地獄屋物語

登けんぴ

第16話

盛岡恵は笑顔を浮かべたまま少し飛ぶように歩いていた
すると後ろから声をかけられる
「盛岡?」
「へ?」
恵が振り向くと宇佐美智之が立っていた
「う、宇佐美先輩!」
あの事件以降宇佐美は時々恵に話しかける
と言っても同じクラスの部活の子への伝達や、頼まれごとばかりだ
「なんかいいことあったのか?」
「へ?」
「ヤケに笑顔だから」
途端に恵は顔を赤くした
「す、すみません!気持ち悪いですよね!」
「いや、別にそういうわけじゃないけど…なんかあったのか?」
「実は!エリカさんと友達になったんです!!」
恵が笑顔でそう言った
「え、大丈夫なのか?」
「はい!大丈夫です!」
恵は自信満々で答えた
「まあ…ならいいけど、なんかあったら絶対言えよ」
「は、はい、ありがとうございます」

「恵!」
エリカが恵を呼ぶ
「エリカさん!」
2人は笑いながら去って行く

宇佐美がそれを驚いたように見ている
すると
「すごいよねー」
かなり至近距離で声がする
振り向くと…
「ふ、フード!?」
「やあ久しぶり」
フードを被った少女…山野ミナキが立っていた
「久しぶりって…お前この学校なのかよやっぱ」
「どうでもいいけど…まあ見ての通り解決したから。あんたのことも色々巻き込んだけどね。で、絶対にこのことは他言しないようによろしく。」
それだけ言うとさっさと行ってしまった
「は?」

建物と建物の間
細く長い道をひたすら進む
ひらけた空間にある倉庫のような建物
『地獄屋』の文字

「やあロズ…」
「終わった」
「お疲れ様」
一部が銀髪の少年がいつものように笑いかける
すると奥から何番目かの部屋から少年が出でくる
「ジェンじゃん、久しぶり」
「おう、ひと段落ついたのか?」
「まあね」
ロズとジェンと呼ばれた少年は銀髪の少年の前のカウンターのようなところに座った
「盛岡恵…だっけ?」
「ミキト当主の?」
銀髪の少年とジェンがロズに問う
「…ああ」
「どんなやつ?」
「めっちゃ普通…いや、すごく変なやつ」
「変?」
「すごい…人好しっていうかなんか優しいっていうかあったかいやつ」
そう言ったロズの表情が少し柔らかくなる

「盛岡…ミキトだよね

  ボス  の名前って」

「…うん」


盛岡恵
ただの女子高生である
しかしあるところではそうではない
彼女が地獄屋とどのような関係があるのか
そして地獄屋のことを知り、関わり
彼女の身に、地獄屋に、
どのような変化が起こるのか

彼女達は知る由もない…

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