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炎獄のナイトクラッシュ

伊那国濤

市内散策

 俺はとてもじゃないが、この場所がキツイ…

 先の宿兼居酒屋兼レストランが位置するのは、地図で見るところの東の端の方。つまり、其れ程往来が盛んでもなかったのだが…

 これはもう賑やかとか、そういう話では無い。人、人、人。人口密度は九分通り、人で溢れかえっている。歩くスペースを確保しつつ歩行しなければならないのはかなり辛い。
極稀に人につまづいて転けたのであろう人が前に、というか足元に転がっている場合がある。その時は本当に怖い。

 「人、多いな。とことん人だらけで、困ってしまう程に。」

 「そうですね。進むので一苦労ですしね。」

 「ハッッ!貴様らもまだまだだな。これくらいの人混みなら、容易に避けられるわ。と、いうか、人混みではなく人がゴミだな。」

 ポカリ。(キラーン)

 瞬間にして彼女はお空の星となった。

 「今のは撤回しろ。ダメだ。所謂NGワードだ。」

 「痛っ。何するの?じゃない。何をする!貴様!」

 前二文は何なんだ!あれこそが実際の厨二病の全貌かっ!

 「誰かー。た、助けてー。押し潰されますー。」

 あ、三波が、本当に潰れかけている。
 じゃない!助けろよ、俺。

 人と人との間を縫うように手を出した。お!繋いでくれるのか?もしかして!
 
 あー…

 その隣で八百屋の売り込みをしているおばさんが支えてくれた…くそっ!折角のチャンスが…

 「フッ、残念だったな。」

 「お前、ぶん殴るぞ。」

 「お巡りさ〜ん。ここに不審者が!きゃー。」

 悪戯に、また冗談のため小声で言った。

 くそっ!何なんだ…
 ていうか、三波は?

 「ありがとうございます。」

 何っ!?三波に感謝されるだと!?八百屋のおばさんに先を越されるとは…

 とはいえ、
「ありがとうございます。ここの野菜はどんな物があるのですか?」
好感を持たせる。

 「うちのは新鮮だよ。何でも見ていきな。」

 「どうも。」

 爽やかな笑顔を添え、白く清潔な歯を見せて、またも好感を持たせる。

 「あんた、つくづく、クソみたいな人間ね…」

哀れみの表情を添えられると、流石に結構精神的にダメージが…なんかゴミを見るような目で見られている気が…

 「ありがとう、おばさん。」

 それ以上やると、俺の精神がぶっ壊れる可能性があるのでその場で退散。

 また、こんな人の道を歩いてると、死にそうだ。

 「どこか、お店に入りませんか?そうすれば、少し涼めるのかと。」

 「うん、俺は大いにその提案に賛成だ。」
 「私もです。とても同意しています。」
 「致し方ない。そこまで言うなら。」

 そうして少し歩き始めた俺たちはもう一度だけ元気を取り戻したのだったが。歩くこと数分。

 「やめて!助けて、誰か!」

 ん、何だ?今の声。
「何か女の子の声がしなかった、今?」

 「そうだよね、私も聞こえた。あっちの方向から。」

 振り向きつつ指差したのは、入り組んでいる狭い路地だった。奥の方はどうなっているのかは不明だが、如何にも少女の誘拐など、犯罪がありそうな如何わしい道であることは垣間見えた。

 「何かあったのかな?取り敢えず行ってみよう。」

 脚が無意識のうちに一存で、その方向へと動いていった。
 
 はぁはぁ、急げ、急げ…俺!

 案の定、外から見ていた、入り組んでいる狭い路地。という予想は正しかったようだ。
 行くたび行くたびに現れる別れ道が俺の行く手を阻むと共に、脳内で延々と鳴り響く少女の声、「やめて!助けて、誰か!」。
 
 少しだけ待ってくれ…

 幾つもの別れ道という障碍を掻い潜り、漸く辿り着いたのは、少しだけ開けた広間のような場所。

 そしてそこにいるのは俺たちを除き、1人の少女と、3人の男たち。
 少女の方は黒いローブを全身にまとっている。しかし、ここからでは顔を窺うには少しばかり距離が足りない。
 男たちの方は薄く襤褸の服を着ている。一番先頭に立つのは、屈強な大男で、その手には小型のナイフがしっかりと握られている。その後ろの2人。一方は小さい身長で、少女より、少しくらい大きいくらい。同じく手には小型のナイフ。後ろのは割と背高め。しかし、武器は所持しているようには見えない。

 とまぁ、文章にすれば7〜8行程度になる文章を瞬時に判断した。

 あ、少女の後ろは壁で、もうそれ以上は下がることができなくなったのか!
 しかし男の手にはナイフで依然として状況は一変しない。
 
 「待て!」
その段階で一番高適応性の言葉を発した。
 
 「何だ、お前らは?餓鬼たった4人ということで合っているのか…解らないのか?貴様らのようなお子様と遊んでる暇は無い。解ったら、とっとと去るがいい。」

 「何つったんてんだ、てめえら!どっかいけよ。」

 屈強な大男は叫び続けている。
 俺たちは、ただ沈黙。

 「何か、言えよ!」

 「そうですか。じゃあお喋りでもしましょうかね。3分くらい。」

 「ふん、3分か。まぁ、死ぬまでの時間だ。好きにしろ。」

 脅しは悪いが通用しないぜ。現実世界でどれ程の罵詈雑言を浴びせられて生きてきたか。あー、思い出すだけで涙が…

 「え、東藤くん、どうしたの?」

 すいません、辛い過去を振り返っていました…

 男たち3人にも変なものを見るような目で見つめられること、3分。

 「さあ、3分が経ったみたいだね。それじゃあ覚悟してね。」

そう告げた瞬間、俺はすぐさまにその少女を抱えて、走った、遠くへ。走った。
心の中では、「フン、馬鹿共が!」なんて叫びながら…

 「あばよ、クソども!」

 刹那、その広場が炎に包まれる。
 これを起こしたのは、笠原。厨二病のあいつ。

 何故、いきなり!と言うと…そう、遡ること数時間。俺たちが八百屋を出て涼もうと思って歩いていた時のこと…

 「ねえ、エリーヌ。ここは異世界。魔法なんて使えないのかしら?」

 「そしてもし使えて、それは私にも、出来るものなのかしら?」

 うわー、目が輝いている…本気で使いたいのだろう。

 「私は使えませんが、魔法適性度というのがあり、それぞれの属性で別れています。まぁ、手軽に測れるのでやってみますか?」

 「ああ!」

 そして、ある建物の中へと入っていった。

 うわっ、これは何とも言えない、言うなれば、そう。tha占い。かな。
すると、奥からまたも、如何にもな婆さんが現れた。

 「お客さんか。ステータス確認なら、こっち来な。」

 「はい、じゃあ、ちょっと待って。」

 すると、その婆さんは光のオーラのようなものに包まれ、やがて笠原を巻き込んだ。

 「はい、おしまい。そっちで紙を受け取って。他のはやるかい?」

 やるべきだろう。という目でエリーヌに見られたから、一応やっておいた。

 東藤恵斗 16歳 
Level            ?
HP             ?
MP            ?
物理攻撃力   ?
魔法攻撃力   ?
物理防御力   ?
魔法防御力   ?
種族      ?
スキル     ?
ユニークスキル ?
称号      ?
存在      ?

 いや、待て!!何だ、ステータス全「?」って!?後、まだステータスが「?」と言うのは解るが(嘘だ。そんな訳が無い)、最後のは何だ!?「存在」だと…このステータス確認って、単にディスりたいだけのものなんじゃないのか…それなら、このステータス確認こそ、存在が「?」なんじゃないのか!?

 「今回のはかなり長めの癇癪ね。鬱憤は思う存分晴らせたかしら。」

 取り敢えず、一旦他人のステータスを拝見させて頂こう。

 三波京佳 15歳
Level      5
HP        9604
MP        846
物理攻撃力   1781
魔法攻撃力   1497
物理防御力   3121
魔法防御力   3490
種族      人族
スキル     クイックヒール
ユニークスキル オーバーオールヒール
称号      回復の精霊
存在      後衛支援
 
 あれー?普通過ぎんだろ!というか、存在って、そういう意味だったんすか。
 あー、ヒールをして欲しい!回復して下さい!思い切って殊更にある程度の傷を負ってみるか…

 別に気にはならないが…
 
 笠原詩織 15歳
Level      5
HP        5771
物理攻撃力   432
魔法攻撃力   8721
物理防御力   875
魔法防御力   1995
種族      人族
スキル     爆砕魔法
ユニークスキル Blast Bleak down
称号      爆破の悪魔
存在      中・後衛範囲攻撃

 いや、魔法強すぎるだろ!何故、ユニークスキルが英語!?更に、爆破の悪魔って…完全に楽しんでんじゃねーか!

 次!

 エリーヌ=ファン=リーゼル 15歳
Level      39
物理攻撃力   24966
魔法攻撃力    0
物理防御力   3148
魔法防御力   642
種族      人族
スキル     レイジングバーン
ユニークスキル クロス・スラッシング
        ブレイブ・クロー
称号      剣聖
存在      超攻撃単体特化型前衛

 うわぁ、こりゃすげーや。感嘆の声を漏らすばかりだな。物理攻撃力24966って恐ろしさ…最早、恐いな…
斬られたくねー。

 で、だ。
 俺は?

 もしかして今見ていたステータスは見間違いかも。(夢抱きし少年の発想。)

 無論そんなことはない。
  (夢壊れし少年の発想。)

 とまぁ、こういうことがあったんだよ!
因みに爆破元は勿論、笠原だ。彼女のユニークスキル、Blast Bleak down。
 これは、最上級攻撃力を誇る。いわば、最強の爆破魔法。
しかし、その攻撃力の高さ故に、周りの巻き込み方は甚だしい。
また、3分待ったのは、魔法式を詠唱する為の準備時間であった。

 だから今本気で走っているのだが…
そう、魔法障壁を張っている三波の元へ。

 それ即ち裏を返せば、何か防壁となるものが無い彼らは、もう…さようなら。

 刹那、強烈な爆風に吹き荒れた。と共に辺りは炎に包まれた。

 彼らは地に這い蹲り、血に飢えた人間へと、急変していた。体が焦げ、黒く染め上がったようだが、ゾンビかと疑ってしまうくらい、人からは離れてしまっていた。
幸いなことに、息はまだあるようだから、良かった…
俺はそっと胸を撫で下ろした。

 その後、今の爆発は何事かと、慌てて警察が駆けつけ、何とか事情を説明して解放された時には、かなりの時間が経過していた。

 帰り際、少女は俺たちに少しだけ、微笑みを浮かべて、足早に去って行った。何故だか愛らしい…

 ほら、キモい…

 今回は厨二病は目で訴えかけるように、告げてきた。

 あーあ。異世界初日がこんなだなんて…

 これからの人生、どうなるのか…

 そうして自身の未来を考えながら、宿の方向の日の方向へ足取り重く歩くのであった。



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