バカと天才は“神”一重

抹茶

第8話 ワクワク


「じゃ、後でな」
「はい。先に終わったらお迎えに行きますね」

 1年の教室へと向かい、Aクラスの前にたどり着いた。
 フィルはAクラスの為、必然的にここで別れることとなる。
 それがあってか少し寂しそうな顔をしたままフィルは自分のクラスへと入っていった。

(俺も人の事言えねーけど、フィルはフィルで兄離れ出来てないな)

 しなくていいけどね。
 俺は思わず苦笑しながら奥にあるEクラスへと向かう。奥にあるということはどうしても他のクラスの前を全部通ることになる。
 暇潰し程度に他クラスの人達を見ながら行くか。

(どいつもこいつも緊張ってか固いな~。初日なんだからもっと気楽にいけよな~。あのイケメン腹立つな〜。お、あの子中々可愛い)

 やましいというか年頃の男子なら当然というのか、俺には緊張という2文字は持ち合わせていない。
 小さい頃はフィルや母さんには羞恥心を持ちなさいと口酸っぱく言われたなぁ……今となっては呆れられて何も言われないけど。
 そうこうしながら歩く内にEクラスの前へたどり着く。

(ここで1年間過ごすのか……。楽しくなるといいな)

 俺と同じEクラスに割り振られた生徒。
 俺と同じく魔術に長けていないのか。それとも何か他に突出した短所でもあるのか。
 自分でも分かるほどにワクワクした表情を浮かべて俺は扉を開いた。

「は……」

 入ったその瞬間。俺は思わず口を開けて立ち止まった。
 何故ならそこに広がっていた光景が余りにもおかしかったから。
 本来1クラスに生徒は40名ほど置かれる。つまりはそれなりの広さの中に机が程よい間隔で並べられているのが普通だ。
 しかし俺の目の前にはさっきまで見てきたのと同じ広さの教室の中に椅子がたった5つという奇妙なもの。
 それに加え5つある椅子の内4つは既に在籍者と思われる男女4人が腰かけている。
 ということは……。

(俺含め生徒は5人!? マジかよ……。いくらEクラスだからってそんな情報はねぇぞ)

 俺の知っている情報ではEクラスが存在した事実はあった。Aクラスに優秀な生徒を集め、その高いレベルの中で切磋琢磨させるという目的。
 その他のB~Dクラスには平均的に生徒を配置させ、それよりも劣る者達をEクラスとし集中的に力を底上げしていく……というやり方だ。
 過去存在したEクラスの生徒数は最低でも10は越えていた、つまり1桁というのは前代未聞。

(ということは今年はいい意味と判断すべきかそれとも逆か……わかんねぇ……)

 受け入れがたい現状にしばし頭を悩ませるが、足りない頭じゃ何もわからん。

(ま、ここに居ても仕方ねぇ)

 その場にいるだけの自分におかしさを感じる。
 さっさと中に入ろうか。

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