連奏恋歌〜愛惜のレクイエム〜
第十七話
セラちゃんに蹴られて5時前に起床した。
姉妹揃って寝相は悪いらしい。
少し眠たい体を起こして僕は起き上がってリビングに向かい、朝食の支度をする。
ガンッ!!
「うぐぁっ!!?」
「あ、どっちか起きた」
2階から響いた物音と短い悲鳴から、そう判断を下す。
程なくしてリビングに降りてきたのは沙羅だった。
「う〜、頭いたっ……」
「おはよ、沙羅。朝食は今日カレイだよっ」
「あー、昨日カレイ買ってたわね」
「そうそう。煮つけで〜すっ♪」
「おお〜」
朝食のメニューを言うと沙羅は感嘆して僕の後ろからフライパンの中を覗き込む。
見ても蓋してるって……。
「ところで瑞揶、昨日の夜の記憶がないんだけど、何か知らない?」
「え? うーん……」
言いよどむ僕を見て、はてな顔を浮かべる沙羅。
「昨日リビングをめちゃくちゃにしたような気がするけどなんともなってないし、なんだったのかしら?」
「ゆ、夢だったんじゃないかな、それは?」
「夢? そうね、そうか……いや、まぁ今生きてるし、なんでもいっか」
顔洗ってくるわねー、と言い残して沙羅は洗面所に向かって行った。
ごまかしてもいないけど、何とかなってよかったと胸を撫で下ろす。
ゴンッ!
「痛っ!?」
「あ、セラちゃんも起きた」
直後に聞こえた2階からの物音に、そう判断を下す。
やっぱり姉妹だなぁとおもいつつ、盛り付けに入るのだった。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!?」
「!!?」
突然の悲鳴に僕は箸を落とした。
声は2階から、セラちゃんのもの。
ベッドから落ちたついでに何か落としたりしたのだろうか。
とりあえず、僕は様子を見に行くため、リビングを後にした。
◇
起き上がってから一発目の大絶叫をかますも、それでも私の頭はパニック状態だった。
そ、そそそ添い寝だったとはいえ、瑞揶くんのベッドで寝て、だ、抱きしめたり……今思い出しても恥ずかしい。
顔から火が出そうだった。
「ああああ、ななな、なんということを……」
両手で顔を持ってぶんぶんと振る。
姉弟で寝たに過ぎないといえば大丈夫だけど、私は瑞揶くんのこと好――
「はうぅぅ……」
頭がパンクしそう、いや、実際にパンクしてしまい、私の体は強制的にスリープ状態に移行することになった。
何という二度寝の始まり、そんなことを考える間もなく意識が沈んだ。
◇
セラちゃんの様子を見に行って眠っているのを確認し、再びベッドに寝かしつけて僕はリビングに戻った。
台所では僕の代わりに盛り付けをやっている沙羅がいて、セラちゃんはまだ起きそうにないから、先に2人で食べることにした。
「2人で食べるのって、なんだか新鮮な気がするわね」
「あはは、そうだね。セラちゃんが来て、ずっと3人だったもんね」
何気無い会話をしながらカレイに手をつける。
うん、おいしい〜っ。
「……アンタ、いつからセラを“セラちゃん”って呼ぶようになったのよ?」
「昨日だよーっ。沙羅が寝た後に、姉さんって呼ぶのやめたんだ。僕が呼ぶより、沙羅に呼んでほしいから……」
「……姉、ねえ」
沙羅は箸を置いて頬杖をついた。
少し思い悩んでる?
もうだいぶ仲良くなったのかな?
「私は――あの子が姉だとは思えないわ」
「……そっか」
どうやら僕の思い違いらしく、まだまだ道のりは遠そうだ。
何が悪いのかなー?
もうセラちゃんが危険じゃないことはわかってるはずなのに。
「そこまで頑なに拒まなくたっていいんじゃないかな?」
「瑞揶にも、自分の目の前に姉を名乗る奴が現れれば――ああ、アンタなら10分でなじむからダメね」
「えー……?」
「そもそもね、私たち王血影隊は仲良くないのよ。半分はきったない魔王の血が入っているわけで、自分を含めて皆嫌いなの。それで、私たちを生まれたときから不幸にしている母親だって嫌いなわけ。自分の母親を調べて暗殺する奴だって少なくはない。まぁ私はそんな面倒なことはしないけどね」
言って彼女はまた箸を持ち、ご飯を摘んで口に運ぶ。
魔王が諸悪の根源って感じかな?
うーん、魔王も偉い人だからうかつに倒したりできないしなぁ……。
「どうしたら仲良くできる?」
「どうするもこうするもないわよ。私はテキトーな性格だから別に同じ血が通ってるってだけで嫌いじゃないの。単に、一概に姉妹って言われても納得しないし、それに……」
「それに……?」
「あの子はそんなに、姉妹になる努力をしてないわ。そりゃ、見りゃ臆病なのはわかる。だけど、そうね」
味噌汁を一度口に含み、飲み干してから沙羅は言葉を続けた。
「もう一歩、あの子が進んで接してこれたら、私も考えを改めてあげてもいいわ」
トンっと音を立ててお椀を置き、沙羅は食べ終わった食器を流しに移動させ始めた。
沙羅の出した最大限の譲歩なんだろう。
姉妹、姉妹か……。
僕は脳裏に、響川家の実子たちの顔を思い浮かべた。
1年しか一緒にいなかった、2人。
姉さんと兄さん――。
たまにお義父さんが連れてくるけど、彼らは僕を、兄弟と認めてるんだろうか――?
「ともあれ――」
耳についた沙羅の言葉で我に返る。
ソファーに遠慮なく座り、リモコンを操作してから沙羅は僕に振り向いた。
「あと、1日よ」
「…………」
「それだけ。ま、辛気臭いのはよしましょ。別に私は、セラを嫌いだって言ってるんじゃないんだから。瑞揶は気にしないでよー」
「あ、うん……。あはは……」
気にしないでと言われても、事が自宅で起きている以上は気にしないと……。
でも、確かに――
セラちゃんが家にいるのは今日まで。
そう考えるとどこか寂しくて、ご飯の味が感じなくなっていた。
2人が今日、もしくは明日、別れるときまでに仲よくなれるのだろうか?
◇
何を思ってなのか瑞揶は私と彼の部屋で眠るセラを置いて出かけてしまった。
なんでも瑛彦とボーリングに行くそうな。
ガーターだしまくって涙目になる瑞揶が容易に想像できるけど、瑞揶がボウリングに行くなんてそんな無謀なことをしたのは他でもない。
(明らかに私たちに気を遣ってるわよねー……)
リビングでテレビをつけっぱなしにしながらソファーに深く座り、考えても意味のない詮索をする。
いや、もっとぶっちゃけると、ただ単に暇なのである。
あの子寝てるし、私1人でどうしろと言うのか。
そりゃ今の時代、携帯あれば1人でも退屈はしないけど、私はゲームとかしないし、SNSって言うのはよくわからないからしない。
結論、
「ドラマのDVD観ましょうかね」
こんなところで落ち着くのだった。
「ドラマ見るのー?」
「うわっ!?」
不意に聞こえた声に転げ落ちそうになった。
何とか持ちこたえ、ソファーにしがみついてソファーに倒れこむ。
「だ、大丈夫?」
「へ、平気よ……」
座りなおして、漸く声を掛けてきたセラに向き直る。
ちょっと慌てた様子だったけど、いそいそと私の隣に腰を下ろした。
「やっと起きたのね。瑞揶は遊びに行ったわよ」
「あ……うん。ね、寝ちゃってた……」
「私の手本なんて百年早いわね」
「うっ……面目ないです……」
座ってからどんどん小さくなるセラ。
昨日は手本になるとか言ってたから、ちょっとした意趣返しになったかもしれない。
「ていうか、なんで瑞揶の部屋で寝てたのよ? 私に一昨日突っぱねられたからって、瑞揶のところに行ったんじゃないでしょうね?」
「え……あ、えと……」
「それとも、添い寝じゃ済まなかったとか、なの?」
「そっ、添い寝だけよっ!」
「ふーん……」
顔を真っ赤にさせて口を振るわせるセラを見て、なんとな〜く思う。
この反応……。
瑞揶に惚れちゃったりとか?
カマを掛ければ反応してくれそうだけど、なんだかなー……。
もし、もしも瑞揶とセラがくっついたら。
それこそ本当に私の姉になるじゃない?
……え、そんな糸口があったの?
「……アンタ、なかなか策士ね」
「……ん?」
「あ、やっぱなんでもないわ」
「???」
目の前の少女にそんな思考能力がある分けなかった。
単純に好きなのね。
言ったらめんどくさいから、言及しないでおこう。
折角瑞揶が時間くれたんだし、親睦を深めるとしましょうか。
「ね、ねぇ、さーちゃん?」
「ん? なによ?」
細々とした声をかけられる
話すことなかったからちょうど良かった。
なんでも話すわよ!
「……さーちゃんは、その……瑞揶くんのこと、どう思ってるの……?」
「………………」
なかなか即答し辛いものだった。
何? 私を恋敵として見てるってこと?
恋盲目過ぎるわよ! 妹に認められたい心どこいった!?
「……い、言いよどむってことは?」
「いやいやいやいや!! 違うわよ! アンタの昨日との変わり様に驚いてるのよ!」
「えっ? 私、何か変わった?」
「いやもう全身から恋する乙女のオーラが丸見えなんだけど」
「ひぇっ!?」
途端に耳まで真っ赤になるセラ。
ほんと、昨日の夜に何があったのかしら?
瑞揶が変わってないし、現状コイツの片思いなのはわかるけど……。
「兎も角、私は瑞揶のことを恋愛対象として見た事ないわ。たまにドキッとさせられることもあるけど、アイツ女々しいし、頼り甲斐ないしね」
「そ、そっか……あうう……」
ぺこぺこと頭を下げてくるセラ。
段々別の意味でイライラしてきたわ。
瑞揶なんて、女々しいじゃない。
すぐ泣くし、しおらしいし。
良い所がたくさんあるのを差し引いても、あの子はないでしょ……。
良くても愛玩動物って所かしら?
「…………」
なんか瑞揶のことになると、いっぱい言葉が浮かぶわね。
当然か、家族なんだもの。
「……さーちゃん?」
「ごめん、なんでもないわ。ただ、瑞揶は恋愛の話はタブーだから、アタックするなら慎重にやりなさいよ?」
「う、うん……」
こくりとセラが頷く。
なんで私、アドバイスなんかしてるのかしら?
頭のキレが鈍い、私も二度寝するとしよう。
そうしたら、瑞揶のことを含めてもう少し、セラの事を考えてみるか――。
姉妹揃って寝相は悪いらしい。
少し眠たい体を起こして僕は起き上がってリビングに向かい、朝食の支度をする。
ガンッ!!
「うぐぁっ!!?」
「あ、どっちか起きた」
2階から響いた物音と短い悲鳴から、そう判断を下す。
程なくしてリビングに降りてきたのは沙羅だった。
「う〜、頭いたっ……」
「おはよ、沙羅。朝食は今日カレイだよっ」
「あー、昨日カレイ買ってたわね」
「そうそう。煮つけで〜すっ♪」
「おお〜」
朝食のメニューを言うと沙羅は感嘆して僕の後ろからフライパンの中を覗き込む。
見ても蓋してるって……。
「ところで瑞揶、昨日の夜の記憶がないんだけど、何か知らない?」
「え? うーん……」
言いよどむ僕を見て、はてな顔を浮かべる沙羅。
「昨日リビングをめちゃくちゃにしたような気がするけどなんともなってないし、なんだったのかしら?」
「ゆ、夢だったんじゃないかな、それは?」
「夢? そうね、そうか……いや、まぁ今生きてるし、なんでもいっか」
顔洗ってくるわねー、と言い残して沙羅は洗面所に向かって行った。
ごまかしてもいないけど、何とかなってよかったと胸を撫で下ろす。
ゴンッ!
「痛っ!?」
「あ、セラちゃんも起きた」
直後に聞こえた2階からの物音に、そう判断を下す。
やっぱり姉妹だなぁとおもいつつ、盛り付けに入るのだった。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!?」
「!!?」
突然の悲鳴に僕は箸を落とした。
声は2階から、セラちゃんのもの。
ベッドから落ちたついでに何か落としたりしたのだろうか。
とりあえず、僕は様子を見に行くため、リビングを後にした。
◇
起き上がってから一発目の大絶叫をかますも、それでも私の頭はパニック状態だった。
そ、そそそ添い寝だったとはいえ、瑞揶くんのベッドで寝て、だ、抱きしめたり……今思い出しても恥ずかしい。
顔から火が出そうだった。
「ああああ、ななな、なんということを……」
両手で顔を持ってぶんぶんと振る。
姉弟で寝たに過ぎないといえば大丈夫だけど、私は瑞揶くんのこと好――
「はうぅぅ……」
頭がパンクしそう、いや、実際にパンクしてしまい、私の体は強制的にスリープ状態に移行することになった。
何という二度寝の始まり、そんなことを考える間もなく意識が沈んだ。
◇
セラちゃんの様子を見に行って眠っているのを確認し、再びベッドに寝かしつけて僕はリビングに戻った。
台所では僕の代わりに盛り付けをやっている沙羅がいて、セラちゃんはまだ起きそうにないから、先に2人で食べることにした。
「2人で食べるのって、なんだか新鮮な気がするわね」
「あはは、そうだね。セラちゃんが来て、ずっと3人だったもんね」
何気無い会話をしながらカレイに手をつける。
うん、おいしい〜っ。
「……アンタ、いつからセラを“セラちゃん”って呼ぶようになったのよ?」
「昨日だよーっ。沙羅が寝た後に、姉さんって呼ぶのやめたんだ。僕が呼ぶより、沙羅に呼んでほしいから……」
「……姉、ねえ」
沙羅は箸を置いて頬杖をついた。
少し思い悩んでる?
もうだいぶ仲良くなったのかな?
「私は――あの子が姉だとは思えないわ」
「……そっか」
どうやら僕の思い違いらしく、まだまだ道のりは遠そうだ。
何が悪いのかなー?
もうセラちゃんが危険じゃないことはわかってるはずなのに。
「そこまで頑なに拒まなくたっていいんじゃないかな?」
「瑞揶にも、自分の目の前に姉を名乗る奴が現れれば――ああ、アンタなら10分でなじむからダメね」
「えー……?」
「そもそもね、私たち王血影隊は仲良くないのよ。半分はきったない魔王の血が入っているわけで、自分を含めて皆嫌いなの。それで、私たちを生まれたときから不幸にしている母親だって嫌いなわけ。自分の母親を調べて暗殺する奴だって少なくはない。まぁ私はそんな面倒なことはしないけどね」
言って彼女はまた箸を持ち、ご飯を摘んで口に運ぶ。
魔王が諸悪の根源って感じかな?
うーん、魔王も偉い人だからうかつに倒したりできないしなぁ……。
「どうしたら仲良くできる?」
「どうするもこうするもないわよ。私はテキトーな性格だから別に同じ血が通ってるってだけで嫌いじゃないの。単に、一概に姉妹って言われても納得しないし、それに……」
「それに……?」
「あの子はそんなに、姉妹になる努力をしてないわ。そりゃ、見りゃ臆病なのはわかる。だけど、そうね」
味噌汁を一度口に含み、飲み干してから沙羅は言葉を続けた。
「もう一歩、あの子が進んで接してこれたら、私も考えを改めてあげてもいいわ」
トンっと音を立ててお椀を置き、沙羅は食べ終わった食器を流しに移動させ始めた。
沙羅の出した最大限の譲歩なんだろう。
姉妹、姉妹か……。
僕は脳裏に、響川家の実子たちの顔を思い浮かべた。
1年しか一緒にいなかった、2人。
姉さんと兄さん――。
たまにお義父さんが連れてくるけど、彼らは僕を、兄弟と認めてるんだろうか――?
「ともあれ――」
耳についた沙羅の言葉で我に返る。
ソファーに遠慮なく座り、リモコンを操作してから沙羅は僕に振り向いた。
「あと、1日よ」
「…………」
「それだけ。ま、辛気臭いのはよしましょ。別に私は、セラを嫌いだって言ってるんじゃないんだから。瑞揶は気にしないでよー」
「あ、うん……。あはは……」
気にしないでと言われても、事が自宅で起きている以上は気にしないと……。
でも、確かに――
セラちゃんが家にいるのは今日まで。
そう考えるとどこか寂しくて、ご飯の味が感じなくなっていた。
2人が今日、もしくは明日、別れるときまでに仲よくなれるのだろうか?
◇
何を思ってなのか瑞揶は私と彼の部屋で眠るセラを置いて出かけてしまった。
なんでも瑛彦とボーリングに行くそうな。
ガーターだしまくって涙目になる瑞揶が容易に想像できるけど、瑞揶がボウリングに行くなんてそんな無謀なことをしたのは他でもない。
(明らかに私たちに気を遣ってるわよねー……)
リビングでテレビをつけっぱなしにしながらソファーに深く座り、考えても意味のない詮索をする。
いや、もっとぶっちゃけると、ただ単に暇なのである。
あの子寝てるし、私1人でどうしろと言うのか。
そりゃ今の時代、携帯あれば1人でも退屈はしないけど、私はゲームとかしないし、SNSって言うのはよくわからないからしない。
結論、
「ドラマのDVD観ましょうかね」
こんなところで落ち着くのだった。
「ドラマ見るのー?」
「うわっ!?」
不意に聞こえた声に転げ落ちそうになった。
何とか持ちこたえ、ソファーにしがみついてソファーに倒れこむ。
「だ、大丈夫?」
「へ、平気よ……」
座りなおして、漸く声を掛けてきたセラに向き直る。
ちょっと慌てた様子だったけど、いそいそと私の隣に腰を下ろした。
「やっと起きたのね。瑞揶は遊びに行ったわよ」
「あ……うん。ね、寝ちゃってた……」
「私の手本なんて百年早いわね」
「うっ……面目ないです……」
座ってからどんどん小さくなるセラ。
昨日は手本になるとか言ってたから、ちょっとした意趣返しになったかもしれない。
「ていうか、なんで瑞揶の部屋で寝てたのよ? 私に一昨日突っぱねられたからって、瑞揶のところに行ったんじゃないでしょうね?」
「え……あ、えと……」
「それとも、添い寝じゃ済まなかったとか、なの?」
「そっ、添い寝だけよっ!」
「ふーん……」
顔を真っ赤にさせて口を振るわせるセラを見て、なんとな〜く思う。
この反応……。
瑞揶に惚れちゃったりとか?
カマを掛ければ反応してくれそうだけど、なんだかなー……。
もし、もしも瑞揶とセラがくっついたら。
それこそ本当に私の姉になるじゃない?
……え、そんな糸口があったの?
「……アンタ、なかなか策士ね」
「……ん?」
「あ、やっぱなんでもないわ」
「???」
目の前の少女にそんな思考能力がある分けなかった。
単純に好きなのね。
言ったらめんどくさいから、言及しないでおこう。
折角瑞揶が時間くれたんだし、親睦を深めるとしましょうか。
「ね、ねぇ、さーちゃん?」
「ん? なによ?」
細々とした声をかけられる
話すことなかったからちょうど良かった。
なんでも話すわよ!
「……さーちゃんは、その……瑞揶くんのこと、どう思ってるの……?」
「………………」
なかなか即答し辛いものだった。
何? 私を恋敵として見てるってこと?
恋盲目過ぎるわよ! 妹に認められたい心どこいった!?
「……い、言いよどむってことは?」
「いやいやいやいや!! 違うわよ! アンタの昨日との変わり様に驚いてるのよ!」
「えっ? 私、何か変わった?」
「いやもう全身から恋する乙女のオーラが丸見えなんだけど」
「ひぇっ!?」
途端に耳まで真っ赤になるセラ。
ほんと、昨日の夜に何があったのかしら?
瑞揶が変わってないし、現状コイツの片思いなのはわかるけど……。
「兎も角、私は瑞揶のことを恋愛対象として見た事ないわ。たまにドキッとさせられることもあるけど、アイツ女々しいし、頼り甲斐ないしね」
「そ、そっか……あうう……」
ぺこぺこと頭を下げてくるセラ。
段々別の意味でイライラしてきたわ。
瑞揶なんて、女々しいじゃない。
すぐ泣くし、しおらしいし。
良い所がたくさんあるのを差し引いても、あの子はないでしょ……。
良くても愛玩動物って所かしら?
「…………」
なんか瑞揶のことになると、いっぱい言葉が浮かぶわね。
当然か、家族なんだもの。
「……さーちゃん?」
「ごめん、なんでもないわ。ただ、瑞揶は恋愛の話はタブーだから、アタックするなら慎重にやりなさいよ?」
「う、うん……」
こくりとセラが頷く。
なんで私、アドバイスなんかしてるのかしら?
頭のキレが鈍い、私も二度寝するとしよう。
そうしたら、瑞揶のことを含めてもう少し、セラの事を考えてみるか――。
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