こんな異能と職業で俺にどうしろと

上条康

ギルドに帰ってきた俺はー

「おはよう異世界!おはよう今日の自分!」

こんなに寝たのは久しぶりだ。


よし、一日前へと遡ってみよう。
スガラ事件が終わり、久しぶりの風呂に突入した。
傷ついた体の数カ所が痛かったが我慢して湯船へとつかった。
その後、ギルド内へと足を踏み入れた俺は、一週間と一日かかって手に入れたと思われる回復薬を受付のおねえさんに渡す。

なぜかって、クエスト報酬をもらうためである。
だが、

「冒険者……さなださんですか……?」

「そうですが……」

受付のおねえさんになぜか恐怖の目で見られる。
なにかあったのだろうか?
そう思ってしまうほどの眼力。
そして受付のおねえさんの肩が震えてる事に気く。
なんでだ?

「冒険者の皆さん、ここに、ここに幽霊がいます!」
受け付けのおねえさんの大きな声が、ギルド内に響き渡る。
「なっ」

指差しながら俺のこと幽霊扱いするのまじでやめてください!
受付のおねえさんのおかげでギルド内が騒めき始める。

「幽霊?きゃー」

「いやー、近寄らないでー」

「「「きゃー」」」

「どこじゃ幽霊、この剣でぶった切ってやる!」
一人の厳つい顔の冒険者が剣を片手に立ち上がる。
あの〜、きゃーきゃー騒ぐのやめてほしいな……それと、近寄らないでも……地味に傷つくから。
あと、ぶった切るのは無しで。
受付のおねえさん……それ塩?塩かなぁ、真剣な顔して俺の体に巻くのやめてほしいなぁ、アハハ。

「て、おい俺は幽霊じゃねええー」
「きゃー、幽霊が喋ったあぁー」
こいつら、物分かり悪すぎるだろ。

数分後、ギルド内は少し落ち着きを取り戻しつつあった。

「さなださんは、死んだ事になっていたんです。クエストを受けてクエスト最中に死亡という事になってたんです。これは、冒険者にはよくある事なので……とんだご迷惑をすみません!」

少し分かった。
冒険者=帰ってこない=死亡。
たしかに、一週間は、かかりすぎだと思われても仕方ない、あのクエストは初心者向きだったし。
「もういいですけど」


そして俺は今、この街を散歩していた。
この異世界に来てから、ゆっくりと過ごすといったことができていたからだ。
散歩がてら店にでも入ろうかとしていた。
まずは、服屋へと足を運んだ。


「いらっしゃいませ」
そう言って接客をする男子定員。

「はーい、いらっしゃいましたあー!」
そういうと定員さんは、なんだこいつはという目で俺を見ていた。
こんな時は気にしない、なぜって気にしたら負けだからである。

こんなどうでもいいやり取りはさておき、自分に合う服を探す。
もうめどいし部屋着だけでいいか、お金も全然持って無いし。
いや、まてよ……せっかくの異世界生活を制服のまま過ごすのか?
うーむ、それもありなのか?
「どうなさいましたか?お客様」
悩んでいたらさっきの定員さんが声をかけてくる。
「なんでもいいんで、安い服あります?」
「困りましたね、ここのお店は全てが安いと思われますが……」
ハハ、聞いた俺がバカだったぜ。
「なら、そこの黒コートでもください」
 俺はとっさに近くにあったものを選んでしまった。

「お買い上げありがとうございました」
俺が買ったのは、黒コート、部屋着である。
てか、黒コート部屋着の四倍の値段してんじゃねぇーかよ。
コートを買ってしまった事に少し後悔があったがそれは忘れよう。

次は武器屋へと足を運ぶ。
さすがに木の棒だけでは戦えないからな、それに力の調整が難しい黒龍という異能を使ってミスでもしたらこの世界をこわしてしまうということになりかねない。

という事で武器を見ていこう。
剣、盾、槍、弓、杖、ハンマーといったさまざまな武器が置かれていた。
「ああ、鑑定したい、どれがいいのかさっぱりわからん、それに……今の俺の持ち金では買えない」

何も武器を買わずに店を後にする。
異世界来てお金に困るという大事件。
冒険者でやっていくのが意外にも辛いことがわかった。
もう宿に戻ろうかと思ったがまだ時間もあるし、ひとけのない森にでもいって黒龍を使いこなせるようにしようと、森の中へと入る。

「よし、ここなら人は来ないだろう、来たら移動すればいいしな」
そこは、川が流れていて、近くには大きな岩が転がっていた。

黒龍の能力を試そうと黒龍をイメージする、だが、スガラと戦った時のように体が黒く包まれることもなく黒龍特有の現象だけで終わる。
「あれ……もう一度……はあぁー」
だが何度やってもできない。
それなら、と思い全力で大きな岩を殴る。
「え……」
岩は、破壊されることもなくヒビが入る程度で終わる。
黒龍を食べた時よりも力が弱くなっていることに気づく。
いやそれ以上に弱くなっている、血を飲んだ時よりも。

不思議に思い異能能力を確認する。

神体質・【黒龍破壊者
・【リミッター解除黒龍の暴走(使用不可)】
・【無力化】
・【身体属性無効】
能力1・【身体強化】
能力2・【壊れない木の棒(出し入れ自由)】


そう、リミッター解除が使用不可能になっていた。
俺はスガラに受けたであろう封印を思い出す。
あいつは最後の悪あがきと言っていた、封印したのは俺ではなく、黒龍の力を封印したのか、そう考えるしかない。
でも、少しだけではあるが黒龍の力を使える。
黒龍を封印しきれなかったのか?

「やりやがったな、スガラの野郎、まぁでもこの異世界に来た時よりはましだが」

黒龍の力は弱くなったが、俺の基礎能力は上がっていた。
黒龍無しの通常状態でもパワーとスピードは三倍は上がっている。

「ま、頑張っていきますか!」




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