ラブ × ロワイヤル

小森 美佳

10 佐奈恵Side 1センチ

PM 5時20分。

愛ちゃんからゼミが終了したと連絡が来たのは、聞いていた時刻を30分ほど過ぎた頃だった。

今居る場所を告げると今から行くね!と返事が来たから、きっともう少ししたら上がってくるはずだ。


なかなか連絡が来なかった愛ちゃんのおかげで、締切が2週間後に迫った課題も完成間近まで進めることができた。
でも、1つ前の文末からの繋げ方にかなり悩んでいた時、ふと “ レポート作成 入門 ” の本が確かこの図書館のどこかにあったことを思い出し、それを取りに行こうと席を立った。

すると、目の前から類くんが歩いて来た。


「お前、こんな所に居たんだね。その課題の締切までまだ2週間もあんのに真面目なんだな!」

「だ、だって、できる時にやっておかないと後悔しそうだから」

「そうなんだ!お前のそういう真面目な所、やっぱ俺好きだわ〜」

「え!?」


ヤバイ、どうしよう。
心拍数がまた一気に上がったのが自分でもわかる。

類くんとのこの至近距離をどうにかしたかった私は、必死に後ずさりするが、類くんは逆にどんどん近づいてくる。
どんなに頑張っても離れない間隔。
後ずさるうちに自分の足に躓いて、バランスを崩した。
もう、尻もちをつくのは時間の問題。


「危ない!」

突然聞こえたその声にびっくりして、目を閉じた途端、誰かに力強く腕を掴まれて、引っ張られる。
硬い胸板の中に抱きかかえられた直後、背後の本棚に身体ごとぶつかった。

痛いっ。

あまりにも一瞬の出来事に、何が起きたのか全く理解できない。
状況を整理しようと、閉じていた目を開ける。


すると目の前に、類くんの顔があった。

しかも今日の中で1番近い距離感で、1センチもない気がする。
え、何!?類くんどうしちゃったの?
なんか怖いよ・・・。


次の瞬間、だんだん類くんの顔が近づいてくる。
もう私の胸は今にも飛び出しそうな勢いで動いている。
こんな時はどうするんだっけ?

パニックになりかけていて、どんなに考えてもまともな答えは出てない。


そうだ!顔を見ないように目を瞑ればいいんだ!

私はそう決意し、目を瞑ってこれから何を言われようが、全てを受け入れる覚悟をした。



その時--。


「佐奈!?」

声がした方を見ると、愛ちゃんがかなり息を切らしていた。
その後ろから幸太くんと雅斗くんもやってくる。


私と類くんは本棚と本棚の間で向かい合って、類くんは前屈み状態で、私は背後にある本棚に寄りかかった状態になっていた。

もしこの時みんなが来なかったら、私は類くんからキスされていたのかもしれない。
なんて妄想しながら、ふと我にかえる。



そんな私と類くんの顔を見て、幸太くんが口を開く。

「あれ、なんだ!お前らも居たの」

「コラ、類!こんな所で女の子口説かないの」

続いて雅斗くんが呆れた口調で言い放った。


「はぁ?そんなんじゃねーし!」

類くんは耳の後ろを掻きながらそう言うと、私の荷物が置いてある机に腰かけた。


愛ちゃんが私の居る本棚の前までくると口を開く。

「佐奈、大丈夫?メールしたのに返信なかったから心配しちゃったよ」

「え、そうだったの?ごめんね」

「大丈夫。なんにも無ければそれで!」

私達はお互いに顔を見合わせて笑った。


愛ちゃん、わかってるよ。
本当は私の心拍数のこと気にして急いで来てくれたんだよね。
心配かけてごめんね、でもありがとう。



そしてそれぞれに課題で必要な参考書などを借りる手続きを済ませると、みんなで図書館を後にした。

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