PLAY' S

サカキ

出会い

 休日の昼過ぎ俺は、珍しく外に出ていた。

俺、日比谷 慶(ひびや けい)は普段は家からあまり出ない俗に言う隠キャである。
まぁ家を出たからといっても本を買って直帰するんだが。

家の近くには本屋がないため、ショッピングモールに向かった。
中に入ったのだが安定のうるささだ。
それに人も多い。
うっ、酔いそう。
早く本買って帰ろう。

そう思い少し歩くペースを早めた。
そんな時いかにもって感じのヤンキー二人が一人の女の子に絡んでいる。
こんなアニメみたいな展開ほんとにあるんだ。
どうしよう、助けたほうがいいのかな?
周りの人は知らんぷりしてるから誰かがやらないとな。
しょうがないやるだけやるか。

「おいあんたら、いい加減にしろよ。」

歩きながら少し声を低くしヤンキーに話しかける。

「あ?」

ヤンキーは振り向くと同時に俺を睨んでくる。
いやー、怖い。
そう思っていると、

「ひっ!」

ヤンキーだけでなく周りの見ていた人も驚いている。
何故って?
俺の後ろにヤクザがいるからだよ。
ただ、たまたま通りかかったヤクザの集団の先頭を歩きながら声かけただけなんだけどね。

「す、すいませんでしたー。」

そう叫びながら二人は、逃げていった。
ただのビビリで助かった。
あのまま絡まれてたら、知り合いじゃないのがバレてもっと酷いことになってた。
そんなことより、

「大丈夫か?」

俺は手を差し伸ばした。
女の子は安心したような表情になり笑顔で、

「はい、ありがとうございました。」

と言ってきた。うっ、かわいいな下手したらほれてたぞ。
この女の子さっきは、余裕なくて気づかなかったけどめっちゃかわいい。
背は低い、中学生だろうか。
肩くらいまで伸ばした茶色の髪をなびかせお辞儀をしている。

「そうか、無事なら何よりだじゃあな。」

俺はそう言ってその場を後にした。

次の日、静岡にある城石高校に通っている2年の俺は、登校していた。

「おっと、すまん。」

誰かとぶつかってしまったので謝ると誰もいなかった。

「あれー?」

気のせいだったのかと思いその場を後にしようとすると、「あのー」という声が聞こえてもう一度振り返ると女の子が立っていた。
 
「うお びっくりした。︎」 

まじで気づかなかった。 
「痛くなかった?」
「いや、大丈夫だ。そっちは?」
「うん。私も大丈夫だよ。」
そういって少女ははにかんだ。
「そうか。じゃあな。」

そう言って少女に背を向けたら、

「待って、せっかくだから一緒に学校行こうよ。」

少女が俺を呼び止めた。
よく見ると同じ城石高校の制服を着ていた。


「いいけど。じゃあはやくいこうぜ。」
「うん、雪くん。」 

そして俺たちは、再び歩き出した。
ん?ちょっと待て。
なんでこいつ俺の名前知ってんだ?

「なぁ、なんでお前俺のなまえ知ってんの?」
「なんでって、同じクラスの人の名前くらいわかるでしょ?まぁこの感じだと雪くんはわかってないみたいだけどね。」

まじか!まさか同じクラスだったなんて。流石に悪いことしたな。

「悪いな、俺クラスの奴の名前数人しか覚えてないんだ。なあ、教えってもらっていいか?」
「もー、しようがないな。」

そう言うと少女は、頰を膨らませている。
あざといな。顔も普通にかわいいしポニーテールに束ねている黒髪もサラサラだし。

「私は、雲母 碧(きらら あおい)雪くんと同じ2年B組だよ。」

そう言うとまたはにかんだ。
なんて言うか、可愛いんだがバカっぽいよなぁ。
雲母が、そのまま話した。

「まぁ、雪くんなら覚えられてなくてもしょうがないかな。」
「なんでだ?」

俺が聞き返すと雲母は、いたずらな笑みを浮かべて、

「だって、雪くんは目が死んでるから何も見えてなさそうだもん。」
「おい、なんでナチュラルにディスるんだよ。てか今日初めて話した人にそんなこと言う?」

俺が素直に凹んで言うと、

「今日に関しては雪くんが悪いでしょ?」

うっ、確かに今日は俺が悪いな。

「図星でしょー?んー?」

こいつうぜー。
でもなんも言えないのがまた腹立つ。

「ほら学校ついたぞ。」
「あっほんとだ。」

めんどくさい奴と知り合っちゃったかもな。
俺はそう思いながら学校に入った。







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