使いよりも身分が低いと思った方が良い。ただの雑用だ。あらゆる仕事をさせられる。でも僕達は貴族学院に行かせてくれる。そこで魔術を学ぶんだ。」


この家は魔術師が多い家系らしい。だからこそ貴族学院には絶対に入れるようだ。面目を保つ為にも。魔力の多い魔術師は欲しいようだ。都合の良い人達だな。


「分かったよ。貴族学院に行ったらここでの暮らしは終わり?」


僕が聞きたかった本命はそちらだ。ここでの暮らしがいつ終わるのか。早く終わって欲しい。


「うん、レインが貴族学院に通い始めた時点で僕達はここから追い出されるみたい。まあ、それの方が僕達にとっては良いけど。」


そう言うとアルフレッドは笑った。互いに考えている事は似ているらしい。流石、兄弟と言うべきなのだろうか。


「取り敢えずは今日の仕事だね。僕はまだ今日の仕事をしていないから一応全て教えるね。それじゃあ、付いてきて。」


さて、忙しい生活が始まるようだ。

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