炎獄のナイトクラッシュ
聖なる神の術
垢抜けた服装に不格好な走り方など、指摘すべきポイントは多々ありながらも、また、混雑したこの道を走っていくというのは確実な程に人にぶつかることを予想は出来たのだが…
残念ながら、追いつこうと思ったが結果は最後まで追いつかなかった。そして、息を切らして中へと入っていく。
矢張りこの時間帯であれば、かなり中は人で溢れかえっており、当然の事ながら、3人を見つけることは困難を極めていた。
また、全力疾走した後の為体力が消耗仕切っていることにも気付き、1人で見つけられる気がしないことも感じた。
中に入ると、これまた溢れる程に人がいた。取り敢えず、当てはないが探してみる。
恐らくだが一番可能性が高い、クエスト掲示板前と受付前。ここを重点的に調べることにしてみるか。
先ずはクエスト掲示板前。
ここは案の定人の量は多い。人口密度は殆ど100%に達し、この夥しい数の人に揉みくちゃになりつつ探していく。
あ、あれかな。
いや、違うなぁ……
お、この人かな?
うーん…惜しい!あと少し!(何について少しなのかは触れません。)
今度こそこの人だわ。
は?全然似てねー。
散々なものであった。
はい、次だ。次!
気分一新し向かったのは、受付前。
瞬間俺は茫然自失とし、言葉が出て来なくなった。
先のような、人でごった返すような場所とは打って変わり殆ど、無。
そう、アメリカ西部劇の荒れた荒野で風邪を受け転がってゆく丸まった草を思い起こさせるシーンのような…そんな感じ。
おいおい!この状況は何だ!?てか人が来なさすぎて一人寝てんじゃねーか!あ、よく見るとあれは、ミカさんだ……
自身の職務を全うすべきだと思うが…
結果として期待はしていないものだったな……
となると、矢張り外の可能性が高い。
外は焼けるように暑く、降り注ぐ太陽の光の中には灼熱とまではいかなくとも十分に余炎と言える。
心の底から拒絶してしまう。否、というより脳内が拒絶反応を起こしているようだ。その信号を体全身に、瞬間的に送られてゆくのを憶えた。
不本意ながらその世界へと飛び込もうと思い踵を返そうとした時。
人がいない……
つい先程までは溢れかえっていたというのに…今度は一体何なんだ!?
再度周りを見渡してみる。今見えている世界が夢の世界であるという期待を持って…
だがこんな事は全くもって事実無根だった。
案の定、無論、現であった。
そんな時に薄気味悪く半嗤う女性の声が聞こえてくるのである。
ーーーーハハハハハ……
何だろう?微妙に馬鹿にされているような……
とは言えど、このままでは埒があかない。応答するかどうかは一先ず置いて、俺は訊いた。
「この状況を説明して頂けませんかね?本当に訳が判りません。ご教示願います。どなたかは分かりませんが、応答の程宜しくお願い致します!」
ーーーーハハハハハ……
これが所謂、ご返信ですかねー…本当にその意見に対して『ハハハハハ』ですね。
俺は漸くその時、周りの状況を確認していた。
背景一面に広がる黒の空間。何の濁りも澱みも無い黒一色。ただただ続いてゆく空間の中。鼓動の声すら大音量に聞こえてしまうような静寂に俺は放り出されている事に…
これがよく言う亜空間とでも言うやつだろうか。
ーーーー聞こえていますか?東藤恵斗さん。
私はこの世界を創り出した謂わば、創造神。神なのですよ。
既にある程度はお判りかと思いますが、ここは亜空間。誰一人として此処には居ませんし、来る事すら絶対にありません。私と貴方、否、貴方のみの世界と言えるでしょう。
何故だ。今この世界を創り出した謂わば創造神と名乗る謎の神様は、俺のことを「東藤恵斗」と本名で呼んだ。
考えれば考える程に深まる謎はさておきというより、次にすぐに訊くとして…
訝しげな表情で俺は先ず、状況を訊いた。
「すいませーん。そこにいらっしゃるのでしたら、現在の状況を把握したいんですけど。
聞こえてますかね。創造神様。」
ーーーー私は神なのですよ。先ずは私と話すことの許しを請うべきでしょう。何と、無礼な。この下衆豚がっ!
神の発言として断じて許容できないラスト一文についてはその音源である創造神を心の底からぶっ殺してやりたくなる気持ちを駆り立てたが、その本気の苛立ちをどうにか諫死してもう一度訊いた。
「お話出来て誠に光栄でございます。また、先程までのご無礼、どうかご容赦願います。さて、私は現在の状況を把握したく思い、創造神様に尋ねます。単刀直入ながら申し上げますと、私も正直なところ大変恐怖を憶えているものなのでございます。そこで、この世界を創り出した貴女、創造神様に御教示願いたいのです。及び難い願いということは重々承知しておりますが、何卒願わしく存じます。」
(こんな遜った、『the謙譲語』ってのは久しぶりだな。それにこの長文…)
しかしそれに対する反応は無く、寂寂たる辺りの静けさのみを、俺は了知した。
暫時の時を経て、先に口を開いたのは、創造神だった。
ーーーーハハハハハ、ハハハハハ!
何がおかしいんだ、身が竦む。
すると今度は先と異なる声が聞こえてきた。
ーーーーその辺にしておいたら?まぁ面白いけどね。
ーーーーそうです。そろそろやめておくのがいいでしょう。流石に、不憫に感じますので。
うーん、どこかで聞いたことがあるような……
同時に世界から黒が消え、光が灯され、視界が開けた。その際、立ち眩みを起こしたが、気にせず周りを見る。
そう、この世界だ。帰ってきた!
たった数分の亜空間体験はここで突発的事項として幕を閉じた。
それから、顔を上げ視界を広げると、3人が居た。
笑ったり嗤ったり微笑ったりしていた。
相も変わらず3人の違いだ…前後の文の2人はいいとして。問題は真ん中の奴。
予想はつくが、犯人はそいつ。
それでも、前後2人には。
お帰り!
そんな言葉を期待仕掛けていた俺が間抜けだったのかと、解った。
「その通り!ご名答だ。今のは我が直々に神聖術を貴様に展開してやった。それだけで、また、そこまでやったのだ。是非とも、感謝してほしい。」
「ふざけんな!!何が創造神だ!あ!そういえばお前、俺のこと、下衆豚と呼んでいたな!ぶっ殺してやろうと思ったぞ!そして更にこの怒りをお前にぶちまけてやる!今すぐにな!」
「待て、待つのだ!我が貴様に何をした!我は我。創造神は創造神。人が違うぞ!」
「今になって、自身の罪を逃れようとしたところで、無駄だ!そんなことは知ったことか!」
拳を強く握り、顔面めがけて殴りかかったその瞬間。
エリーヌが横から割って入り、俺の空疎な鳩尾へと、アイアンブローが炸裂した。
グワッッッ!
そのまま倒れこみ、ほんの数秒間失神し、記憶が飛んで行った。
起き上がる時に三波が手を出してくれた。
「東藤さん、勿論今回の件はかなり、笠原さんに非があると思いますが、それでも暴力はよくないですよ。」
隣にいた三波は深く考えるように大きく頷きながら聴いていた。
「しかし、あれは本当に神聖術なのかよ。まだ2日目だってのに……
というか、クエストだろ!何のために来たんだよ!」
「あー、それだと、あんまりいいのが無かったんだよ!だから、笠原さんに魔法を教えて、実践してたんだよ!ごめんね、東藤君、実験材料なんかにして……」
許します!!
「で、だ。お前は何故いきなり神聖術などが使えたんだよ!?」
「そこまで気になるか。そうか、いいだろう。これは我が秘めたる最上の奥義。故に我は神なのである!」
「造言です。違うでしょう。先に私が魔法の指導をして成し得た技でしょう。というかそもそも、これは神聖術でも何でもない訳ですし。」
「あれ?そうだったの?私、気付かなかったよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
威圧感を敢えて滲ませた、簡潔な文章をわざと大きな声で聞こえるように言ってみたが一向に効果は現れず、止むを得ずもう一つの疑問をぶつけた。
「なぁ、お前ら。神聖術はいいが、否、良くはないがまあこの際いい。」
一旦間を置き、大きく息を吸った。そして、はっきりと、言った。
「俺ら、何しに来たっけ?」
残念ながら、追いつこうと思ったが結果は最後まで追いつかなかった。そして、息を切らして中へと入っていく。
矢張りこの時間帯であれば、かなり中は人で溢れかえっており、当然の事ながら、3人を見つけることは困難を極めていた。
また、全力疾走した後の為体力が消耗仕切っていることにも気付き、1人で見つけられる気がしないことも感じた。
中に入ると、これまた溢れる程に人がいた。取り敢えず、当てはないが探してみる。
恐らくだが一番可能性が高い、クエスト掲示板前と受付前。ここを重点的に調べることにしてみるか。
先ずはクエスト掲示板前。
ここは案の定人の量は多い。人口密度は殆ど100%に達し、この夥しい数の人に揉みくちゃになりつつ探していく。
あ、あれかな。
いや、違うなぁ……
お、この人かな?
うーん…惜しい!あと少し!(何について少しなのかは触れません。)
今度こそこの人だわ。
は?全然似てねー。
散々なものであった。
はい、次だ。次!
気分一新し向かったのは、受付前。
瞬間俺は茫然自失とし、言葉が出て来なくなった。
先のような、人でごった返すような場所とは打って変わり殆ど、無。
そう、アメリカ西部劇の荒れた荒野で風邪を受け転がってゆく丸まった草を思い起こさせるシーンのような…そんな感じ。
おいおい!この状況は何だ!?てか人が来なさすぎて一人寝てんじゃねーか!あ、よく見るとあれは、ミカさんだ……
自身の職務を全うすべきだと思うが…
結果として期待はしていないものだったな……
となると、矢張り外の可能性が高い。
外は焼けるように暑く、降り注ぐ太陽の光の中には灼熱とまではいかなくとも十分に余炎と言える。
心の底から拒絶してしまう。否、というより脳内が拒絶反応を起こしているようだ。その信号を体全身に、瞬間的に送られてゆくのを憶えた。
不本意ながらその世界へと飛び込もうと思い踵を返そうとした時。
人がいない……
つい先程までは溢れかえっていたというのに…今度は一体何なんだ!?
再度周りを見渡してみる。今見えている世界が夢の世界であるという期待を持って…
だがこんな事は全くもって事実無根だった。
案の定、無論、現であった。
そんな時に薄気味悪く半嗤う女性の声が聞こえてくるのである。
ーーーーハハハハハ……
何だろう?微妙に馬鹿にされているような……
とは言えど、このままでは埒があかない。応答するかどうかは一先ず置いて、俺は訊いた。
「この状況を説明して頂けませんかね?本当に訳が判りません。ご教示願います。どなたかは分かりませんが、応答の程宜しくお願い致します!」
ーーーーハハハハハ……
これが所謂、ご返信ですかねー…本当にその意見に対して『ハハハハハ』ですね。
俺は漸くその時、周りの状況を確認していた。
背景一面に広がる黒の空間。何の濁りも澱みも無い黒一色。ただただ続いてゆく空間の中。鼓動の声すら大音量に聞こえてしまうような静寂に俺は放り出されている事に…
これがよく言う亜空間とでも言うやつだろうか。
ーーーー聞こえていますか?東藤恵斗さん。
私はこの世界を創り出した謂わば、創造神。神なのですよ。
既にある程度はお判りかと思いますが、ここは亜空間。誰一人として此処には居ませんし、来る事すら絶対にありません。私と貴方、否、貴方のみの世界と言えるでしょう。
何故だ。今この世界を創り出した謂わば創造神と名乗る謎の神様は、俺のことを「東藤恵斗」と本名で呼んだ。
考えれば考える程に深まる謎はさておきというより、次にすぐに訊くとして…
訝しげな表情で俺は先ず、状況を訊いた。
「すいませーん。そこにいらっしゃるのでしたら、現在の状況を把握したいんですけど。
聞こえてますかね。創造神様。」
ーーーー私は神なのですよ。先ずは私と話すことの許しを請うべきでしょう。何と、無礼な。この下衆豚がっ!
神の発言として断じて許容できないラスト一文についてはその音源である創造神を心の底からぶっ殺してやりたくなる気持ちを駆り立てたが、その本気の苛立ちをどうにか諫死してもう一度訊いた。
「お話出来て誠に光栄でございます。また、先程までのご無礼、どうかご容赦願います。さて、私は現在の状況を把握したく思い、創造神様に尋ねます。単刀直入ながら申し上げますと、私も正直なところ大変恐怖を憶えているものなのでございます。そこで、この世界を創り出した貴女、創造神様に御教示願いたいのです。及び難い願いということは重々承知しておりますが、何卒願わしく存じます。」
(こんな遜った、『the謙譲語』ってのは久しぶりだな。それにこの長文…)
しかしそれに対する反応は無く、寂寂たる辺りの静けさのみを、俺は了知した。
暫時の時を経て、先に口を開いたのは、創造神だった。
ーーーーハハハハハ、ハハハハハ!
何がおかしいんだ、身が竦む。
すると今度は先と異なる声が聞こえてきた。
ーーーーその辺にしておいたら?まぁ面白いけどね。
ーーーーそうです。そろそろやめておくのがいいでしょう。流石に、不憫に感じますので。
うーん、どこかで聞いたことがあるような……
同時に世界から黒が消え、光が灯され、視界が開けた。その際、立ち眩みを起こしたが、気にせず周りを見る。
そう、この世界だ。帰ってきた!
たった数分の亜空間体験はここで突発的事項として幕を閉じた。
それから、顔を上げ視界を広げると、3人が居た。
笑ったり嗤ったり微笑ったりしていた。
相も変わらず3人の違いだ…前後の文の2人はいいとして。問題は真ん中の奴。
予想はつくが、犯人はそいつ。
それでも、前後2人には。
お帰り!
そんな言葉を期待仕掛けていた俺が間抜けだったのかと、解った。
「その通り!ご名答だ。今のは我が直々に神聖術を貴様に展開してやった。それだけで、また、そこまでやったのだ。是非とも、感謝してほしい。」
「ふざけんな!!何が創造神だ!あ!そういえばお前、俺のこと、下衆豚と呼んでいたな!ぶっ殺してやろうと思ったぞ!そして更にこの怒りをお前にぶちまけてやる!今すぐにな!」
「待て、待つのだ!我が貴様に何をした!我は我。創造神は創造神。人が違うぞ!」
「今になって、自身の罪を逃れようとしたところで、無駄だ!そんなことは知ったことか!」
拳を強く握り、顔面めがけて殴りかかったその瞬間。
エリーヌが横から割って入り、俺の空疎な鳩尾へと、アイアンブローが炸裂した。
グワッッッ!
そのまま倒れこみ、ほんの数秒間失神し、記憶が飛んで行った。
起き上がる時に三波が手を出してくれた。
「東藤さん、勿論今回の件はかなり、笠原さんに非があると思いますが、それでも暴力はよくないですよ。」
隣にいた三波は深く考えるように大きく頷きながら聴いていた。
「しかし、あれは本当に神聖術なのかよ。まだ2日目だってのに……
というか、クエストだろ!何のために来たんだよ!」
「あー、それだと、あんまりいいのが無かったんだよ!だから、笠原さんに魔法を教えて、実践してたんだよ!ごめんね、東藤君、実験材料なんかにして……」
許します!!
「で、だ。お前は何故いきなり神聖術などが使えたんだよ!?」
「そこまで気になるか。そうか、いいだろう。これは我が秘めたる最上の奥義。故に我は神なのである!」
「造言です。違うでしょう。先に私が魔法の指導をして成し得た技でしょう。というかそもそも、これは神聖術でも何でもない訳ですし。」
「あれ?そうだったの?私、気付かなかったよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
威圧感を敢えて滲ませた、簡潔な文章をわざと大きな声で聞こえるように言ってみたが一向に効果は現れず、止むを得ずもう一つの疑問をぶつけた。
「なぁ、お前ら。神聖術はいいが、否、良くはないがまあこの際いい。」
一旦間を置き、大きく息を吸った。そして、はっきりと、言った。
「俺ら、何しに来たっけ?」
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