話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

標識上のユートピア

玉子炒め

九話

 結局、学校に行ったのは夕方だった。空を焦がさんとばかりに、紅のうろこ雲が散乱している。
さて、旧校舎に行って作品を仕上げなければ。校門を抜けようとする。
一瞬だけ、躊躇した。とんでもない胸騒ぎがおれを制止しようとしたのだ。
岸本のことか、はたまたもっと別の、とてつもない不安要素か。突き詰めようとしたが、頭がぼんやりしてできなかった。 
イラつきと一抹の不安を抱えながら、旧校舎を歩き続ける。夕焼けが窓越しに飛び込んでいたが、ノスタルジックでもなんでもない。むしろグロテスクだ。
やっとのことで教室にたどり着いた。
慎重にドアを開く。岸本は、いない。
複雑な気持ちで席につく。どちらかといえば安堵の方が大きいかもしれない。岸本を、見たくなかった。
作業を進めることにする。あとは色だけ塗れば完成だ。
女性の絵。小さな唇は凛奈にも似ているが、全体的に大人っぽい顔立ちは他の誰かにも似ている。
生気をだすために、頬の赤みを意識した。しかし、完成した絵は、死化粧をしたかのような女の絵だった。
苦笑いが漏れる。でも、凛奈は喜んでくれるはずだ。
ともかく作品は完成した。
背伸びをして立ち上がり、何気なくドアを開ける。 
 


醜悪な生物が立っていた。

「標識上のユートピア」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く