異能ガチャと勇者逃亡生活

バーニー

フェン救出作戦(後編)&〈this isフェン〉

今回は視点が変わります。
 読みにくいかも知れません。あとプチ長めです。
「this is」が変わる時の合図です。横に名前が書いてあるんですがそれが視点の人の名前です。






this isフェン

「フェン、君を攫いにきた。」

「攫いにきた?」

 思わず疑問系で返す。

 私を攫いにきた?なぜ?まさか魔王の手下か?いや、それにしては攫うにしても殺すにしてもなぜ堂々前に出る?

「樹、お前は誰だ?」

 警戒した声で聞く。

「あー、警戒してんなー。そらそうか。俺は決して怪しくない。俺はお前を攫いにきたものだ。」

 怪しすぎだよ!っと言ってしまいそうになる。
 ますます意味が分からない。樹は何を目的として私を攫う?そもそも樹は………
 と、考えていると樹が喋り始める。

「じゃあフェン?君は?」

「私?」

 樹が聞いてくる。

「何をいってる?私はフェンだ。」

「あー、違う。名前じゃない。そうだなーなら、



お前は誰だ?お前はなんだ?」

「私?私は……」

私はなんだ?いや、私は決まっているじゃないか、そう生まれた時から。
 そう私は

「私は勇者だ。」

this is樹

「私は勇者だ。」

 さっきまで明るかった目が、
暗くなり、漆黒のような目で言ったのだった。

 暗い暗い目で言ってきたファン。

 何故だろう。親近感を覚える。でも絶対に救わなきゃと思ってしまう。 
 だからフェン!そんなに暗い目をするな!

「はぁ、フェン。いや勇者フェン。今お前、鏡見てみろよ。酷え顔してるよ。」

「そうか。でも樹、お前が魔王の手下かも知れない。さっきまで違うと思っていたが私は勇者だ。可能がごくわずかにあるならお前を殺す。」

 フェンはそう言って殺気を向けてくる。
 正直怖い。今すぐ逃げ出したい。
 だが近くで見て、そしてあの時、出会ったときのフェンを見て、分かったよ。

……………もう君は壊れかけている…………

てね。

 だからこそ救わなきゃいけない。今の君を見てると辛い。 
 だから、だからこそ………

「お前はだれだ?」

「何をいってる?私は勇者だ。」

「ならお前はなぜ勇者なんだ?」

「いつから?それは生まれた時からだ。私はその時から勇者だ。」

「そうか……ならお前の生きる意味は?」
 

「魔王を倒すことだ。私は勇者なんだ。当たり前だろ。」

 お前に問いかける……

「お前はそんなん楽しいか?」




this isフェン

「お前はそんなん楽しいか?」

「楽………し……い?」

 つい腑抜けた声を出すフェン。
 仕方ないだろう。何故ならフェンは今まで「楽しいか?」なんて聞かれなかった。

 会う人は凄い魔物を倒しても「流石は勇者様」とか言われる。練習してても何も言わない。まるでしてて当たり前・・・・かのように。

 なのに樹は楽しいかと聞いてきたのだ。

「ずっと勇者として生きてきたんだろ。ずっと練習したりしてきただろ。しかも周りはさも勇者なら当然ってかんじだろ。何となくわかる。で、それは楽しかったか?」

「それは……」

 楽しかったか?楽しくなかった。でもそれは勇者として当然で、そうこれは勇者当然だ!

「楽しくなかった。だがそれは「勇者当然か?」え?」

「そりゃあ何回もきいた分かるぞ流石に……はぁ」

 そう言ってため息をついた後、樹は

「聞けよ、勇者。俺はなぁあの時ゴブリンから助けようとして、だけど実際に勝てるかどうか分からなかった。でもそれでもお前がゴブリンを瞬殺した。正直凄いと思った。かっこいいと思った。それは勇者と知っても変わらない。俺は勇者・・ではなくフェン・・・がかっこいいと思ったよ。」

 そう言って樹が微笑む。 
 樹が語ってるのを聞くと心が暖かくなる。

 何故だろう。目から何かがが……

「俺はお前を勇者・・ではなくフェン・・・として見てる。俺はお前を見てる。」

「うっうぇぇぇぇぇ」

 その言葉を聞いて一気に涙が出る。

 そうフェンは見て欲しかったのだ。自分を勇者じゃなく。フェンと言う自分を。
 
「辛かった。いつも魔物と戦って死ぬ思いをして怖かった。でも言えなかった。私は勇者だったから、それに練習しても誰も褒めてくれない。寂しかった。国民達の期待もあった。裏切るのが怖かったんだよ。うぇぇぇーん」

 そう言ってずっと隠してきた気持ちをたくさん言った。
 そして泣き止むころ樹は再度聞いた、

「お前はだれだ?」

 そんなん決まってるじゃん、

「私は私はフェン♪」



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