地獄屋物語
第18話 ー地獄屋とは?
「な、何なんですか?…あなた方は」
月明かりが薄暗く照らす人気のない街中
ガラの悪い暴走族、いわゆるヤクザと呼ばれる連中が何十人と倒れ込んでいる
ゴミのようなその連中を見下ろすのは
たった1つの少女の影
その後ろには少年が豆鉄砲を食らったハトのように固まっている
「この人数相手に…ひ、1人で…」
無様に血を流し、汚れて倒れこむ男達と違い、
少女はどこも汚れることなく完全なる無傷だ。
「仮にも『地獄屋』って名前でやってるからね、恥のないよう努めてんだよ」
「地獄屋って…なんなんですか?
一体どういう組織なのか…」
「そうだな…君もそれなりに常連だしね
教えてあげるよ、地獄屋のこと」
ー地獄屋
その名の通り地獄の商売をしている
引き取り、売りつけ、ご案内があり、
レベル的には引き取る、売りつける、ご案内の順で上がる
『引き取る』
内容:依頼主の生活の中の地獄を取り除く
この暮らしやこの人から解放されたい
などの願望を叶える
『売りつける』
内容:依頼主が恨みを持っている人物に
地獄屋が代わって地獄を見せる
(復讐、逆襲、見返し)
『ご案内』
内容:ーー
ご案内を依頼できるのはある程度の条件が揃ったお客のみ
この地獄の責任を負うのは全て依頼主
地獄屋の中でもレベルが分けられいくつかの組織、獄堂と呼ばれるものに分類される
レベルとは獄堂内の成績、当主の強さ などから決められる、その獄堂が売買する『地獄』の品の質の高さだ
全てで7つ存在する
上から順に『死獄堂』ー
『愛憎堂』ご案内
『恩恨堂』ご案内
『豪炎堂』売りつけ
『深水堂』売りつけ
『地道堂』引き取り
『怨念堂』引き取り
このような仕組みになっている
死獄堂については明らかになっていない
それぞれの獄堂には1人当主がいてそれぞれ何人かメンバーがいる
愛憎堂と恩恨堂は特に大人数で形成されている
しかし豪炎堂と深水堂は当主本人しかいない
だから豪炎堂の当主と深水堂の当主が2人でペアを組んで活動するときもある
これ以上の細かな仕組みは知っている者の方が少ない
謎に包まれた巨大な組織、それが地獄屋だ
「伊達に地獄屋なんて名前使ってないからね
口滑らしたりしないほうがいいよ。君のためにもね。ということですのでまあ…
本日は地獄一丁毎度ありがとうございました」
赤い首飾りを下げた豪炎堂の当主、ロズ
丁寧にお辞儀をすると音なく消えた
残っているのは無様に倒れこんだ男ども
それを見下ろす1つの少年の影
そして薄暗い月明かりの下、不気味な街の雰囲気だけだった
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